すみません、ギャグです。


~~~~~~~





私は、常々思うのです。







―――レンって、男じゃない!







<ぶつけろ枕!>






「信じらんない!信じらんない!」
「ちょ、リン、落ち着いて!」
「落ち着ける訳ないでしょこのヘタレ!」
「へた・・・!?僕が気にしてるの知ってるだろ!?」
「知るかぁ―――ッ!」


家が広くてよかった。私は心底そう思った。
だってうちの広さなら喚いたところでお父さんやお母さんには聞こえない。


「なんなの!?かっわいい女の子が涙目で見つめてんのよ!?それで帰るとか失格!男としてアウトよアウト!」
「可愛い女の子って、姉弟だから!手を出したら男としてアウトとかじゃなくて社会的にアウトだから!」
「知るか!」
「だああああだから駄目だって言ってるだろ―――!」



ぷつん、とレンがキレた音がした。
ちょっとまずいな、とは思ったけど、正直今ならレンのベスト状態と口論しても負ける気はしない。

よし、かかってきなさい!

私はかわいらしいネグリジェ姿を強調するように胸を張ってみせた。
どうよこの鏡音リンのネグリジェ姿!伊達にクラスで1番可愛い子の称号持ってるわけじゃないわ。よーく見なさい、ヘタレン!ノックアウトしてあげる!



「聞いてるわよ!合意の上なら問題なし!」
「いや、問題あるから俺必死なんだけど!」



ふむ。説得が効かないと来たか。
ならば。

私は持ち前の瞬発力を活かして、ベッドからレンに向かって疾走した。そんなに距離はないけどね。
慌てた形相で避けるレンに舌打ちをして、手早く扉に鍵をかけてしまう。だけでなく、鍵を抜く。
むう。避けなければ実力行使で押し倒しちゃおうと思ってたのになぁ。まあでも、目的の一つは達成できたからいいか。
抜いた鍵をこれみよがしに見せびらかす。


「ちょ、リン、何してんの!?」
「ふふふ。帰りたくば私を(押し)倒すしかないからね」
「あっごめん今()の中の言葉読めたよすごく不本意だけど!」



一息で言いやがったこいつ。



っていうか大体、私が痺れを切らしたのはレンの態度のせいなのに。

あからさまに『女の子』として扱って、明らかに一線越えようか越えないかどうしようかみたいな態度取られ続けたら、普通誰だって焦れるでしょ!
もう、本当に困るくらいなら、私が寝れなくて目を閉じてるときとか朝起きられなくて意識が覚醒してるときにこっそりキスとかしないでよ!レンは私が寝てるんだと思ってるんだろうけどさ。

でもそんなことばっかりされていると、叫びたくなってくるの。





―――一線越えたいならさっさと越えてよ、このヘタレ!





なんというか、すごく・・・イライラするよね。




「っていうか据え膳なのよ!食ってかないとかありえない!」

さっき顔面に命中させた枕を拾い上げて再び投擲体制を整える。
この至近距離、外すことはありえないわ。さあ喰らいなさい、私の全力投枕!

「待って待って待ってえぇぇ!わ、わかったからちょっとは僕にも話させて!」



真っ青になって両手を上げるレン。
何を今更。問答無用!


と、行きたいところだけど。


「わかった」

とりあえず枕を発射準備位置から下ろす。
言いたいことがあるっていうなら聞かないと。レンが本当の本当に嫌だって言うなら考え直すし。

はあ、と胸を撫で下ろすレンをじっと睨み付ける。
レンは何回か深呼吸をしてから、私と目線を合わせた。

「リン、無茶すぎるよ」
「なにが」
「その・・・す、据え膳とか」

ちょっと待って。私のスタイルチラ見したのは何の意味があるの。
貧相云々を言う気ならベッドじゃなくて血の海に沈めてやる。

かあ、とレンの頬が赤くなる。

「本当にやばいから、やめて」

・・・・えぇ?

「我慢しなくていいのに」
「だから、ああもう!リンは分かってるの?どういうことになっちゃうのか!」

きょとんとした私から、レンは真っ赤になった顔を背ける。
耳まで赤くなってる、と頭の一部が変な観察を始めた。

「このまま・・・その、やっちゃったら、もう普通の姉弟には戻れないんだよ?ずっと変な関係のままでいないといけないんだよ。姉弟でも恋人でもない、いびつな関係。それでいいわけ?」

何よその自分はわかってます的な発言。
ちょっとむっとするわ。フリーズした頭がまた回転し始める。

「何、レンは私がそれを考えてないとでも思ってたの?」

ずい、と私はレンに近寄った。身を引かれたから、更に二歩。
昔は私とよく似ていた顔が、近付く。



あのねレン。私の方がより前から、レンを弟だなんて考えないようになっていたんだから。

なのに同じベッドで一緒に眠って。着替えとか勉強とか一緒にして。四六時中一緒に居て。
いつだってドキドキしてた。
弟じゃなくて、『鏡音レン』に、ね。

気付いた時にはパニックになったよ。おかしいって。
鏡映しの姿が崩れただけでこんなおかしな気持ちを持っちゃうようになったのか、って。

でもそのうち結論は出た。
―――気持ちを抑えるなんて、無理。
もしもレンも私を想ってくれたなら、行けるところまで行きたい。




「ばか」




私は自分と同じ色の瞳を見つめた。
少し見上げる形になるのが淋しいような・・・嬉しいような。




「覚悟ならしてるよ」



ゆっくり、その体に手を回す。
回し切った瞬間、ぎゅう、と凄い勢いで抱きしめられた。
首筋にかかる息が―――熱い。



「・・・リン!」




幸せな気持ちになって、私も回した腕に力を込める。

禁忌?かまわないよ、そんなの。

レンが腕を解き、かわりにその両掌で私の頬を包み込んだ。

幸せそうな笑顔。
それがゆっくりと近づいて――――








ボーン。ボーン。ボーン・・・







鐘の音で、ぴたり、とレンの動きが止まった。


―――どうしたんだろう。



問うようにその顔を見ると、そこにじわり、とかなり決まり悪そうな表情が浮かぶのに気付いた。


嫌な予感。








「・・・・宿題、してない」


「・・・・はあ?」







ぱ、とレンが私の顔から手を離す。

「ごめんリン、明日の夜まで待って!」

言い捨てて奴は私の手から鍵を取り、颯爽と身を翻した。
私はぽかん、としたままそこに立ち尽くすしか無い。
だって、え、ちょっと、




じわじわと理解が染み渡ると、さすがに怒りが溢れ出して来た。








これはないでしょ普通!!







鍵取るための演技だった、とかの方がいいわ!
素だったら明日虐め抜いてやる!ヘタレ!ヘタレ!さすがお母さんに刺されたお父さんの血を引いてるだけあるわ!ふざけないで、返せ乙女の期待!

私は落ちていた枕を拾い上げて開いた扉に向かって思いっ切り投げ付けた。









やっぱりレンなんて男じゃない!








