6月ハーモニー 未来音符 そのじゅーに~
私は先輩と別れて小雨の中、真っ直ぐ家に向かった。
メゾールから出て、駅に行って電車に乗って、誰もいない家に向かった。
家に着くまでの間、私はずっとイライラしていた。
そして家に着いて自分の部屋に入って、ベッドにバッグを投げつけた。
「…………」
流香先輩に買ってもらったバッグを睨みながら、イライラが収まらないので
「なんで……なんで分かんないのよ!!!
ほんっっとに馬鹿!!ふざけるな!!分かんないのにも程があるよ!!
人を、私をなんだと思ってるのよ!?馬鹿にすんな!!
ムカつく!!馬鹿っ!!ふざけるな!!ふざけんな!!あの馬鹿!!」
私だけしかいない部屋で、大声で叫んだ。
そして私だけしか今この家にいないと知ってるので、床を何度も強く
踏みしめながら
「なんで分かんないのよ!?私が、人がどう思うかどうして分かんないのよ!?
少し考えれば分かるでしょ!?自分だったらって考えたら分かるでしょ!?
馬鹿すぎるよ!!無神経すぎるよ!!少しは私を気にしろよ!!
私がどう思うかを気にしろよ!!なんにも考えて無いじゃんか!!
なんで!?なんでそれでデートしようとか考えるんだよ!?
気を使えよ!!考えろよ!!なんで考えないんだよ!?馬鹿!!馬鹿!!」
私以外、誰もいない部屋で……誰に向かってでもなく……
いや、行き場の無い怒りを……ここにいないあの人に向けて…
あの人がそんな事も分からなかったことが、分からない……
馬鹿なことを真剣に考えたことが……
誰も考えないであろうことを真剣に考え、私が静止しても、
それでも止めないで考え続けたことが……
下らない事を…誰も考えないほど下らない事を求め続けたことが……
私の気持ちを無視したことが……自分の事だけを考えたことが……
私がどう思うかを考えないで…私の事を完全に無視したことが……
自分の願望だけしか満たないことを考え続けたことが……
どうしようもなく……許せなかった。
そして私は小雨だった雨が本降りになってからも、1人の部屋で怒り続けた。
怒りを吐き出すことに疲れてきて、私はようやく止まった。
「はぁ…はぁ…」
馬鹿じゃないの…私……
怒り、叫び続けたせいで私の呼吸は荒くなっていた。
そして先輩に買ってもらった服を脱いで、私がいつも着ている部屋着を着て、
あぁ駄目だ…まだ怒りが収まんない…
私はまだイライラしていた。イライラ感が頭に残っている。
忘れろ、考えなければいいんだ…忘れろ…
なので私は本棚から、好きなシリーズのライトノベルを1冊抜き取った。
本でも読んで、忘れてしまえばいい…
好きだった本でも読んでれば、忘れる…時間も忘れて読むぐらいだから、
嫌なことも、ムカつくことも忘れる……はずだ…
そして私はお父さんとお母さんが夕方に帰ってくるまで、ずっと読み続けた。
ただし、頭の片隅に苛立ちがあるのを感じながら読んでいた。
夕食を3人で食べてる間、メゾールでのこともあるし、私が不機嫌なのが
お父さんにもお母さんにも分かったみたいなので、2人は私に全く
話しかけてこなかった。
夕食のとき私が言ったのは、いただきます。ごちそうさま。だけだった。
私が無言で夕食を食べ 、自分の部屋に戻ると携帯が鳴った。
相手は流香先輩からだったので、すぐに意図が分かった。
今日のことを聞くためだな……
相手が流香先輩と分かってるし、もう苛立ちは収まってるけど、
私は電話に低い声で出てしまった。
「もしもし…何ですか?」
流香先輩の意図も分かっていたけど、違う可能性もあるので一応聞くと、
『もしもしミク?え…っと……もしかして電話しちゃいけないタイミング
だったかな?駄目だったらまた後で掛け直すけど…?』
私が不機嫌だとすぐに分かったみたいなので、先輩も窺うように聞いてきた。
「いえ…今でも平気です……何の用ですか?」
『え…?平気…なの…?ま、まぁミクがそう言うなら聞くけど…
今日のデートは……いや、今日のデートでなんか……あった…の?』
まぁ…流香先輩じゃなくても分かるか…
私は不機嫌になってる理由を見抜かれたので、全部を話した。
私が今日のことを全部、ただ起きた出来事を淡々と語り終えると
『……海斗君はホントに…』
流香先輩が呆れた声を出した。
私は海斗先輩と別れた出来事も淡々と語ろうとしたけど、どうしても
それは出来なくて、海斗先輩が馬鹿なことを考えたと…
ふざけたことを考え続けたと話した…
「それで…帰ってきました……1人で帰ってきました…」
先輩とのデートの『結果』を言うと、流香先輩は少し焦るように
『え、え?じゃあその後は?その後に海斗君から電話とかは?』
「いえ…かかって来て無いですね…メールも無いですね…」
