過去巡り 外伝   『花の祝福』 その3



次の日、放課後になってすぐにサキの教室に流香と向かって

「サキさ~ん?いますか~?」

「サキ~?いる?」

と私と流香が後ろの扉から中を覗き込むがサキはいなかったので

「ねぇねぇ、サキ知んない?」

クラスの子を捕まえてサキのことを聞いてみるともう帰ったみたいなので

「つーかサキ部活は?何部か知んない?」

私が用件に重要な情報を聞くと

「ん~?ちょっと聞いたけど演劇部に入るらしいよ」

は?マジか?

「え?演劇部?え?今日は?演劇部じゃないの?」

流香も少し驚いているみたいだ

「今日は演劇部は無いみたい。だから帰るって言って帰っちゃったよ?」

「マジで?つーか何で演劇部に入ったの?何で?」

「確か…中学の時は合唱部だったけど練習がかなりキツかったから

すごく嫌だった。でもまた合唱部に入ろうとしたら無いから、じゃあ演劇部に

入るって言ってたよ?演劇部でも歌えるし、衣装を作ったりする仕事も

私、服作るの好きって言って、だから演劇部に入るって…」

サキは服作るの好きだったから、そりゃ演劇部に行くか…

私と流香がそうだったね…と話していると

「もぉ…いい?じゃあね?」

といってクラスの子が帰ったので、その子にありがと~と手を振る流香に

「どーする?流香?サキがもう演劇部に入ってるって…」

流香は顎に手を当てて悩んだ顔をして

「ん~?どうしよっか?あっ、でも合唱部に入るつもりはあったのよね?

でも無いから演劇部に入った。と?」

「でも演劇部でも歌えるから演劇部に入ったんでしょ?

それを知ってても誘うの?合唱部を作ろうと思ってるから一緒にやろうって?

無理でしょ?」

歌えるし、服も作れるとあっちゃ演劇部を辞めて合唱部に入る理由が無いや…

中学の時から演劇にけっこう興味があったからなぁサキ…

「やっぱりそうかなぁ?でも一応サキに話ししてみない?」

流香の提案に私は渋い顔をしながら

「うまくいくとは思えないなぁ…まぁでも一応は話ししてみるか…」


そして2人でサキを追いかけた

駅までの道で私がサキは本屋にいるかもと言うと

「そうね、行ってみましょう」

2人で駅の反対のショッピングモールに行き、1階の本屋の手前で

「ちょっと待って流香」

前を歩く流香を止めた

「ん?どうしたのハナ?」

「ちょっとアイス食べたくなったから買うわ」

「え?ちょ、ちょっと?後にしなさいよハナ…ってもう注文してるし…」

流香の静止を無視して私はアイスを購入した

そしてアイス屋の隣の本屋に入り

「いたっ!サキ~」

と流香が本を立ち読みしてるサキを呼ぶと

「あっ、流香とハナだ。何?2人とも買い物?」

「いんや~買い物じゃなくてサキに用があったの」

アイスを舐めながら私が言うと

「店の中でアイス食べるんじゃないよハナ…出よう」

いつも冷静なハナらしく、呆れた顔でまともな提案をしたので私達は本屋を

出て、隣のアイス屋で流香とサキもアイスを買った。

そしてみんなでアイスを食べ始めると

「それで?私に用って何?」

と静かな声でサキが言うと流香が

「うん…えっとね…」

一拍の間を空けてから

「あのね、サキは…」

流香の言葉の途中で私がアイスを舐めるのを止めて

「一緒に合唱部作ろうよ?」

そう言うとベチャッ!っと私の目に流香がアイスをためらいなく突っ込んだ

「冷てぇぇー!!流香お前バカじゃねぇのっ!?

なに人の目にアイス入れてんだよ!?私の目を凍らせる気かよっ!?」

「馬鹿はハナでしょっ!?昨日の今日でなんで同じこと言ってんの!?」

「用って何?って聞かれたからだよ!!」

「だから遠まわしに行こうって昨日言ったよ!?覚えてない!?

