「わざと、じゃないよ。だって、偶然に居たんだもん。あたし、ハミングスの雑貨って、好きだし」
口をとがらせて、駿河ちゃんは言う。
「わざととは言ってませんけど、でも、さすがに情報通の駿河さんですね」
ちょっと笑って、マスターの吉さんが言った。
「この子、結構、早耳だからね~」
霧雨さんが、笑いながら、スコーンを口にほおばった。
「カフェ・つんでれ」の午後は、お酒は出ない、普通のティー・ルームだ。
でも、霧雨さんは辛党・甘党の両方イケるので、昼夜を問わず、ここに出没している。
きょうは、駿河ちゃんとともに、やってきた。
彼女の“情報”について、いろいろ話し合っている。
「ふーん。でも、ハミングスの新製品、えーと“リンリン・はっちゅーね”だっけ?」
「うん」
「あんまりギミック(仕掛け)っぽいものは、ないみたいね。カワイイ路線の、王道勝負で行くのかなあ」
「んー、そうみたいだね」
霧雨さんと駿河ちゃんのやり取りを聞いて、コーヒー豆を挽きながら、マスターは思った。
「ヤレヤレ。情報も筒抜けだなあ。でも、まあ、ルカさんたちはそのくらいでは、たじろがないだろうけど、な」
●新しいドール・楽しみです!
さて、その頃。
ニコニコ・デザイナーズ・ビレッジ(ニコビレ)の2階の一室で。
アクセサリー「レイム&パム」の事務所兼アトリエの部屋を訪れたのは、りりィさんと、テトさんだった。
新しいアクセサリー製品の仕入れの話で、上海屋のりりィさんは定期的にここにやって来る。
きょうはたまたま、「テト・ドール・ナチュラル」の新発売の件で、さっきまで打ち合わせをしていたテトさんも、彼女についてここに来た。
「そうですか、新しいテト・ドールが! 来年の春ですか?楽しみですー」
レイムさんは面白そうに言う。
「ええ、おかげさまで」
テトさんは笑って、うなずいた。
「いい商品になったみたいよ。今度のは。それでね」
ちょっと意味ありげに、りりィさんは言って、テトさんと目を合わせた。
「レイムさんの、オカルトチックな話を今日も、ちょっと聞きたいなと思って」
「あらー、そうなんですか。喜んでー!」
がぜん、張り切って目を見開くレイムさん。
●いま忙しいですか?
「ちょ、りりィさん、やめてくださいな」
横にいるぱみゅちゃんが、苦笑いしながら、手のひらで止める仕草をする。
「なんでまた、この子の話を?」
「うん。私たちの、その新しい人形なんだけどね」
テトさんが、困ったように切り出す。
「すごくいい出来なんだけど、それに加えて、ちょっと、不思議なところがあるんで」
「え」「エッ」
同時に叫んだ、ぱみゅちゃんとレイムさん。
「おひょひょ?この前は、“はっちゅーね”で、こんどは、こちらが“不思議”?」
びっくりした顔で、ぱみゅちゃんが言った。
「私は、気のせいだと思うんですけどね」
諭すように、りりィさんが言った。
4人は、目を見開いたり、首をかしげたりして、しばしの間、沈黙してしまった。
すると、ちょうど、部屋の窓の外の廊下を、誰かが通るのが見えた。
「あら!紙魚子さんだ!」
大きな声で、レイムさんが叫んだ。
彼女はすっくと立ち上がり、事務所のドアをの方に向かいながら、言った。
「こういう話はね、紙魚子さんも混ぜてした方が、いいの。グッド・タイミングだ!いま、時間、あるかなあ?」
ざわつく3人を尻目に、ドアを開けながら、彼女は言った。
「あ、紙魚子さん、こんにちは。いま、お忙しいですか?」ヽ(^。^)ノ
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ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
こんにちは!
テト・ドールの方も、なにやら不思議なことがある、ってことで、オカルト大好き系の方々が集まってきましたね~?
それにしても、いいなぁ、昼下がりのカフェ。こういうまったりした感じ、大好きです!
ではでは~?
2014/01/30 14:27:14
tamaonion
enarinさん、感想を有難うございます。
>テト・ドールの方も、なにやら不思議なことがある、ってことで、オカルト大好き系の方々が集まってきましたね??
そうですね。
このお話では、ボカロの人気、という不思議な現象をテーマにしたいのですが、
初音ミクの文化は、実際には「詩的」に語られることが多いと思います。
あるいは、SF 的に、ですね。
でも、世の中の流れとしてみた時に、「概念としてあるものを、愛せるか」というテーマになるとすると、オカルト的に捉えられるかな?
そんな風に思っています。
また、感想を聞かせて下さいね。
それでは、また。
2014/02/02 20:35:58