私は海斗先輩と別れて、携帯の電源を切ったりはしていない。
だけど流香先輩から電話がかかってくるまで、海斗先輩からの連絡は一切なかった。
まぁ仮に電話やメールが来ても無視していただろう…
『まぁ…出来ないわね、そりゃ…』
「…………」
先輩の言葉に私は同意も何も言わなかった。
当たり前じゃないですか…とも、何にも言う気にはならなかったからだ。
『ま、まぁ今日のことはよく分かったわ…じゃ、じゃあ明日の応援は……
当然、行かないわよね…行く気なんて起きないよ…ね?』
「当たり前じゃないですか…とゆうか明日も何も…もう先輩とは
会う気がないです…あの人とは会いたいとも思えません…」
あんな考え無しの馬鹿……会いたくない…
窓の外の、もう降り止んだ曇り空を見ながら言うと、先輩は慌てて
『ちょちょちょっと待って!それは少し待ってくれる?お願いミク!
ねっ?ま、まだミクと海斗君は知り合ったばかりだし、だからお願い!』
「……………」
先輩のお願いでも……聞く気なんか無いよ…
と思っても先輩には遠慮があったのか言えなかった。
『別に無理に会ったりしろって言わないから!でも、もう会わないって
決めないで欲しいの!お願いミク!ねっ?ねっ?
そうだ!明日また私とお茶しない?それでゆっくり話しましょ?
ミクの好きなもの奢るから!ねっ?メゾールで会いましょミク!ねっ?』
流香先輩の考えてることは分かる。
私をどうにか説得しようとしてるのだ。
「…………」
だから私が無言の態度だけで、嫌です…と答えると、先輩はまだ慌てたように
『別に海斗君にまだチャンスをあげてって言いたいんじゃないよっ?
海斗君の性格が分かってたのに、ちゃんと海斗君に注意しとかなかった
私も悪いんだから、そ、そのお詫びってゆうか、なんてゆうか…
あ、あれよ!明日ヒマだからミクとお茶したいなぁ~って思って!
だからお願い!奢るから私のワガママに付き合ってくれないかな?ねっ?』
「…………」
そんなこと言ってるけど…それは嘘だ…
先輩は明るい声で、ワザとらしく
『ミクは明日なんか予定でもあるの?無いなら私とお出かけしましょーよ?
お姉さんがエスコートしてあげるわよ~?だから、ねっ?
だからいいでしょ~ミク?お願いよミク。ねっ?ミクとお茶したいな~』
「…………」
『ミク~お願い~』
「…………」
『ミクとお茶したいな~会いたいな~』
「…………」
『あの…そこまで無視されると、さすがに泣きそうになるんだけど…』
「…………」
『せ、せめて、うんとかヤダとか言ってくれない?お、お願いミク…』
「…………」
『…………お願いミク…ゆっくり話そうよ…ね?駄目?』
先輩に本気でそうお願いされたので
「……………………分かりました……」
明日の昼すぎに先輩と会うことになった。
その日、私はある正夢を見た。
海斗先輩が出る試合の夢を見た。
そして次の日、お昼ご飯を食べてから家を出た。
白い曇が空を完全に覆ってる下を、私はメゾールに向かった。
1日経ってることもあり、私のイライラも収まっていた。
だから昨日のことを冷えた頭で考えるが
あの馬鹿のことを許す気は無いよ…
だから流香先輩がどんな説得をしてきても無駄…
そう思いながらメゾールに向かった。
そして私が先輩と約束した、おととい先輩と行った3階の喫茶店の前に着くと
「ミク~~、正直な所、来てくれて本当に安心しております」
流香先輩が笑顔で迎えてくれた。けど私は無愛想に
「それはなによりです…でも私は先輩がどんな風に説得しy…」
しようとも…と言いかけた私の口を、先輩が指で塞いで止めた。
「うん。それはお茶しながら話そうね…中に入りましょ?」
先輩が優しく笑いそう言うので
「……はい…」
少しブーたれながら返事するしかなかった。
席に着いて先輩と私は同じ紅茶を注文した。
だって先輩も私も紅茶が好きだから、そして先輩が紅茶を一口飲んで
「それで…まぁお馬鹿な海斗君のことなんだけど…」
少しだけ困った顔してそう切り出されたので
「私はもうあの人に会いたくないです…顔も見たくないです」
私も紅茶を飲みながら言うと、先輩は困り顔で
「う、う、う~~ん…ミクの言う事は分かるんだけど…
で、でも海斗君はそうゆうことに鈍いとゆうか…ちょっとお馬鹿な子だから、
どうにか許してあげられないかな?……ね?」
「嫌です。無理です。絶対に不可能です」
しかし私が淡々と返すと、先輩も負けずと
「そんな事言わないで…海斗君だって悪気は無いんだし……
ワザとじゃないってことはミクだって分かってるんでしょ?だから…」
「イーヤーです!いくら先輩の言うことでも聞けません!ヤダっ!」
ツーンとしながら返すと、先輩は焦って
「ミ、ミクに反抗された!?ちょ、ちょっとショック!