どうせ忘れてたんでしょ!?」

「覚えてるよ!!たった今思い出したよ!!目に刺激があったからね!!

だからってアイス突っ込まなくてもいいじゃん!?

眼球とアイスが入れ替わったらどうするんだよ!?大変だろ!?」

と流香と喧嘩(まぁ100%私が悪い)してると

「合唱部を作るって何?」

サキが冷静な声で聞いてきた

「え、え~とね…」

しどろもどろしながら流香は、昨日ヒロ達にした様に話し始めた。

私に私の眼球味のアイスを食べさせながら



意外とアイスは美味かった



そして流香が話し終わるとサキは

「もう演劇部に入っちゃったから無理だね…」

アイスを舐めながら冷静に返した

「はぁ~~やっぱりか~」

流香がため息をつきながらがっくりとうな垂れてしまった

やっぱりな…サキ、頑固だし…

合唱部に入る前に演劇部を辞めなきゃいけないわけだから…駄目かなぁ…

どうにかサキを説得できないものかと考えていると

「ヒロと優希は?あの2人も合唱部に入るの?」

サキが流香に横目で聞いた

「え?うん。ヒロと優希には昨日話してOKもらったよ?だからあと1人」

「そうなんだ…でも無理だね。じゃあね」

アイスを食べ終わったサキそう言ってが立ち上がり

「あ、うん。じゃあね。今日はごめんね」

手を振りながらサキにそう言う流香に

「ん~じゃ、私も帰るね。じゃ~ね流香」

私もサキと一緒に帰ることにした。

「あっ、そうかそうか2人とも同じ電車だったね…じゃーねハナ」

私とサキは流香と別れた


駅までの道で隣を歩くサキに

「こうやって2人で帰るのって久しぶりだね~?」

「そうね…中学は私の家が近くだったから一緒に帰るってあんまり無かったね」

「そうそう。だからサキが羨ましかったよ~

家が近いから朝練が始まるギリギリの時間まで寝てられるからいいな~って、

私なんて朝練のためにいっつも5時に起きてたんだよ?

だから毎朝眠くて眠くて…」

「そんなに早かったの?私はいつも6時に起きてたよ?」

私の言葉に少し驚いたサキに

「いいなぁ~。私って目覚まし鳴ってもすぐに起きられなかったし、

それにあと朝早いと電車の本数が少ないでしょ?だからなんだよ~」

「起きられないのは今もでしょ?ふふっ…何言ってんだか…」

サキが小さく笑った

流香は同い年なのにたまに大人っぽくていいなぁ~と思うが、

サキは流香とは違って大人っぽいとゆうか何てゆーか…え~っと、そう!

落ち着いてる。静かで落ち着いてる人って感じ。

流香は大人の女性みたいな雰囲気をたまに出すけど、サキは落ち着いた人

とゆう雰囲気を出している。

そして今みたいに私やみんなの言葉に小さく笑ってみせる。

その笑いは馬鹿にした笑いじゃなくて、少し可笑しいとゆう笑いなのだ

そんな大人っぽい流香や落ち着いたサキを、私は少し羨ましく思っている…

私も2人みたいに大人っぽくなって落ち着いた人になってみたいと…

サキを見ながらそんなことを考えていると

「ん?何よじ~っと見て。私の顔に何か付いてる?」

私の視線を変に思ったのか、自分の顔をぺたぺたと触りながらサキが聞いてきた

「ん~ん何でもない何でもない。ごめんね?じ~っと見て」

手を振って何も付いてないよとサキに言った

「変なハナ…って、いつも変か…」

小さく笑いながらサキが私をからかったので

「おぉーい!いつも変とは何だ!?このヤロー!」

そう言って襲い掛かろうとすると

「きゃー変質者がいるー!助けて~!襲われる~!」

「待てサキー!コラー!!」


2人でキャッキャとふざけた


そして駅について電車に2人で乗り、その車内で

「ねぇ…サキ…」

「ん?何よハナ、真面目な声出して…何?」

サキに言われ、自分の声がいつもより低くなってるのに気付いた

「あのさぁ…合唱部のことなんだけど…」

「うん。合唱部がどうかしたの?」

サキは自分が合唱部には入らないと思っていて、それを流香に言ってるからか

私が合唱部と言っても少し他人事みたいな感じで返してきた。

今から私が何を話そうとしてるか分かんないんだろうぁ…

私はショッピングモールで流香と別れてから、ずっと1つのことだけを

考えていた。

でもいくら考えても上手い方法が分からなかった。

やっぱり私は流香のようにはできないかな?

