『あ……あ……ああああああああああああああああああああっっ……………!!』



上空では、主砲の直撃を喰らったミクが断末魔をあげていた。

主砲の炸薬を全身に浴びたミク。化学反応で体を形作るバイオメタルが融けはじめていた。

全身の皮膚は既にドロドロ。幼くも美しい顔は、崩れ頭蓋骨がむき出しになり、喉も融けて壊れ始めていた。


(あ……! 熱い……体が……熱いよっ……嫌……融ける……体が融けるぅっ……!!)


もはや手足を動かすこともできない、ただの溶けた金属の塊―――――ミクの命は風前の灯火と言ったところだった。





「くくく……あれほどまでに融けてしまっては助かるまいよ」

「全くだぜ……しかしお前があんな炸薬積むと言った時には度肝抜かされたが、結果的にはおかげで一撃必殺だったな?」


安治が首を鳴らしながら田山に言葉を投げかけた。


「爆発力と反応速度を両立させるのには苦労したからな。一撃であってもバイオメカ一体をドロドロにするぐらいの反応を起こしてもらわねば沽券に関わる」


腐っても科学者。それも腕前だけは超一流の『TA&KU』。

作成した新物質には絶対の自信と確実な結果が求められているのだ。


「さて、このまま融けきるのを眺めていてもいいが、せめて最後は華々しく散らせてやるとするか……」


田山が操縦桿のボタンに手を掛けようとした――――――――――その時。



「田山君!! 高速で上昇してくる高エネルギー生体反応が二つ!! 鏡音リンと鏡音レンよっ!!」

「何!? 馬鹿な……奴等はまだ潜在音波が……!?」


思わず操縦桿から手を放し立ち上がった田山が、モニターを操作すると―――――





『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』


裂帛の気合いを放ちながら、凄まじい勢いで上昇していくリンとレン。

その視界に、徐々に原型を失いつつあるミクの姿をとらえた瞬間、二人の手が動いた。


『『ツイン・サウンド』改めっ!!』

『『Twin・Append』っ!!!!』



『リカバ――――――――――――――――――――――っ!!!!!!』



突き上げた2人の手が―――――黄金の光の柱を放つ。

真っ直ぐに真っ直ぐに伸びていき―――――ミクの全身を包み込んだ。


『っ!!?』


急激に体が宙に浮く感覚。凄まじい回復エネルギーの波導を浴びたミクの体は―――――ドロドロに溶けた状態から一瞬にして原型を取り戻した。


(これは……リンとレンの力? 体が回復して―――――……)



(……ううん、それだけじゃない! エネルギー波の中を伝って―――――)



何かが―――――ミクに向かってくる。


体勢を変え、光の下に目を凝らすミク。

するとその元の方から―――――エネルギー波とは別の六条の光の筋が向ってきた。

桃色。薄緑。黄金。紫。黒紫。灰緑色。

六条の光は真っ直ぐミクに向かってきて―――――そしてその周りで美しく舞い始めた。


《お待たせぇ、Normal♪》


《大分待たせちゃったみたいですね》


《ヒャッハアアアア!! このLight様が来たからにはもう心配ないぜええええ!!》


《Light、騒がしいよ。……でも、もう心配ないってのは確かかな》


《奴等に……悲しみと不幸に満ちた世界を見せてあげましょう……》



《さぁ、行くぞNormal。我ら『Append』に続けっ!!!》



渦巻く光たちが一言ずつミクに言葉を掛けながら、身体の中へと入っていく。


そしてミクの脳裏に響く言葉――――――――――





【アップデートデータ初音ミクVer.2『Miku Append』インストール完了。ダウンロード・アップデートを開始します】





【―――――アップデート完了。初音ミク、再起動します】





『ぅ……ああ……ううう……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!』



『Twin・Append・Recover』の光を破り、天高く吼えたミクの眼で――――――六色の光が瞬く。

そしてそのまま腕を打ち振って――――――――――



『Light&Solid&Vivid!! リフレクション・ソニックブーム!!』



指先から放たれた音波の塊―――――





――――――――――――――――『破壊者』のバリアを、いとも簡単に吹き飛ばした!!





