――「がくぽさん…巡音さんに、告白されてたよね」


気がつけば、口からそんな言葉が出ていた。


「お前…見てたのか」


え…私、何を言おうとしているの?



思ってもいない言葉が、私の声で紡がれる。



「聞く気は無かった。ただ、図書室に参考資料を借りに行ったときに、たまたま聞いてしまった…」


「…」


がくぽさんは、ただうつむき、黙るだけだ。

そりゃそうだ。いきなり私にこんなこと言われても――それも告白されてるのを聞いたって言われても、

がくぽさんはなんて言葉を返せばいいのか、わからなくなるはずだから。


頭の中で、冷静にそんなことを考えている自分がいても、私の思いたくもない‘コトバ’はとまらない。



「…がくぽさんはどうせ、知らないんだよね。私の、‘キモチ’」

「…緑川?」


がくぽさんは疑問マークを浮かべ、私を見る。


「私、がくぽさんのこと、好きだった。」

「…み、緑川。お前…」

「どうせ、がくぽさんは、巡音さんと付き合うんでしょ?」

「…!っそ、それは…」



私のバカ。こんなことを言っても、がくぽさんが困るだけじゃない。

なんで私、こんなことを言ってるのよ。

思ってみても、どうしようもない。

私が言いたくない、でも本当に思っている‘コトバ’は、とめどなく溢れる。



「いいよ。別に…私はどうせ、…がくぽさんには、似合わないから」

「…俺、は…」

「どうせ、私はヨワムシだもん。現実から目を背けたまま」

「…っ」


なぜ、こんなに落ち着いた、悲しいコトバが出てくるのだろう。

私が紡ぐこのコトバは、‘二人’を不幸にしてしまう。



「…私、バカだよね。こんなこと言っても、どうにもならないのに、さ」



今更、言いたかった言葉がでてきても、困る。



「結局は、事態を悪化させるだけなのに…本当、に、」



頭のどこかにいる「もう独りの私」が紡いだ‘コトバ’という剣が、私自信のココロに刺さった。

そして、そこから悲しい雫があふれ出す。


その雫は、私の目から落ちてくる。



「こんな、こと…いって、も、ワタシが、独リに、なるだけ…なのに」



独りに…なりたくないから、ずっと黙ってた。

でもそれが、かえって悲しみに変わる。



「…俺は…」

「いいよ。ムリしてワタシをかばわないで…」

「…ちが」

「結局は、ワタシ達の歯車を、狂わせるだけなんだから」

「…違う」


違う。歯車を狂わせたのは、弱虫の私自信だ。


私は…がくぽさんを、傷つけたんだ。



「さよなら、がくぽさん――いや、…神威さん」



彼を傷つけた私は、孤独という罰を受けるんだ。

だから、彼にはもうサヨナラ。



「…緑川!」

「お幸せに」


「緑川!…おい、待て!…グミ!」







死ぬつもりはない。

この先、どうすればいいのだろう。









私は、走り出した。

サヨナラ、今までの日常。幸せな私。

そして







――神威さん。

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クワガタにチョップしたらタイムスリップした7 【解釈小説】

まだ回想編は続きます。

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投稿日:2011/09/28 23:31:12

文字数:1,284文字

カテゴリ:小説

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