四月七日
今日から二年生です。クラスがえがありました。たんにんの先生も新しくかわりました。
二年生になっても、しっかり勉強していい子にしていようと思います。
さいきん、パパとママはけんかをしなくなりました。いいことです。けんかはうるさいからきらいです。これで、パパがもっと早く家に帰ってきてくれたらいいのに。でも、パパはお仕事がいそがしいので、しかたがありません。
六月十八日
五日前、頭がいたくて気分が悪くて、動けませんでした。お手つだいさんに言ったら、体温計を持ってきてくれて、ねつをはかってくれました。三十八度あったので、学校はお休みしました。
部屋のベッドでねていると、お医者さんが来てくれました。お手つだいさんがよんでくれたようです。ただのかぜだからだいじょうぶ、と言ってもらえました。
だからわたしはこの五日間、ずっとおとなしくねていました。たいくつだったけどしかたありません。
七月二十日
夏休みの宿題で、おじいちゃんおばあちゃんの話を聞いてくること、というのが出たので、こまってしまいました。わたしにはおじいちゃんやおばあちゃんがいません。パパの方のおじいちゃんおばあちゃんはもう死んでしまったし、ママの方のはどこにいるのかわからないからです。
先生にそう言うと「ああ……じゃあ、めぐりねさんはこの宿題はやらなくていいから。かわりに、これ、やっときなさい」と言われて、プリントのたばをわたされました。宿題のできない悪い子にならなくて、ほっとしました。
八月三十一日
今日で夏休みがおわりです。今年の夏休みもいつもと同じでした。
九月二日
今日、帰ったらお手つだいさんが大さわぎをしていました。何だろうと思って行ってみると、リンがはいはいをしていました。それがそんなにすごいことなのかな。
わたしがリンを見ていると、お手つだいさんが「すぐに歩きだすようになりますよ。子どもの成長っていうのは早いですから」と言いました。リンが歩いたってわたしには関係ないです。
十月十五日
さいきん、ママはあんまり出かけません。だからハクはたいくつそうです。家庭きょうしの先生は、ハクに勉強を教えようとひっしですけど、ハクは勉強がきらいなので集中できずにいます。
十一月二十一日
今日は、ハクのたんじょう日でした。ママはハクをつれて、レストランに行ってしまいました。そこでおいわいするんだそうです。パパは仕事で帰りがおそいので、好きにしろって言ったみたいです。
だから、わたしはひとりで夕ごはんを食べました。せいかくに言うとリンもいっしょだけど――レストランみたいなところは、リンのような小さすぎる子はつれてけないんだそうです――、まだしゃべれない子はかんじょうに入れたくありません。
十二月二十七日
今日は、リンのたんじょう日でした。一才だから、もう赤ちゃんじゃありません。
でもママは、とくにおいわいをしませんでした。リンはまだ小さすぎて何もわかっていないから、いわってもしかたがないんだそうです。だから、写真もとりませんでした。
一月一日
お正月です。今年は家族みんなでお客さんのお出むかえをしました。
お客さんが来るのはすきです。ほめてもらえるし、パパもいっしょにいてくれるから。でも今年は、リンがとちゅうでグズりだしてたいへんでした。リンは小さすぎるんだから、お客さんの前に出さなくてもよかったと思います。
一月三十日
今日は、わたしのたんじょう日です。八才になりました。
……それだけ。
二月二十一日
今日、学校から帰ってくると、リンが下の部屋をちょこちょこ歩いてました。リンはちょっと前から歩くようになったんです。お手つだいさんが「ずいぶん歩けるようになったんですよ」と、うれしそうでした。だから、どうでもいいんですけど。
三月十一日
今日、ママはひさしぶりにお出かけしました。でも、ハクは連れていきませんでした。ハクはそれが悲しかったみたいで、部屋でずっとないてました。本当になき虫なんだから。ないたってどうにもならないのに。
三月二十六日
今日は終業式です。通知表をもらいました。ほとんどの科目は5だったので、ほっとしました。
家に帰ったけど、パパはお仕事なので、通知表をパパのしょさいのつくえの上においておきました。後できっとほめてくれるでしょう。
四月七日
今日から三年生です。またクラスがえがありました。たんにんの先生も、またちがう先生になりました。
パパから「三年生になったのだから、今まで以上にがんばってお勉強するように」と言われました。もちろんちゃんとお勉強します。わたしはいい子だから。
四月十四日
今日もママはお出かけです。ハクはおるすばんです。ここのところ、ずっとそう。ママは前ほどハクのことがすきじゃないのかもしれません。
そう思ったらちょっとうれしくなってわらってしまって、ママに「あいかわらず気味の悪い子。おまえなんかいずれせいしん病院行きだわ」と言われてしまいました。せいしん病院は頭のおかしい人が行くところです。ママはわたしの頭がおかしいって思ってるんだ。ママなんか大きらい。
四月二十八日
今日、パパがめずらしく早く帰って来ました。ちょうどテストが返ってきていたので、わたしはパパにそれを見せました。パパがほめてくれたので、うれしかったです。
そこへ、ママがお出かけから帰って来ました。パパはわたしに「自分の部屋にもどってなさい」と言ったので、わたしはパパのしょさいを出ました。その後で、パパがどなる声が聞こえてきました。もしかしたら、ママがおこられたのかもしれません。なんだか少し気分がすっとしました。
