<第17話末文より抜粋>
テル:これまでの“力の付与”がされた後、つまりこれからソレをふまえて、ミク、君にアドバイスしていこうと思う。いいね?
ミク:はい!
<Dear My Friends! ルカの受難 第18話 砕けるココロ>
(アフス城内・開発武器試験場・テル側待機スペース)
テル:まず最終確認事項から入る。いいね?
ミク:はい、戦略的に大事だと思います
テル:では、私がこれから列挙していくから、ミクさんも一応確認の返事をしていってください
ミク:はい
テル:この戦いは全ての最後になっていて、これ以降の対戦カードはない
ミク:はい、これがファイナルです
テル:相手は、ルカさんの遺伝子と、フォーリナーの屈強な兵士の遺伝子から作った、ルカさんそっくりの剣士である
ミク:はい…、残念ですが、認めざるを獲ません
テル:このカードには、引き分けは存在しない。必ず勝敗が付く。君とルカコピーの関係から考えて、引き分けはあり得ないとの判断も含まれているだろう
ミク:は、はい!
テル:ルカコピーは見た目の武装は剣士、つまり剣術の達人だろう。そして君は銃士
アペンド:ミクさんは模擬戦では経験を積んでいるそうですよ
テル:しかし、実戦では素人に近い
ミク:はい、本物の弾丸を撃つのは、ソニカさんの時から数えれば2回目です
テル:戦闘中は、両名共に、仲間などから物理的な助け船やエネルギー補給ができない。そしてこのカードのみ、決着を付ける意味で、双方共に仲間が白旗等を使って負けを認める行動もできない。言い方は悪いが、『デスマッチ』だ
ミク:は、はい
テル:最後に大事なことなので、もう一度言っておく。対戦相手である“あのルカコピー”は、ルカさんではない。私が持っている情報から言うと、ルカさんは別の安全な場所でちゃんと待っている。その事は戦う上での心の支えにして欲しい
ミク:はい!
テル:ふむ、基本事項は、コレくらいだな。では、『戦略』に移るか
ミク:わかりました
***
テル:いずれにしてもこれまでで最も酷な対戦だ。君の場合、体力消耗より“精神消耗”の方が心配だ。相手がルカさんの姿をしているだけでも削がれるのに、剣術や場合により魔法攻撃の事も考えないといけない
アペンド:ユキ達が作ったから、魔法能力もある、と?
テル:そう、剣術だけと断言できない。だが、こちらもそれについては、アペンドの4属魔弾銃による打ち消しや、学歩の防御剣術で対応できる。出来るだけ、これらで応戦して欲しい
ミク:わかりました。使い分けですね
テル:そうだ。慣れないうちは逃げ回って回避してもいいと思う。こちらは装備は銃だけで、鎧などを追加装着していない分、身軽でちょこまか動けるからな。逆に相手は部分的なアーマーを付けている。少なくても君よりは鈍足だと考えられる
アペンド:ただ、それは相手も承知の上だろうがな
テル:ああ、あくまで“そうできる”範疇だ。ソレをふまえた攻撃をしてくるのは明白だろう
ミク:相手をよく見て判断します
テル:とにかく、序盤は相手を観察するためと、偽ルカさんの姿に慣れるため、逃げ回るのもいいと思う。ダメだと思ったら“三十六計逃げるに如かず”だ
ミク:はい、慎重に行きます
テル:だが、それだけでは勝てない。中盤、慣れてきて、本当の意味で覚悟が出来たら、相手に攻撃を当てなければ行けない。序盤、分析したデータを元に、相手に一発でも当てられるようなシチュエーションで、積極的に攻撃して欲しい。武器ダメージはリンの能力でかなり軽減されるはずだ。かなり抽象的な戦略で申し訳ないが、こちらもルカコピーのデータは、“見た目”、しかないのだ。許して欲しい
ミク:いえ、戦うのは私ですから
テル:ありがとう。そして、終盤、双方体力が落ちてきて、相手が接近戦を仕掛けてくる事が多くなったら、レンや学歩などの力が宿っている銃剣の剣で、“ガード”と“盾や鎧への斬撃や突撃による牽制”に徹して欲しい
ミク:…さすがに剣であの姿の生身に“斬りつける”事は・・・・・・出来ないからですね
テル:ああ、多分、その時点でも、刃物で斬りつける、突き刺す、殴り合う、のは無理だろうからな。切れない盾や鎧へ剣先を向けるのは大丈夫だろう。これらは牽制に等しい故、君の攻撃は銃撃だけと割り切って欲しい
ミク:はい
テル:そして、覚悟と勇気が自分で十分に高まったと思ったら、アペンドが加えた必殺弾の“ブレイヴバレット”で勝負を決めて欲しい。おそらくこの弾は、君の精神力と銃の残りエネルギーから、撃てて2~3発程度だろう
ミク:は、はい!
