第9回目の講座はボーカルのオケへのなじませ方についてです。
今回は特に歌ってみたをやる方にも参考になると思います。
自分でミックスをする方に悩みが多いボーカルのオケへのなじませ方について解説していきます。
まず最初に各トラックにリミッターをインサートし、音量バランスを整えます。
歌ってみたでは音圧の高いMP3データを扱うことが多いと思いますので、オケ音量と録音したボーカル音量に差が出ます。
作業がしやすいよう『オケの音量をボーカル音量に合わせて』下げていきます。
次にエフェクトです。
歌い手の声質やジャンルなどによっても各エフェクトの処理や順番など変わりますので、ここでは主なエフェクトのポイントを少し解説していきます。
・EQ
だいたい『2kHz~3kHz』の間にボーカルの柱となる部分が存在します。
ここを調整することでボーカル音量を無理に上げずに少し手前に出すことができます。
また『5kHz付近から上』はブレスやノイズが目立つ部分であると同時に空間の抜けも担っている部分です。
上げすぎるとサ行やタ行の摩擦音が強くなり、下げすぎると空間の抜けを失い、もこもことこもった声になっていってしまうので慎重に作業しましょう。
オススメとしては、EQで空間の抜けを調整し、ディエッサーで摩擦音を抑え、ブレスをボリュームのオートメーションで音量調節する方法です。
・コンプレッサー
声の音量差が大きいと最大を0dbに合わせて調整した場合、声の小さいところが聴き取れない状態が発生してしまいます。
そこでボーカリストの表現が損なわれないよう気をつけながらダイナミクスを調整していきます。
『ものによっては音色に差が出ます』ので、適宜使い分けていきましょう。
また、音色変化を最小限に抑える方法としてよく使われるのが、ボリュームの『オートメーションで調節する』方法です。
手間はかかりますが、こちらもかなり有効な方法です。
・ディレイ
ボーカロイドの発音の滑らかさが悪い場合に最も有効なのがこのディレイです。
今のボーカロイドは以前に比べ滑らかさが増しているので、特にUTAUなどに有効です。
ディレイタイムとフィードバックを『低い値』にすると自然な状態に近づけることができ、全体をウェット(MIX)で調整していってください。
またシンク(Sync)といったボタンがあれば、『テンポに同期』させることもできます。
設定にもよりますが、通常の場合、ウェットは『約0~20%程度』で収まることが多いと思いますので、ひとつの目安にしてみてください。
・リバーブ
初心者が最もかけ過ぎてしまいがちなのがこのリバーブです。
リバーブはぼかしなので、かけ過ぎてしまうと原音がぼやけ、奥まっていってしまいます。
楽曲にあったリバーブ量の調整が必要です。
伸びや響きはディケイタイムやプリディレイなどで調整し、全体をウェット(MIX)で調整していってください。
設定にもよりますが、通常の場合、ウェットは『約7~13%程度』で収まることが多いと思いますので、ひとつの目安にしてみてください。
最後に再度全体の音量バランスを調整します。
エフェクトの段階でボーカルにコンプレッサーなどを通していれば、バランスが変わってしまいますので、その段階から多少のバランスはとっていると思います。
ここでは最終的にオケとボーカルの音量バランスを『各トラックのボリュームとマスタートラックのゲイン、リミッター』で微調整していきます。
全体的なコツとして楽曲にあったエフェクトの量を目指すことです。
歌ってみたなどでは原曲のリバーブなど、よく聴いてどのぐらいのウェットが好ましいのか探ってみましょう。
また、なじませやすい方法としてオケとボーカルを一緒に軽くコンプへ通すというのもひとつの手です。
しかし、オケの音色が変化することにもつながるので、オススメはできません。
いずれはボーカルの調整だけでオケへなじませることができるよう目指しましょう。
ボーカルのオケへのなじませ方に関して理解して頂けましたでしょうか?
次回からはいよいよマスタリング編に突入します。
音圧と音質調整について解説していきたいと思います。
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