~~~おまけ。翌日のふたり~~~~

「あー、と、リン」
「話しかけないでくれる?ヘタレ」
「ごめんなさいリンさん」
「あそこまでやっといてキスすらしないとかありえない」
「いや、だって」
「だって?」


「キスしたら絶対止まんなかったし・・・」


「・・・合格にしといてあげる」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ぶつけろ枕!(私的アドレサンス)

私はアドレを応援しています。

それにしてもとんだヘタレですね!すみませry

閲覧数:2,932

投稿日:2009/11/17 23:33:51

文字数:3,060文字

カテゴリ:小説

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  • 翔破

    翔破

    ご意見・ご感想

    >Ж周Ж さん
    私もなんだこの解釈wと思ってるので!レンに関してはロリ誘拐のレンとアドレンが大好きです。なのになんだこのヘタレンw

    >錫果 さん
    わりとそのつもりで書きました!
    ニコで「ファミーユ」(アドレ+サンドリ)を聞いてから、自分設定としてはカイトとリンレンが家族関係だったら面白いなあ、主義になりまして。お兄ちゃんとかお父さんとか。この世界のサンドリヨンも書きたいです。当然ギャグなわけですが。
    ジュブナイルは気づいたらリンがそんな発言してたんで・・・気づいてもらえるとは思ってませんでした(ぇ

    2009/11/19 07:35:40

  • 錫果

    錫果

    ご意見・ご感想

    アドレサンスはこのくらいほのぼの(?)してればいいと思います!(笑)
    ギャグと言いつつ、節々や最後でがっつりレンリン(リンレン)萌え頂きましたー

    “クラスで一番可愛い子”がジュブナイルだったり
    “お母さんに刺されたお父さん”がサンドリヨンだったりしたら私もう一生ついて行きm(ry 意味不明

    それでは、素敵で愉快なアドレサンス、ごちそうさまでした!

    2009/11/18 23:06:37

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