・あくまで二次創作です
・初めに謝っておきます。すみません。
・正確には「リン」「レン」ではないのでしょうが、その辺は見逃してください。
Q.さあ、犯人はだあれ?
A.知るか。
<お願いだから、ナゾ解いて!>
ん?
僕は目をしばたたいた。
気のせいかな。なんか今、あるまじき発言が聞こえたような気がするんだけど。
えー、じゃあ、気を取り直してもう一回。
「さあは」
「だからどうでもいいって言ってるでしょ。っていうかあなたさっきから一人で喋りすぎ。昨日見た鴎の数を数え始めたから途中から聞いてなかったけど、正直飽きた」
「…あの、せめて台詞遮らないでくれる?」
まさか黙っていたのは他の事を考えていたから?というか、昨日見た鴎の数って全力でどうでもいい気がする。
というか、えっ、そんな飽きるような内容話してたっけ?
僕としては知り得るヒントを全て渡して、満を持して問い掛けたつもりだったんですが。
リンは至極つまらなそうな顔でナイフを弄ぶ。
いやリンさん、それ最後の手段だから。 最後の手段っていうのは最後に使うからこそ最後の手段である訳で、そんな見せびらかしちゃ駄目だと思うんですけど。
いやしかし、ここで負けちゃあいけない。しっかりしろ、僕。
こほん。
僕は一つ咳ばらいをしてから、健在な方の指を一本立てた。
「リン、そんな訳にはいかないよ。君が答えを言わないと、物語は進まない」
「心底面倒」
「そんな事言わないで…心が折れる」
「ああ、ごめんなさい。で、何だったかしら。そういうことなら何でも無理なく説明をつけてあげるわ」
なんだろう。既に嫌な予感しかしない。
…いや。
僕は心の中で頭を振る。
相手はリン。だから、そんなぶっ飛んだ発言はしない筈。
しかも無理なく説明をつけると言っているんだから、聞いてみても問題ないはずだ。
…はず、だ。
一抹の不安を残しつつ、僕はリンに問い掛けた。
「じゃあ一つ目のナゾだよ」
「ええ」
「一つ目のナゾは、あの毒死事件。何故被害者は何故一人きりの部屋で毒入りワインを飲むことになったのか」
リンは軽く顎を引く。
それが頷きだと理解して、僕は少しだけ心を引き締める。
リンがどこまで口にするかは分からない。でも、どんな事を言われても同じないようにしなければ。
黒いリボンが揺れる。
彼女は重々しく口を開いた。
「友達がいなかったから」
「違あああああああああう!!」
思わず僕はつっこんだ。もう立場とか全部忘れて、全力でつっこんだ。
「なあに?一人でワインを飲む、即ち友達ナシでしょ?」
「いや普通に、一人で飲むのが好きな人も沢山いるから!それに毒入りワインを友達と飲むって、つまり集団自殺!?あるいは心中!?」
「愛と勇気だけが友達さ、なんて言ってみても、大体八割は強がりなのよね」
「なんか知らんけどそれ残念すぎる気がする!」
ちょっ、何処から出てきたんだこの超解釈!
確かにありえないとは言えないけど、でもそれっていろいろと駄目なんじゃないだろうか。
なんて言ったら良いのか分からなくて、僕はリンを見ながら口をパクパクさせる。
敢えて言うなら…
「た、頼むから真面目にやって…」
「嫌よ。大体真面目にやって欲しいなら情報開示請求をするわ」
「いやいや情報開示請求って」
「要するに証拠を隠滅するなって事」
リンの指先が静かに上がり、僕を指差す。
「グラスが二つあった事、隠してたでしょう?」
「…っ」
「それによって真実は大きく変わる。大きく、ね」
この場の『探偵』は僕であるはずなのに、気迫で押し負けそうになる。
清冽とも言える気配に、僕はただ大人しく言葉を待つ事しかできなかった。
…そう、リンは僕なんかよりずっと『探偵』に相応しい。乗り気にさえなってくれれば。
「ならリン。それを踏まえた上での、結論は?」
リンは僕の目を見据え―――言った。
「脳内嫁と酒盛り」
「うわあああ痛い痛い痛い―――ッ!なんでそんな孤独路線にこだわるのさ!?それ明らかに被害者違う意味で可哀相だよね!?」
「レン…」
リンは何故か慈愛の篭った目で僕を見つめた。
「いいのよ、彼を庇わなくても。幸せの形は人それぞれ。私はアリかナシかで言うならアリだと思うわ」
「なんか勝手にかなり譲歩してるし!」
「自分が無駄にカッコつけてスベって大怪我をしても躊躇わずに誰かを守る。それも尊い自己犠牲だと思うけど…話、長すぎ」
「え、スベっ…ううっ、一晩かけて考えた台詞回しが一言で切り捨てられるなんて!しかも話が長いって、長くないよ…長くないんだよこれ…昨日頑張って削ったんだよ…」
「お疲れ様」
労っているようにも聞こえる無情なスルーの台詞に、僕はがくりと膝をついた。
だ、駄目だ、このままじゃ負けてしまう…
リンのペースに嵌まるわけにはいかない。なんとか折れそうな心をセロハンテープで補強して、僕は再度立ち上がった。
頭痛いし足もふらつくけど、気のせい。
気のせいったら気のせいなんだ。
「…えー、じゃあ皆が海に落ちた理由は?」
「暑かったんじゃない?」
どうしよう、もう投げやりさを隠す気すらないっぽいぞ!?
