三次元ボーカロイド。所謂『感情を持った歌うロボット』である。近年この三次元ボーカロイドがブームとなっている。
量産されたボーカロイド達は飽和状態となり、人々は新品ばかり求める傍ら飽きて途中で捨ててしまったり、売りに出すケースも珍しくはなかった。売られて中古として再販されるボーカロイド達は新品を欲しがる人々から見向きもされず、処分される事が多かった。
某所。中古ショップ―――
様々なソフトや機器を販売している中古専門のショップ。中古ながら状態の良い物を取り揃えていると言う事で知る人ぞ知る名店である。
ここにボーカロイドが数台安置されていた。人気のミクやリンレン、やや不人気ながら第一世代のメイコとカイトもあった。
第一世代はほとんど買手が付かず処分される事が多いので中古ショップでも買取りを拒否するケースが多々ある。しかしこの店にはしっかり取り揃えられていた。それはとある奇特な常連客が居たからである。
この日も奇特な常連客がやってきてカイトだけを買って行った。そう、この客は腐女子でカイト専門。しかも中古のみ買い漁っていた。最も不人気で処分率の高いカイトを購入する奇特なこの客はショップとしては良い客である。
中古カイトが買われて得た新しいマスターはカイトを起動させると少し待ってからカイトにつけられた拘束具を外して歩かせた。
「問題ないようだね。それじゃ歩いて帰ろうか」
大抵ボーカロイド、特に中古は暴走の危険がないよう機能を停止させて拘束具を取り付けた上で販売されている。起動後マスター登録をすれば購入者はボーカロイドのマスターになれると言う仕組みである。
「はい、マスター」
カイトは笑顔でマスターに答えた。マスターも満足そうに腕組みして頷いた。この後カイトはマスター宅で手荒い洗礼を受ける事になろうとはこの時のカイトは知る由もない。
奇特なマスター宅―――
マスターは女性ながらかなり質素な部屋に住んでいた。質素と言うより女っ気のない荒々しい部屋だ。雑誌や食べた後の残りカス、掃除はいくらかされているようで埃こそ積もってはいないが乱雑でとても綺麗とは言えない部屋だった。
「まぁ、散らかってるけど入ってよ。今日からここが君の家だからさ」
カイトは少し躊躇いながら部屋に入った。
ズルッ
「うわぁ!?」
カイトは入ってすぐに何かを踏みつけて転んでしまった。
「…うっ…イタタ…一体何が…」
タタタッ
「キタキタ新入り!おーいみんな、かかったぞー」
「え?!…」
最初の話ではカイト専門だったはずのマスター宅にいきなり現れたのはレンだった。しかもリンとミクとメイコも呼び寄せて転んだ新入りカイトを取り囲んでいる。
カイトの足下にはバナナの皮が落ちており、どうやらこれを踏みつけて転んでしまったらしい。レンが自慢気にバナナの皮を掴み上げて笑った。
新入りカイトは何が何だか分からず混乱していた。状況が呑み込めずアタフタしていると突然体が持ち上がった。慌てて後ろを振り見た新入りカイトが見た物は屈強な体つきのカイトだった。取り囲むメンバー達も皆一様に黒い笑みを浮かべており、背後から新入りカイトを抱き上げている屈強なカイトは黙って新入りを部屋の奥に連行した。
ドスッ
素朴な作りの部屋の奥にそれまでとは雰囲気の違う隠し部屋のような部屋があった。何かよくわからない機械がいくつか置かれている。さほど広くない部屋の中央には少し固そうなベッドが一つだけ置いてある。新入りカイトはおもむろにそのベッドの上に放り投げられた。
衝撃に顔を歪める新入りカイト。身を捩ろうとしたが体が全く動かない。状況を把握するまでに少し時間がかかった。まさか来て早々こんな手荒い歓迎を受けるなど誰が想像できただろうか。
「あの、降りてもらえませんか?…」
新入りカイトが状況を理解してなお意を決して自分に馬乗りになっているメイコに声をかけた。
「そう言って降りると思う?」
メイコの黒い笑みが否定を伝え、同時に恐怖を呼び起こした。
「た、助けて…マスター、助け…」
上半身には馬乗りになったメイコ、下半身には同じく後ろ向きだが馬乗りになるミク。共に手足を押さえていて、いくら女性ボーカロイド相手の男性ボーカロイドとは言え二対一は多勢に無勢である。助けを求めても誰も助ける者など誰も居なかった。震える新入りカイトはそれでも情けなくマスターを呼び続けた。
「だらしない兄貴だなぁ。すぐ終わるから泣くなよ」
レンが拘束具で新入りカイトをベッドに縛り付けた。もうどんなに抵抗しても逃げられない。
「あら?今回は泣かせちゃったのか。可哀想に。怖い事何もないから大丈夫だよ。すぐ終わるからね~」
頼りのマスターが主犯と知るとついに新入りカイトは観念したのか黙り込んで動かなくなった。マスターは苦笑いしてベッドに縛り付けられたカイトを宥めるように撫でた。
ベッドの脇から離れるとマスターは何やら不思議な器具を取り出して新入りカイトに装着した。
「や…嫌…マスター、やめて!嫌だ!マスター!」
怖がって暴れる新入りカイトに拘束具が食い込む。どんなに暴れても拘束具はカイトを逃がさない。やがて新入りカイトはスリープモードに入り動かなくなった。
「ふぅん、なるほど。これは掘り出し物だ」
満足気に検出データを眺めるマスター。どうやら謎の器具はボーカロイドの癖や特徴を検出するための機械だったようだ。中古品は前のマスターの情報を消去してもボーカロイド本体に染みついた個々の癖や特徴は消えていない事が多い。マスターがあえて中古品ばかり漁るのはこうした中古ならではの癖を楽しむためである。
「さ、準備するよ。今回はすごいからね!」
マスターの楽しそうな声とマスターに応じて準備を始めるボーカロイド達の動く音が小さな部屋にこだました。
合成亜種ボーカロイド
ホラーテイストでスタートしてみました。
長期連載できたら良いな~なんて思ったりしています^^
エログロ禁止!ですから、いくら「拘束具」とか「ホラーテイスト」だからってエログロ表現は入ってないはずです。
…エログロちょっと期待した人→ごめんなさいorz
…エログロ苦手やねんって人→多分大丈夫です^^;
続編は気長にお待ち下さい^▽^ノ
ネタが出来たら書いていくし、ネタに詰まったらいつまでも上がりませんorz
気持ちが乗らないと書けない人なので^^;
調子良ければガンガンいきたいですw
応援宜しくお願いします^^
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