***
テル:あまり“必勝の策”という戦略では無くなってしまったが、私が考える上で、それに限りなく近い策だと思っている。だが、最後に物を言うのは、戦う君自身だ。実戦2回目、実質初戦という厳しい条件だが、君のためにも、ルカさんのためにも、魔法陣のためにも、絶対に勝って欲しい。いいね?
ミク:わ、わかりました!
アペンド:そろそろ闘技スペースに行く頃だが、私が付き添わなくて良いか?
ミク:はい、気持ちを落ち着かせるためにも、自分で行きます
アペンド:わかった
ようやく準備と戦略会議が終わったので、テルはユキの方に向かって、終わったことを告げたのだった。すると、ユキもルカコピーに闘技スペースに向かうように指示を出した。
ルカコピー:ふぅ、ようやっとですか。長かったなぁ。さーて、ミクと遊びましょうかね
ガシャンガシャン
ルカコピーは部分的なアーマーを付けていたので、ミクがテクテク歩いていくのに対して、少しゆっくり目で重そうに近づいていったのでした。
ミク:(相手はやっぱり鈍足。覚えたよ)
***
(アフス城内・開発武器試験場・闘技スペース)
ミクとルカコピーは中央で対峙していた。ルカコピーの方が少し身長があったし、アーマー類の関係から、ミクを少し見下ろす感じだった。対してミクは、魔弾銃を持つ手が震えていた。足取りはなんとかしっかりしていたのだが、“攻撃する部分”である手が落ち着いてくれなかったのだ。
そこへユキのアナウンスが入った。
ユキ:前置きは既にテルから聞いているだろうから、もういいな。これで最後だ
そしてユキは、おもむろにゴングを鳴らした。
カーン!
様々な前置きが入り込み、様々な思惑が交錯する中、遂にファイナルバトルが始まったのだった。
***
ザザッ!
ミクはテルの言ったとおり、そして反射的に、バックステップして、とにかくルカコピーとの距離を取った。銃撃は、近すぎても当たらないものである。勿論、牽制攻撃も効果がない。
そしてミク自身、逃げ続ける作戦を採るか、迷った結果、今の自分の精神状態なら、4属弾一発くらい、“牽制”程度なら撃てると判断し、とにかく撃ってみる事に決めたのだった。明後日の方向ではエネルギーの無駄になるが、要はギリギリで当たらなければいいのである。まだ自分には当てるだけの覚悟はない。
なので、威力だけはありそうな“火炎弾”にセットして、銃口をルカコピーに向けたのだった。まだ魔弾銃はカチャカチャ音を立てて震えていたが、銃口の向きは、極端に明後日の方向には向いておらず、ルカコピーの足下の“向かって”右横30cmはずれたところでウロウロしていた。
テル:牽制攻撃を選んだか・・・・・なら“もっと大きくはずれる位置”を狙ってくれよ・・・・そうでないと・・・・
ミク:はぁ・・・・はぁ・・・・あ、あとは、トリガーを引くだけ・・・・・
ミクは両手で魔弾銃を構えて、とにかくカチャカチャ振動を抑えた。“何故か”ルカコピーは動かなかったので、さっき決めた大体の位置で固定し、心を落ち着かせ、目をつむってしまった。
『見ていなければ、ルカの姿に惑わされない!』
ミクはそう判断して、どうせ牽制だから、狙いは二の次にして、とにかく“撃つこと”を第一に考えた。
ミク:(いけぇ!)
カチャ
ミクは自分の体重より重く感じたトリガーを、必死の思いで引いたのだった。
ギューーーーーーン!
火炎弾は、銃口から飛び出て、そのままならミクの最初の狙い通り、“ルカコピーの足下、向かって右横30cm付近”に着弾する・・・・・はずだった。
しかし、軌跡はそうならなかった。ソニカの力“ホーミング”が働いたからだ。火炎弾は動かないルカコピーの左足に着弾するように左に“ねじ曲がり”、そして、それでも動かないルカコピーの左足に、キッチリ着弾して、着弾地点に大きな火炎を作ってしまった!
ルカコピー:・・・・・・
ミクは着弾音で目を開け、そして、“火炎が作られた位置”を視認して、そして、両手で銃を構えたまま、ガタガタ震えて狼狽した。
ミク:な、なんで、当たっているの? 目をつむったから位置がずれた? いえ、感覚的に、ずれたならもっと向かって右側に反れているはず。なんで、“左側”にずれているの、ルカコピーは動いていないのに・・・・・・・・!!! まさか!
