語り部の暗い森のサーカス

ようこそいらっしゃいました。この度お聞かせするのは、真っ暗な森の奥にある、サーカス団の物語です。

そのサーカスは真っ暗な森の奥深くにあったそうです。キャストは皆愉快ですよ。少々、ヘンテコな形をしていますが。例えば、とても高い背の大きな目玉の座長、本来ならば双子としてこの世に生を受けるはずだった二つ頭の×××の。哀しい悲しい歌を歌う歪な異形の歌姫。冷たい人間の手足を貪り食う、青い毛の獣。どれも、揺らぐ手足を持たずに生まれてくることを望んだわけでないそうですよ。

二つ頭のピエロ、異形の歌姫、青い毛の獣はそれぞれが観客に問い掛けたそうです。

 ―「 何 で そ ん な 目 で 見 て い る の ?
顔 が 腐 食 っ て い く  」

しかし、観客にはその声は届かないのです。

 ―「 苦 し い よ 苦 し く て 仕 方 が な い 」

異形の歌姫がそう歌っても、観客には

 「楽しいよ。楽しいよ。このサーカスは楽しい」

そう歌っているようにしか聞こえないのです。

死にたい、ここから出してください。そう願いながら舞台に立っているキャストはぼんやりと思い出します。

でもそれは無理なことと誰かが言っていた気がする、と。

いかがでしたか?私のお聞かせした物語は。今日のところはここでお開きにしましょう。帰り道にはどうぞお気をつけて。よければまた、私の物語を聞きにいらして下さい。それではさようなら。

ああそうだ、興味を持たれたならば一度足を運んでみてはいかがですか?
  暗い森の奥底へ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

語り部の暗い森のサーカス

語り部シリーズ3作目です。

閲覧数:1,560

投稿日:2009/05/03 20:10:26

文字数:674文字

カテゴリ:小説

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  • 文鳥

    文鳥

    ご意見・ご感想

    音で聞いていると、二つ頭の・・・の と、
    ので伸ばしていたのでこう表記しました。

    2009/04/26 18:54:28

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