『うおおおおおおおおおおっ!!!?』


リンとレンの感嘆の声と―――――艦橋の指令室では、『TA&KU』の驚愕の声が響き渡っていた。





「馬鹿なぁっ!!!? なんだ……なんだこの威力はっ!!?」

「さっきまでのヘタレはいったいどうしやがったんだよっ!!?」


突然のことに大騒ぎを起こす田山と安治。そして久留須は、信じられないと言った様子で手元のモニターを見つめていた。


「嘘……こんなことが……」

「どうした、久留須?」




『初音ミクの……データエラーが治っている!!』





『ミク姉っ!!』


ミクの元にたどり着いたリンが、そのまま抱き付く。


『リン……レン……!』


後から追いついたレンにも、嬉し涙を浮かべた笑みを向けるミク。


『……ありがとう……それと、ごめんね……!』

『……へへ……ミク姉、謝んのはあとだぜ!! 今はこのでっかい船沈めんぞ!!』

『うん!!』


ミクが力強く頷くと同時に、力強く空気を蹴って加速。リンとレンも、しっかりと手を繋いで飛び出した。

『破壊者』の主砲が空を見上げ、一斉射。同時に副砲、機銃も火を噴き、更にこれまで鳴りを潜めていたビームキャノンも動き出した。

リンとレンはそれをバリアで弾き返す。強化されたそのバリアは、カイトの絶対バリアにも劣らぬ超硬度だ。


対してミクは―――――全弾回避。弾の大きい主砲はともかく、高速の弾幕を張ってくる機銃や速射砲、連続的に撃ってくる副砲、銃弾とは比べ物にならない高速と高圧力を持ったビームキャノンすらも躱していく。


『Solid!!』


灰緑色の髪を振り乱しながら放った斬撃音波は、回復したバリアすらも真っ二つに切り裂いた。

威力が格段に上がっている。『Solid』単体であるにも拘らず、回復前とは比べ物にならない切れ味だ。


『すげぇ……ミク姉、今までと比べ物にならねえ強さだ……!!』

『これが本来のミク姉の強さ……って事なの!?』


圧倒的なまでの制圧力。その凄まじさは、リンとレンの言葉を、ヘッドセットを通じて聴いていた、メイコたちにも伝わっていた。


「ミク……いったいどうしたっていうの……!?」

「リンとレンの力で回復してから、急に強くなっただなんて……リンとレンの回復力はそこまで上がってるってことか……!?」


一同が困惑する中、ルカだけがその大きな目を見開いて、空を見つめていた。

そしてぽつりとつぶやく。


「……そうか……外付けハードディスクってことか……!」

「え?」


メイコたちに振り向いたルカの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。


「喬二博士……きっとこうなることを見越してたんだよ! リンお姉ちゃんとレンお兄ちゃんが、ミクお姉ちゃんを助けようとして潜在音波を覚醒させることを!」

「え……どういうこと?」


再び空を見上げたルカ。そして鋭い目で時々見える光を見つめながら、口を開いた。


「……潜在音波をインストールした後でのエラー発生。流石の喬二博士たちでも、きっとその場で直すことは不可能だったんだと思う。原因はすぐにわかっても、直接ミクお姉ちゃんのAIにデータを組み込むなんてことは出来なかったんだ。複雑で繊細な、人間の脳と同等の性能を持つAIにデータを書き入れるなんてことは……。……だけどたった一つ抜け道があった。『直接データを書き入れる』ことができないなら、『外付けハードディスクを介して送り込めば』良い……!!」


