「なんか、よくわからないけど…」
デフォ子さんは、お茶のカップを机に置いて言った。
「ウワサでは、たまに、人の話にあいづちを打つんだってサ」
話を聞いていたマコさんは、目を丸くした。
「はぁ。でも、それって、中にはいっとるマイクロ・コンピュータで、反応するだけとちがうの?」
アーチスト支援施設の「ニコビレ」のティールーム。
午後のひと時、デフォ子さんとマコさんがお茶を飲んでいた。
話題は、いま仲間うちで、ちょっと話題になっている“不思議な人形”。
デフォ子さんと、ミクさんが共同で作った「はっちゅーね」のことだ。
「うん。マイコンで、言葉に反応する人形だけどね」
お茶をまた口に運んで、デフォ子さんは言う。
「それにしても、あまりにもあいづちのタイミングが良すぎるんだってサ」
マコさんは、ほおづえをついてつぶやいた。
「何か、妙な“発明”してしもうたのと、ちがいますか?」
「妙な?」
ちょっといたずらっぽく笑って、マコさんは続けた。
「“ココロ”がある人形を、作ったとかですわ…」
●問題なのは…
「はっちゅーね」は、ミクさんとデフォ子さんが、いっしょに開発した製品だ。
「おはよう」と話しかけると、いく通りかの返事を返してくれたり、
「ただいま」と頭をなでると、「お疲れさま」とか「待ってたよー」とか、反応してくれる人形だ。
あどけない表情と、癒されるボイスで、いま少しずつ、全国で人気が広がっている。
兄のカイくんのお店、キディディ・ランドのスタッフルームで、
ミクさんは、この「はっちゅーね」を見つめて、兄と話していた。
「売れ行きはいいのよ。それは嬉しいんだけど」
ミクちゃんは、目の前の人形を見て言う。
「不思議な反応をするっていう人が増えてるし」
カイくんはうなずいた。
「うん。メグさんのところとかね。」
彼は、人形の頭をなでて言った。
「でも、これ、全国でたくさん売れてて、ファンが増えてるけど、そういう人たちから、“変な人形だ”というクレームは、来ないよね」
ミクちゃんは、うなずいた。
「そうね。いまのとこ、私たちの周りの人たちだけね」
カイくんは、言った。
「うん。問題なのはこいつが、いつ、人の会話に入ってくるかということさ」
●風にあおられたポスターから…
その頃。
マコさんは、デフォ子さんと別れて、ニコビレの「作業室」にやって来た。
部屋には、ぱみゅちゃんとレイムさんがいて、作業をしていた。
「あ、こんにちは、マコさん」
「あら、精が出るわね。個展の準備?」
2人はうなずいた。
近々、彼女たちの作る“クレイ(粘土)アクセサリー”の展示会を、ギャラリー・ゆうひで開くのだ。
「頑張ってね。良い作品、期待してますよ、ウチも見に行かせてもらうからネ!」
「ありがとうございます。ちょっとアガっちゃうな、個展なんて」
ぱみゅちゃんは、恥ずかしそうに笑った。
作業室の大きな窓は開けられていて、明るい光が入ってくる。
気持ちの良い5月の風も、吹き込んでくる。
ちょうど、壁に貼ってあるポスターが、そよ風にあおられてめくれ上がった。
実は、そのポスターは壁の穴をふさいでいる板を、隠すために貼ったものだ。
すると、その穴から、妙な話し声が聞こえた。
「…いつ、人の会話に入ってくるかということさ…」
それは、カイくんの声のようだった。( ̄ー ̄?).....??
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