お、お願いよミク~確かに海斗君はミクの事を考えなかっただろうけど、
でもミクが怒ったら悪いと思ったんでしょ?反省したんでしょ?
海斗君はお馬鹿だけど、でも言えば分かってくれる子なの~だから…」
「いくら反省ができても無理ですね。だってそんなこと言ったら、反省さえすれば
いくらでも馬鹿なことを考えても、いくらでも人の気持ちを無視しても
許されるってことになるじゃないですか。
私はその度にかなりのストレスに耐えなくなっちゃうじゃないですか…
なんで私がそんなのに耐えなくちゃいけないんですか?
そりゃ人との付き合いで、ある程度のストレスに耐えなくちゃいけないのは
分かりますよ?
でもあんなことにまた耐えろってゆーのは無理な話ですね…マジ無理!」
そもそも私の事が好きなのに、なんでその私をイラつかせるんだ?とゆう
話じゃないか…
さらに人との付き合いで相手を苛立たせないってゆーのは当たり前過ぎでしょ?
すると先輩はカップを持ったまま
「おっしゃる通りです……でもここは私に免じて、是非とも海斗君に
チャンスを与えてあげないかな?お願いよミク…
それに海斗君だってちゃんとしっかりと反省して、今後はそうゆうことを
言ったりしてこないと思うわ?だから…ね?」
そう優しく言う先輩を、さすがに私も少しだけ呆れて見て
「無理です。流香先輩は私が海斗先輩の発言のなにに怒ってるのか
分かっていますよね?どうして怒ってるか分かりますよね?」
私が改めて先輩に聞くと、先輩は少しキョトンとして
「そりゃ……ミクの気持ちを無視したってことでしょ?
海斗君が自分のことだけを、自分の気持ちだけを考えたってことでしょ?
いくら自分のことだけを考えても、それが海斗君だけが嬉しいこと…
海斗君だけがしか喜ばないことを考えたってことでしょ?」
私は紅茶を1口飲んで
「そうです。問題はそこなんです。
別に自分が楽しむことを考えるなとは言いませんよ?
自分が嬉しいと思うことを求めるなとは、さすがに私も言いませんよ?
でもあの人は、あの人だけが嬉しいと思うことを求め続けたことが、私には
許せないんですよ。
あの人だけが喜ぶことを…意識を飛ばしたいなんてゆう意味不明なことを
ずっと求め続けたことが許せないんですよ。
て、手を繋ぎたいって言われたら、そ、そりゃ私も少しは嬉しいですよ?
少しは嬉しく思いますよ?ヤ、ヤじゃないですよ…?
まぁ繋ぐか繋がないか言ったら繋がないんですけどね…恥ずいし…
でもあの人は自分だけが、自分だけの意味不明な快感のために私と
手を繋ぎたいって言ったんです。
それがムカつくんです!それが許せないんです!
わ、私が…いえ、私も嬉しいと思えることを求めてれば…別に怒りませんよ…」
自分で言ってて少し照れてしまった。
すると流香先輩は、す…っと真面目な……違う、無表情になり
「つまりミクは…自分だけが嬉しいと思うことを求める人は許せないと?」
先輩は無感情にそう言った。
それが少しだけ怖かったので
「え、えぇ…でも誰だってそうじゃないんですか?誰でもそうでしょ?」
戸惑いながら答えると、先輩はさっきよりも感情の無い声で
「じゃあ……私が真っ先にミクに非難されるべき人間ね…」
6月ハーモニー 未来音符 その12
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イライラした時は忘れる方向に行きたい……
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