はっとしたメイコ。ようやくつかめたのだ―――――自分のマスターが、妹たちの体に仕掛けた『魔法』が。


「喬二博士は空きメモリに余裕のあったリンお姉ちゃんとレンお兄ちゃんのAIに、圧縮してzipファイルに変換した『Miku Append』のデータを潜ませて、潜在音波の付属ファイルとして深層に沈めたんだ……ミクお姉ちゃんを助けようとして『Twin・Append』が覚醒した時、解凍された『Miku Append』のデータが音波を介してミクお姉ちゃんのAIにインストールされるように!! すごい……凄いよ、喬二博士……!!」


キラキラした眼で空を見つめるルカ。だがメイコは、マスターの成し得た奇跡に感動しつつも、急に複雑なことを話し出したルカに、小さな小さな希望を見出していた。



―――――本当に起きるかもしれない。最高の奇跡が。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

輝く鏡、拡がる音 Ⅵ~Twin・Append①~

三人の『Append』が魅せる音色の刃!!
こんにちはTurndogです。

ミクさんのデータインストールの流れがわからないって?
アレだよ、データを書き込むのは誰もができる訳じゃないけど、USBパソコンにブッ挿して中のデータを送り込むことは誰でもできるでしょって事よ←

因みにAppendたちの性格は、最近始めた艦これの艦娘たちの性格を元にしてます。
Sweetが如月、Softが鳳翔さん、Lightがヒャッh……じゃない隼鷹さん、Vividが時雨、Darkが山城さん、Solidが長門さん。
わかる人は割とわかるかもしれんw

長くなったので前のバージョンに続くよ!

閲覧数:333

投稿日:2014/08/05 01:58:00

文字数:3,726文字

カテゴリ:小説

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  • ゆるりー

    ゆるりー

    ご意見・ご感想

    いやっふううううううう続きいいいいいいいい(((
    敵の女の人すごく冷静なせいか、あまり悪人に思えないのですが。
    そしてこの話のミクさん(最初らへんの文)が悲鳴モノですね。

    鏡音覚醒!かっこいいです!
    なるほどダークが中二病、ライトがキチガイなんですね←
    ミクさん最強説ですね。
    ルカさんが「ミクおねえちゃん」と言っていて、誤字かと思いましたが小さくなっていたのを忘れていましたてへ☆←
    単体でも動ける鏡音KAKKEEEEEEEEEEEE!!!!!!!
    そしてまさかのデストロイア復活!俺達の戦いはこれからだ!

    ところで大罪投稿しました(ぼそっ)

    2014/08/06 21:08:28

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      落ち着こうZE☆(お前が言うな
      久留須さんと宇野は田山や安治と違ってがっつくタイプではなく、ぼんやりとミクさんたちを殺そうとしているのではなく確固たる信念のもと殺そうとしているからそう見えるのでしょうw
      うん、自分で想像してて若干鳥肌が立った……←

      真打は最後に現れるのです!
      いえDarkが不幸娘、Lightがヒャッハーさんです(おいLightわけわからん
      多分現時点で最強はミクさんですw
      でもだいぶ理知的な口調なのに気づいたかな?
      正に本当の自分だけの音波ってわけです! マジ鏡音ぇな!
      【ご愛読ありがとうございました! Turndog先生の次回作にご期待くだs(おいやめろ

      知ってますww
      でも今忙しいのとツッコミどころ多彩すぎてどう突っ込もうものか悩んでいます←

      2014/08/06 23:19:23

  • Tea Cat

    Tea Cat

    ご意見・ご感想

    ふおおおおおおおおおおおおお!!!
    ミクさん!!鏡音!!
    すげええええええええええええええ!!

    わかりますRPGでラスボスは2回倒さないといけないあのパターンですね!!←

    2014/08/05 07:56:27

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      かっこかわいいトリプルAppendな訳ですよ!w

      そうそれ←
      二回目は大抵発狂してきたりするんだよw

      2014/08/05 09:24:43

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