勝機がなくなりつつあるのを感じながらも反射的に声を上げてしまう自分が恨めしい。あと自分で言っといてなんだけど、勝機ってどういう事?
「今夏じゃないんだけど!あと、服のまま海水浴奴ってただの馬鹿だろ!」
「意外と最新流行かもしれないわ。服を着たままの高飛び込みとかがアツいのかも」
「そんな流行あったら嫌すぎる」
「答えは一つとは限らないんでしょ?」
「うん、でも明らかに誤答だーぁ」
「…なあに?」
きっ、とリンの青い瞳が僕を睨み付けた。
怒っているらしい。その瞳の中に、青い炎が見えるような気がする。
…あの、ナイフ握り締めるのはやめて。人間のリーチって意外と長いから、この距離だと一動作で刺されそうな気がする。
「レン。あなた、さっきから私の言葉を邪魔して、どういうつもりなの?」
「ごめんそれはこっちが言いたい」
「私に推理されると、何か不都合でも…?」
推理って言えるんだろうか。
…いや、実際、リンが自分で推理することに対して不都合なんてない。僕はただ、「犯人はあなただ」という名指しの告発が欲しいだけなんだから。
「リン」
「何」
何だか声に棘が混じっているような気がするのは気のせいなのかな。
気のせいじゃないかもしれない。別にそれでも大して困りはしないんだけど。
「きみは、僕を何だと思う?」
「…?」
唐突とも言える僕の問いかけに、リンが微かに首をかしげる。
確かに言い方が悪かった。僕は改めて言葉を繋ぐ。
「例えば、探偵とか、参加者Aとか、そういう役柄で言うなら何だと思う?」
「お笑い要員?」
僕にお笑い要素あったっけ!?
「違う!そうじゃなくてもっと…」
「そう?なら言わせてもらうわ」
はあ、と溜息が耳に届き、僕は少しだけ表情を固めた。
どこか悲しそうな瞳がまともに僕を見据える。
「あの時のあなたは探偵じゃなかった」
声にも僅かな疲れを滲ませながら、リンは託宣であるかのように呟いた。
「ショタ要員だったのよ…」
「帰ってくださいロリ要員!!」
なんかもう、泣いてもいいですか!
そんな要員全力で願い下げだ。あと、どっちかっていうと、僕ってイケレンの筈じゃないのかな。
―――なんかリン、実は凄く怒ってないか…?
うう、と少しだけ怯えながら目線を戻す。
リンは、至近距離にいた。
「っ!?」
「レン、回りくどいことはやめてくれない?」
切り込むような言葉が放たれて、僕は思わず身を竦める。
「あなたは犯人じゃない。というか自分が犯人だと言うのなら、さっさと警察に自首してくれば良いのだわ。端的に言うなら、私を面倒ご
とに巻き込まないで」
「…冷たくない?」
「冷たい?こんなものよ」
リンが肩を竦めると、ドレスのパフスリーブが柔らかそうな形を描きながら揺れた。
黒くてベルベットのような光沢があるのに非常に繊細な生地は、リンの錦糸のような金髪に良く似合う。
「問い掛けるだけ問い掛けて、都合のいい答えしか聞こうとしない。そういうのって狡いのよ」
「リン…」
狡い。舌先でその言葉を転がす。
確かに…そうかもしれない。最後の最後、こうしてリンに告発者の配役を回したのは完全に僕の意志によるものなんだから。
僕の独りよがりによるもの、とも言えるかもしれない。
「あなたは極悪な犯罪者にはなれない。あなたにはそれだけのものを持っていないの。そうなるには、役不足よ」
それが、リンの結論だった。
駄目だ。僕はほんのわずか唇を噛む。
それではいけないのだ。それでは。
その確信をもとに、僕は静かに口にする。
「…でも、犯人はここにいる。君の目の前に」
「しつこい」
「しつこくても、僕は譲れない」
僕の言葉に、すう、とリンの瞳が細められる。
まるで氷のような視線。身を曝すには余りに痛いものだけど、僕は敢えてそれを身に受けた。
やがて、リンの唇にうっすらと笑みが浮かんだ。
「…いいわ、探偵さん。なら、私がどうしてこんなにあなたに肩入れするのか当ててごらんなさい。そしたらあなたの望んだ答えをあげる」
「…は?」
するり、とリンの細い指先がナイフを撫でる。
あれっ、なんか今強烈な悪寒が…
………リンさん。なんで攻撃態勢に入ってんの?