ミクは構えた姿勢を崩さず、テルの方を睨み付けた!
ミク:テル! まさか、ソニカの力って!
ソニカ:ご、ごめんなさい!!!!
テル:ああ、『ホーミング』の力を与えた。素人同然の君が、相手に銃弾を当てるためには、力による補正が必要だ。これ以降、“牽制”するなら、大きく反れた位置に標準を合わせなさい
ミク:な、なんで黙っていたの!
テル:酷だ、という理由と、言ったら君は、弾を発射できないと判断したからだ。ホーミング補正がかかって着弾しやすい弾なんて、怖くて撃てない、と。一発で理由がばれてしまうとは思ってなかったがな
ミク:もう遅い! とても・・・・とても・・・・当たるような所に照準を向けられないよ・・・・
テル:もう遅いのは君だ。一発着弾しているのだ。当ててしまったんだよ、君は。どのみち引き返せないのだ、私の戦略より遥かに早い段階だが、覚悟を決めるんだ
ミク:みんな・・・・・みんな大っ嫌いだ!
テルの思惑は裏目に出てしまった。ミクは準備段階では、強い言葉で言い張っていた物の、実のところ、心はまだ準備すら出来てなかったのだ。その段階での“着弾”。ミクのココロは崩れかけていた。
更にこのあと、ミクのココロの崩壊に追い打ちをかけるほどの、恐怖の片鱗を味わうことになるのだった。
Dear My Friends! ルカの受難 第18話 砕けるココロ
☆オリジナル作品第15弾である、「Dear My Friends! ルカの受難」の第18話です。
☆崩れゆくミクの心証描写が、今回の流れです。テルも不本意ながら一枚噛んでしまった事は失策です。
☆そして、絶体絶命の時!
*****
hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct
☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5
☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1
☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf
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裏方くろ子
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ご意見・ご感想
clown
ご意見・ご感想
enarin様、今晩は。 いつもご無沙汰しております…。
ミクさんの精神状態がとても危なくて、ヒヤヒヤしてました…。
まさか「偽物」のルカさんに記憶を入れるとは…。
そう、でも、いくら記憶はあったとしても、所詮は偽物。単なる虚像でしか、無いのです。
ルカさんの声を聞き、ミクさんは改めてそう感じたのだろう…と思います。
強い絆で結ばれている二人は、例え結い目が弱くても、すぐにほどけても、二人の力を強める、「何か」に気付けなかった。そういう面では、ユキさん達の失策はこれだった、かもしれません。
ミクさん頑張って下さい…!!
ブックマーク頂きます!
それでは、またお会いできる日を心よりお待ちしております。
2012/05/21 19:41:04
enarin
clown様、今晩は! お返事遅くなってすみませんです!
> ヒヤヒヤしてました…
今回は精神戦。ミクさんが可哀想だと思いましたが、窮地に立っていただきました。でも、ルカさんが間に合ったようで、良かったです。
> 記憶を入れるとは…
遺伝子に全部の記憶を入れるのは無理なので、入れられるものだけ入れた感じです。今回が精神戦であることはユキやアルは読んでましたから、それに必要な記憶=サバイバルゲームの記憶だけ入れたんですね。
> 所詮は偽物。単なる虚像でしか、無いのです
そう。最初から騙す作戦にしてなかったので、今回はミクさんの精神力が試されました。目の前のそっくりの偽物を攻撃できるか? 難しいけど、そうでないと勝てない。大変ですよね。
> ミクさんは改めてそう感じたのだろう…と思います
やはり本物と敵対意識のある偽物では全然違いますからね。本物のルカさんが策を練るとき、自分がミクさんから見える位置にいて、声をかけられることが大事だと見抜いてましたからね。
> 例え結い目が弱くても、すぐにほどけても、二人の力を強める、「何か」に気付けなかった
友情の絆が強いから故に、ルカコピーを攻撃できなかったのですが、本物との絆を再確認できたため、”あれは偽物なんだ”と心に刻むことも出来た、その事をユキ達は見抜けなかったのですね。
> そういう面では、ユキさん達の失策はこれだった、かもしれません
ルカさんが”失策”といっていたのは、このことなのですね。
> ミクさん頑張って下さい…!!
かなりの窮地ですが、次回以降も頑張って欲しいところです。
> ブックマーク頂きます!
有り難うございます! とっても励みになります!
> それでは、またお会いできる日を心よりお待ちしております
現在、次の話を書いてます。気づいたミクさんの反撃です!
このたびのご閲読、コメント、ブクマ、本当に有り難うございます!
2012/05/23 18:30:28