語り部の或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』

ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのは遠い昔に青い髪の男女の人形が謡っていた全5曲から成る一連の物語の二曲目のお話です。この物語は呪われていますから、決して口外なさいませんように。

その昔、遠い遠い森の奥深くに、双子の魔術師が住んでいたそうです。
その双子は一つの魂を分けて誕生したため、それぞれは半分ずつの力しか与えられなかったそうです。

二人で一つという状況に不満を抱いていた妹はいつしか
「片割れがいなくなれば力は一つになれるのよ。だから、
私がこの手で殺してしまえばいいのよ。」
そう考えるようになり、力をと一つにするための計画を立てて、
或る日その計画を実行に移したそうです。

双子の妹があたかも歌を歌うかのように呪いの言霊を、
只唯に紡ぎ出す姿を目の当たりにして、兄は嘆き悲しんで
涙を零したのですが、彼女に兄の気持ちはもはや、伝わらなかったそうです。

そして兄は、妹が手を汚さぬようにと願い、告げたそうです。

「僕はただ、君と二人、共に暮らせればよかった・・・。
だけど君がそう望むのならば捧げよう。」
そう言いながら兄は、己の眼に指を突き立て、彼は頬笑みながら言ったそうです。
「君の中で生き続けるよ、永遠にね。」と。
その言葉を最後に、静かに崩れ落ちる彼を抱き上げる彼女は笑っていたのですが、その瞳に覚えの無い涙を湛えていたそうです。
そして、もう何も言わない兄に問いかけたそうです。
「私は望んだ。兄のものであるこの力を。だけどどこか、崩れたような気がするのよ?」

「痛い、痛い、この眼。熱くて涙落ちる。抉れたのは私ではなく兄の方よ?」と。


いかがでしたか?私のお聞かせした物語は。今日のところはここでお開きにしましょう。次にお聞かせするのは三曲目の物語です。帰り道にはどうぞお気をつけて。よければまた、私の物語を聞きにいらして下さい。それではさようなら。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

語り部の或る詩謡い人形の記録『言霊使いの呪い』

語り部シリーズ13作目です。

閲覧数:334

投稿日:2009/08/05 16:29:22

文字数:872文字

カテゴリ:小説

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  • 文鳥

    文鳥

    ご意見・ご感想

    あ、前回に引き続き入力ミスが・・・・
    即効修正したぜ、黒夢。
    あ、科学者の話好きなんだ?
    下書きはできてるぜ。

    2009/08/05 16:31:30

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