リンが花開くように笑う。非常に可憐だ。
…キャラに合わないことこの上ないな。
僕は反射的にそんなことを考えてしまった。もしもこんな風に考えたなんて知られたら、僕に明日はない。でもそんな保身を考える暇もなく、それこそ脊髄反射的にそう思ってしまったんだから仕方ない。
…端的に言うと、怖い。
「ほらほらほらどうなのよ?ナゾ解いてくれるんでしょう?手短に纏めてみなさいよ、さもないと刺すわ。具体的に言うと五文字以内」
「短すぎ!」
「あらぴったり五文字。でも解決になってないわね」
「え、何!?そこ!?そこ拾うの!?」
「はいアウト。じゃあサクッといってみましょうか」
「多分ザクッと行くんじゃないかな!」
「あ、動かないでね?間違えて殺しちゃうとまずいもの」
「いや僕ダーツの的じゃないんだけど!」
何故か増殖している最後の手段が、リンの指先できらりと銀色に光る。
それってマジック?いや、目の錯覚だよね。ナイフが増えてる訳がないもんね。あれだ、高速移動とかそういう何かだ。凄いなあ、全部実体に見える。
あとなんか、その銀の鋭くて痛そうな物体達を投擲する態勢に入っているのも気のせいに決まってる。
あれをたたき落とすとかどう見ても自殺行為ですね分かります。
とりあえず、僕は心の中でコマンド「逃げる」を選択した。
―――逃げるなら今だ、早く!
胸の中の警告に従って全力でその場からダッシュ。そして、走りながらなんとか口を開く。集中力を欠けさせる為にカッコイイポーズとかを決めながら。
選んだのは、いざという時の為の万能台詞だ。
「つ、続きはWEBで☆」
僕の渾身の爽やかな笑顔に、リンは黒い感じの笑みを返してくれた。そして、その笑みのまま華麗なスタートダッシュを決める。
…あ、やばい。死ぬかも。
「残念。最初からWEBだわ」
ほんともう、チェンジでお願いします!
コメント6
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ご意見・ご感想
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ご意見・ご感想
たぶん始めましてです。
終始クスクス笑いながら読ませていただきました。すばらしいお笑いセンスですね。たぶん吉本でも通用するかと…
翔破さんが変態だけではなく笑いにも定評があると思うのは僕だけでしょうか?
これからも笑破さんの楽しい作品を期待しています。(失礼しました、翔破さん。)
2011/05/09 01:09:52
翔破
はじめまして、コメントありがとうございます!
実は、書いている側としては、「これ上げていいのかな…ファンの方に怒られないかな…」とびくびくしながらUPしていました。何分この内容なもので…
なので、面白いと言って頂けると非常に嬉しいです。
これからも好きな物を好きなように書いていくと思いますので、お暇な時にでも立ち寄って頂ければ幸いです!
2011/05/09 22:00:45
ありす
ご意見・ご感想
お久しぶりですw
最初の二行から盛大に吹きましたwww
翔破さんのセンスを見習いたいです…(´;ω;`)
2010/11/23 15:47:55
翔破
こんにちは、読んでくださってありがとうございます!
最初の二行はほぼ出オ・・・いえいえいえ何でもありませ・・・おや誰か来たようだ
センスですか!?あるんだろうか・・・でも褒めていただけるって事は多少自信を持ってもいいのかという気分になります。ありがとうございます!
2010/11/24 07:37:31
翔破
コメントのお返し
はじめまして、読んでくださってありがとうございます!
鮮やかですか…!そう感じてくださったならとても嬉しいです。
そう評価されるのは書き手として目指しているところなので…
更新は不定期ですが、今後も読んで下さると嬉しいです。
ブクマありがとうございました。鏡美姫*さんも頑張って下さい!
2010/11/20 18:41:43
Aki-rA
ご意見・ご感想
くっそ笑いました。
親に変な目で見られたけど関係なしに笑いましたw
「最初からWebだわ」
間違いない!って声に出して叫びました。
2010/11/09 20:49:31
翔破
おおっ、何作も一気読みしていただけたようで光栄です!
コメント二つ頂きましたが、ここで合わせて返信させて貰います。
>残念なナゾナゾ
…実は、リンレンの最後の掛け合いが最初に思い付いて、そこから道を間違えました。
このリンレン、どっちもちょっとネジがゆるめですね!
>般若の面からの派生
気が付いたら勝手にキャラ達が動いていた物語。
でも個人的には割と気に入っている雰囲気のものだったので、コメント頂けて飛び上がりました。まさかあの話で貰えるとは思ってなかったんです…!
2010/11/09 21:23:52