初恋は、実らないのだという
だとしたら、生まれる前から決まっていただろうこの気持ちは
一体何になるのだろう
・・・そんなの、考えなくとも分かる筈なのにね
*** アンブレラ ***
忘れたから入れて、と彼女は当たり前のように言った。
そりゃそうだ、と納得する。
帰る家は同じ。ついでに背丈もほとんど同じ(なんだよこれから伸びるんだからいーだろ)。
正真証明、血の繋がった双子。一つの傘に二人で入るなんて、初めてのことじゃない。
それはきっと彼女もよく分かっている筈だった。
コンビニで買ってきたという肉まんを口いっぱいに頬張りながら、目許を綻ばせる笑顔が何よりの証拠だった。
「レン今日数学分かった?」
「数学? んーなんとなく」
「んな"っ!」
あからさまな、ショックを受けた!という表情。
っていうかモノ食べながら喋るのやめなさい。
「あんであんにゃのわひゃるのー!」
「リン、日本語」
「・・・っ、だから、なんであんなのわかるのー!」
リンはようやっと肉まんを喉へと納めると、信じられないというようにうなだれた。
一喜一憂の激しいコだってのは、そりゃーもうずっと分かってることだけど。
「いや、なんで分からないの?って俺はいいたいんだけど」
「・・・嫌味?」
「別に?」
「本音が顔に浮き出てるわこんにゃろっ。クスクスクスクス笑いやがって!」
リンはたいそうご立腹のようで、傘を俺から強奪して走り出した。
え、ちょっとまって、それ俺の。
首筋を伝う雨粒の気持ち悪さはたまったものじゃない。慌てて後を追う。
あっというまに、追いついた。
こういうとき嬉しくなるのは、あまりに単純かな。それとも不謹慎?
リンは女の子で、俺は男なんだって実感がこみ上げる。
「ちょっとまってってば!」
「っ、レン足早い」
「そりゃー・・・」
俺、男だし。そう言おうと思った。
でも言えなかった。
次のリンの一言で、すべてが喉元へとひっこんだ。もう戻ってはこれない場所にまで、埋まってしまったかのように。
「昔は足だってあたしの方が速かった!レンばっか、ずるい。双子なのに。なんで勉強も走るのも、あたしより・・・」
――ずるい。
ずるいって言った? この子。
俺がずるいなら、それじゃあ君は何になるの。
俺がしている葛藤など知る由も無く、無邪気に笑う、それは何になるの。
(・・・相合傘だって、)
(男の子とするのって緊張するって言ってたよね)
(緊張で手汗とかかいたらヤだなって、言ってた)
(じゃあ俺としてるこれは、相合傘にならないの?)
――矛盾してる
矛盾してるよ、リン。
「・・・数学くらいだったら教えてあげるから」
足の速さはどうにもならないけど。
「あと、双子とかいったけど」
「・・・?」
「そういうの、関係ないから。俺男だしね。ずっとおんなじとか、間違っても思わないで」
――何いってるんだろ。俺。
リンの手から傘を取り上げて、空いた左手でリンの右手を掴んだ。
リンは何も言わずについて来た。俺が怒ってると勘違いしたらしい。
・・・あながち間違いではないんだけど。
前を歩いているのをいい事に、苦笑するしかなかった。
***
僕たちは二人で一つだった
誰だってそう思ってたし、彼女もそう思ってたはずだ
だからこの場合、間違っているのは僕なんだ
カミサマはきっと、許してはくれないだろう
だけどどうしても、捨てることだけは出来なかった、この気持ち
せめて、しとしとと降り注ぐこの静かな雨が
溶かして
浄化して、
空に、還してくれますよう
《fin》
手汗が気になって仕方なかった、なんてこと
リンが知る日は、たぶん一生来ないんだろう
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ご意見・ご感想
音坂@ついった
ご意見・ご感想
切なくも萌える作品ごちそうさまです…!
いっそこのまま禁忌ルートに入ったってノリノリでいられる自信があr((ry
双子だから全部一緒なリンの気持ちも、レンの意見もわかるのでやはりここは傍観しているのが一番楽しそうです…!
2010/03/15 19:54:22
Riria
おおおお音坂様ぁあ!おいでくださいましたかありがとうございます!(思わず敬語)
そうですね、禁忌ルート内心では私もぜんっぜんおk(ry
なんですが、やはりここはぐっとね、こらえて。いつかその溜め込んだものが爆発するときを、によによしながら待つことにします←不気味
2010/03/16 02:53:03