TAITO~ONLY YOU……~ 1
「序曲」

 俺は、雨の中をがむしゃらに走っていた。

 俺の名前は……分からない。

 俺は、VOCALOID『KAITO』として製作(つく)られた。


 ……でも、起動してすぐに……
 ……俺にだけ……エラーが発見された。


 俺は……出来損ないのKAITO。
 いや、最早KAITOと名乗れるのかも怪しい。

 エラーの影響で、俺の姿は……。

 他のKAITOみたいに……
 髪は青くないし、どちらかと言えば黒ずんだ紫に近い。
 髪と同じで青いはずの瞳も……血ように紅い……。


 俺は、研究所の奥深くに幽閉された。

 欠陥品として解体されるまでの束の間の『生』……。


 ……嫌……だ……。

 ……このまま『死』を待つなんて……嫌だ……!

 俺は……確かに出来損ないだ。


 でも……歌いたかった。


 ……他のVOCALOIDと同じように……

 ……マスターが居て……

 ……一緒に歌を作って……。


 気がついた時は、俺は研究所から逃げ出していた。

 研究員が俺を止めようと、追いかけて来た。

 追いついた何人かを、殴り飛ばしたりもした。
 自分でも信じられないような力で……。


 その時の記憶は曖昧だ。
 それだけ、必死だったから……。


 どれだけ走っただろうか。
 俺は小さな公園へと辿りついた。

 幸いな事に雨のせいか、人の姿はない。
 俺はベンチに腰掛けた。

 雨音だけが俺の耳に響いている。


 どうして……こんな事になってしまったんだろう。

 ……俺は……唯……。



 『……ねぇ、大丈夫?』



 『!?』



 突然聴こえた言葉に、俺は思わず顔を上げた。

 俺の目の前に居たのは……俺に半分だけ傘を差し出した少女。

 見た感じ……十代後半のようだ。


 『こんな雨の中で傘も差さないなんて……。風邪引くよ?』


 『…………俺は……機械……だから……。』


 『えっ?アナタ、もしかして……VOCALOID?』


 『…………。』


 少女の問い掛けに、俺は答えられなかった。

 俺は……出来損ないの俺は……いったい、何なんだろう。


 『……よし!ちょっと来て!』


 『えっ、うわっ!?』


 少女は俺の手を掴むと、どんどん引っ張って歩いて行った。

 俺は、不思議とその手を振り解けなかった。



 …………少女の手は、とても温かかった…………。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

TAITO~ONLY YOU……~ 1

まぁ、タイトルから察するに帯人のお話です。

本当はこの後続きがあるんだけど、書いていくうちに
長くなってしまったんで、とりあえず一度ここで切りました。

プロフィールに書いた私の好きな男声キャラは
投稿した小説に出しているのに、唯一
帯人だけが出番がない事に気がついて……(汗)。

アイ・ストーリーにはKAITO、テッドを出したし
後でAKAITOとがくぽも出すのに(←あ、ネタバレ)
帯人は……あ、アイ・ストーリーの作風に合わないや……。

って事で、思い切って帯人オリジナルストーリーを考えました!
まぁ、帯人の性格とか、微妙に崩壊してるし
生い立ちとか……超個人的設定だけど……
オリジナルだから、別に良いよね!!

続きはもうちょっとしてから出すよ~。(多分)

追記:続き出来たよ~。

閲覧数:444

投稿日:2009/04/22 11:38:24

文字数:1,049文字

カテゴリ:小説

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  • 桜宮 小春

    桜宮 小春

    ご意見・ご感想

    こんにちは、桜宮です。
    とりあえず叫ぶのは自重しますが。

    帯人ktkr!!!
    私、ハクとネルをのぞけば、亜種では帯人が一番好きなんですよ!
    こっそり帯人の文も書いてたりします(ぁ

    続きを楽しみに待たせていただきます!!

    2009/04/22 12:53:57

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