五月一日
パパとママは、最近またけんかをしています。けんかはきらいなので、はやくどうにかなってほしいです。
五月三日
今朝、起きたらママがいませんでした。でも、ママがいてもいなくてもわたしには関係ないので、お手伝いさんが出してくれた朝ごはんを食べました。そこへハクがなきながらやってきました。ママがいないママがいないって、うるさいです。わたしは勉強があるから、ハクにかまってなんていられません。
五月四日
今日もママはいなくて、ハクはないていました。わたしがハクをあきれてながめていると、リンをだいたお手伝いさんがやってきました。お手伝いさんは、ハクをなだめようとしたけど、うまくいきませんでした。わたしは、ハクをほうっておいて、またお勉強をしました。
五月十五日
パパとママは「りこん」したみたいです。お手伝いさんが、そんな話をしていました。りこんの理由まではよくわかりません。ただ、ママはもう二度とこの家には帰ってこないんだそうです。
ママは前はあんなにハクをかわいがっていたのに、すてていってしまいました。ママってそういうものなんですね。わたしの本当のママも、きっとこんな風にわたしをすてていったのでしょう。ママって、何かきたいしてはいけないものなんです。
六月三日
ママがいなくなって、一ヶ月がすぎました。わかったんですけど、ママがいない方がわたしは気楽です。前はママとハクがいっしょにいると、どうしてもいらいらしたんですけど、今はママがいないから、いらいらしないですむんです。おかげで勉強がとてもはかどって、パパにも家庭きょうしの先生にもほめられました。
一つだけ問題なのは、ハクです。ママがいなくなったのがさびしいのか、毎日ないててうっとうしいです。しくしくないてるだけならまだいいんですけど、ハクはしょっちゅうすごい声でなきわめくんです。どうにかしてほしいです。
リンはママがいなくなったことがわかってないみたいで、前とかわってません。小さすぎるからでしょう。
ロミオとシンデレラ 外伝その十二【ルカの日記】後編
翌日はルカ誕なのに、なんでこんな話あげてるんでしょうか……。ルカごめん。
コメント0
関連動画0
ブクマつながり
もっと見るこの週のうちに、戯曲に関する作業は全部終わらせることができた。ほっとした半面、淋しいと感じてしまう自分がいる。レン君と一緒に作業をしたことが、とても楽しかったから。もっとこの時間が続いてほしいと、わたしは思ってしまった。……でも、そういうわけにはいかない。きちんと終わらせないと、向こうが次の段階に...
ロミオとシンデレラ 第四十五話【裸の王様】
目白皐月
十二月二十四日、俺はリンへのプレゼントを鞄に入れて、家を出た。風は冷たいが、空は綺麗に晴れている。……まあここ、東京だしな。クリスマスに「ほら、雪が降ってきた」なんてのはありえない。ニューヨークじゃないんだ。
電車に乗って、クオの家に向かう。相変わらずでかい家が視界に入った時、車が一台俺を追い抜...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十八話【クリスマス・ベルズ】
目白皐月
放課後、俺は初音さんと一緒に初音さんのところの車に乗せてもらって、リンの入院している病院へと向かった。車だとさすがに早く、割とすぐ病院に着いた。
初音さんはさっさと病院の中に入っていくと、受付の人と話し始めた。しばらくすると、こっちに戻って来る。
「リンちゃん、311号室だって」
エレベーター...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十二話【それが多分たった一つのできること】後編
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカの視点で、彼女の九歳の誕生日の話です。
この話に関しては、外伝【わたしはいい子】【ルカの日記】を読んでから、読むことを推奨します。
【ケーキと愛情】
「ルカ、もうじきおたんじょう日よね」
パパとさいこんして、新しい...ロミオとシンデレラ 外伝その十四【ケーキと愛情】
目白皐月
駅に着くと、僕は帯人兄さんの住んでいる家の最寄り駅までの切符を買った。改札を抜けて電車に乗る。電車に揺られながら、僕は今度は帯人兄さんのことを考えていた。ちょっとは落ち着いていてくれるといいんだけど……。
次兄の帯人兄さんは、僕の五歳上。優等生だったマイト兄さんと比べると、帯人兄さんは「問題児」...ロミオとシンデレラ 外伝その十五【カイトの悩み】後編
目白皐月
グミヤの話を聞いてから、俺は改めてどうしたらいいのかを考えた。
今までと同じ……でも、表向きは不都合はない。俺たちは仲のいい友人で、一緒に本や音楽の話をする。リンは今までと同じように、接してくれるだろう。
けど……客観的に見て、リンは可愛い。リンにいらないちょっかいを出す奴が、また出てる可能性...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十七話【川より深く、山より高く】
目白皐月
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想