誕生日からいったい何日たっただろうか。
一週間? それ以上? もう数えることをやめた。

僕には酒好きの彼女がいる。
彼女の去年の誕生日には花束とケーキを夜中に届けに行ったのだが。
彼女からのお祝いの言葉や贈り物が届けられることも気配も一向になく、彼女がいる身にしてはとてつもなくさびしい誕生日だったことはまだ僕の記憶に新しい。

……あぁ、ヘタレだ。
こんなこと思って、僕はちゃんと祝ったのに彼女はなんで祝ってくれないのって、言ってるようなものだ。
図々しいにもほどがある。

しかも彼女にも仕事があるし、最近は忙しいみたいだし、連絡も来ないし、連絡しようにも迷惑だったらゴニョゴニョ……ああ! もう! 我ながら女々しい! 女々しすぎる!!

でもちょっとは祝ってくれたっていいじゃないかぁ。
ちょちょっと、さくさくっと、メールだけでもぉ。


そんなぐだぐだをベッドの上でごろごろしながら繰り広げていた。
時刻はもう七時を過ぎている。
ご飯も食べたし、仕事は今日はもうないし、読書だって得意じゃないし……まあ、いわゆる暇人状態だ。

こんな時、いつもはどうしてたっけ。

「うーん、昨日は友達と飲み会だった。その前の三日ぐらいは仕事漬けで……」

口に出して整理しようとしたが、やめよう。
むなしい。


「そうだ……」


そう、今までは。
住むところは違うものの、よく彼女(酒持参)が僕の世話をしに来てくれていたなぁ。
お嫁さんみたいだねってからかうと、うるさいぶっ飛ばすわよって睨まれてたなぁ。

別に別れたわけじゃないんだけど、ちょっと不安とか思ってしまう自分がもう女々しくて嫌いだって思うのも女々しくてもう嫌だ。

独りは――


「――いやだなぁ……」


――ピンポーン
――ガチャ、バタン
――ドンドンドンドン

「えッ!?」

なんだか物騒な音が家じゅうに響き渡る。

まさか空き巣か!?
いや空き巣って律儀に玄関から入ってくるのか!?
というか玄関のカギは閉めたはずだが!?

ドンドンという足音はやがて止み、寝室のドアが開いた。



「……アンタ、こんなところで何してんの」
「めーちゃん!!」
「言われなくても自分の名前くらいわかってるわよ。電気もつけないで、何してるのって聞いてるの」

彼女はリビングの電気をつけた。
僕は寝室から明るくなったリビングへと移動した。
いままで布団にずっとくるまっていたせいか、すこし肌寒く感じる。

「で? カイト。なにしてたの?」
「……」
「カイト」
「……め、めーちゃんに」
「あたしになによ」


「あ、あいたいなぁ、って……」


我ながら間抜けな返答。
でも彼女を見るとみるみる顔を紅潮させ、あんた何言ってんのよ! と僕の頭にその握りしめた拳を炸裂させん勢いで腕を振り上げた。

それは困る、大いに困る。


「だっって! だってめーちゃん、ずっと忙しそうだったし! それで」

「それで、心配だったっていうの?」

僕がコクリとうなづくと、彼女は馬鹿じゃないのと罵った。


「……はい」

ぶっきらぼうに差し出されたそれは、マフラーだった。
青い、なんだか不格好な。

「……めーちゃん、これ何これ」
「マフラーよ! ま、ふ、ら、あ! 見たらわかるでしょ!」
「うん、それはわかるけど。僕もうマフラーもってるよ? しかも青」
「んんんんなああああもう!!! わっからずやっ!!」

なぜだか急に怒り出した彼女。
え、僕なんか怒らせるようなこと言ったかな。



「誕生日おめでとう」



遅れたけど、と、今にも消えそうな声で、僕の大事な彼女はそうつぶやいた。
見れば顔はもう真っ赤どころの騒ぎではない。
耳まで茹でたタコみたいだ。

「もしかして、めーちゃんこれ手作り? 僕のために作ってくれたの?」
「……」
「ねぇねえ」
「……」

もうひと押しと催促してねぇと聞いたら、いつものように五月蠅い! と返されて、頭にぼかりと拳骨をくらってしまった。

不器用な彼女がよくもまあここまでマフラを形にしたものだ。
料理は絶品だが、あとの家事やら何やらはてんで駄目な彼女が。
一生懸命僕の好きな色の毛糸を選んで、誰かに教えてもらって、試行錯誤して、僕のことを考えながら編んでくれたのかと思うと、ほほえましく感じてくる。


「めーちゃん」
「何よ」
「ありがと」
「ふん」


明日は月曜日で、いつもは憂鬱だけど、明日はなんだか楽しみだ。


きっと今までで一番あったかい月曜日になる。
そんな気がする。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

マフラー 【イズミ草】

あっ!!!!!!!!!!
今日のお昼までだった!!!!!!
不覚不覚一生の不覚!!!!!!!!
でも一応投稿しときます!!!!!うわああああん!!!!

遅くなったけど、兄さん誕生日おめでとう!!

閲覧数:599

投稿日:2014/02/23 19:42:58

文字数:1,892文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    その他

    私はー多少遅れたくらいだと、選考に入れちゃうんだなーw
    逆に早くてもいれるけど←

    兄さんかわええ
    めーちゃんもかわええ

    イズミさんのって、どこかリアルな感じがあるんだよなー

    2014/02/24 07:31:57

    • イズミ草

      イズミ草

      おっわわわわ!!!
      しるるさん太っ腹ぁです!!!

      リアルな感じしますか!?
      なんだか意外ですがうれしいです!! ありがとうです!!

      2014/02/24 18:48:09

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