まぁ流香は私と違って頭がいいからなぁ…

「ん?どうしたのハナ。合唱部が何よ?」

何にも言わない私をサキが不振な顔で覗き込んできた

「うん…サキさぁ…」

「うん、何?」

キョトンとした顔のサキを私は真っ直ぐ見つめながら

「一緒に合唱部を作ろうよ…」

「は?」

サキはぽかんと口を開けた

「みんなで合唱部を作ろう?ねっ?」

同じ事をサキに言うと怪訝な顔したサキが

「私さっき流香に入らないって言ったじゃん?なに言ってるのよ?」

「うん…サキがそう言うのは分かってた…断るって分かってた…

でもお願い、それでもお願いしたいの…みんなで合唱部を作りたいの…」

「それはさっき流香に聞いて分かってるよ?中学のときみたいに~でしょ?

でも私はもう演劇部に入ってるって言ったでしょ?

だから無理なの。他の子に当たって。それでも問題ないでしょ?」

「ううん、違うの…それじゃ駄目なの…私達じゃないと駄目なのよ…」

サキの言葉を首を振りながら否定をした。

「はぁ?私達じゃなきゃ駄目ってどうゆうこと?何で?」

「うん…それはね……流香がガク君に言われたからなの…」

サキから一瞬だけ視線を逸らし、また視線を戻し言うと

「はぁ?何でここでガク君が出てくるの?意味分かんないんだけど?」

いきなりガク君の名前が出てきたからサキが少し驚いた。

いや、驚いてるとゆうより、サキの言う通り訳分かんないんだろう…

サキは訝しげな顔で私を見ている

「…うん、あのね…流香とガク君が遠距離恋愛になってるのはサキも

知ってるでしょ?ガク君が遠くの学校に行っちゃったの知ってるでしょ?」

「あぁ、うん…寮がある学校に行ったんでしょ?」

みんな流香とガク君の事情は知っている。

ある程度は流香はみんなに話しているのだ。

だけど、

「だからたまにしか会えないって私達も…流香もそう思ってたんだけど、

ガク君が入学前から部活に入って練習してるらしいの…

しかも毎日練習があるらしいの…土日も練習があるって流香が言ったの」

「そう…なんだ…」

サキが少し考えて

「とゆうことは…流香とガク君は…」

さっきまでとは違って少し心配そうに私に聞いてくるので

「うん…これからまったく会えなくなるらしい…

お正月には帰ってくるらしいから、1年に一回しか会えなくなっちゃうの…」

「そう…だよね…まったく会えなくなっちゃうよね…」

「うん…だから流香が全然会ってる暇が無いって言ってた…」

「そうだよね…遠距離恋愛だったらなおさらだよね…」

話してるうちに流香の寂しさが…

ガク君にこれからまったく会えなくなる寂しさが…少しだけ伝わってきた…

でも流香はもっと…私達よりずっと寂しい思いをするだろう…

いや、寂しい思いをもうしているんだろう…

会いたくても会えない…手を繋ぎたくても繋げない…

会おうと言って会える距離じゃない…だから顔を見たくても見れないのだ…

そして……まったく会えなくなるから…きっと不安に思うだろう…

もしかしたら自分の事を好きじゃなくなるかもしれない…

もしかしたら違う子を好きになるかもしれない…

もしかしたら遠距離恋愛に疲れた…そんな理由で別れるかもしれない…と…

そんな『もしかしたら』とゆう不安を、これから流香は抱えるんだろう…

いや、『もしかしたら』もう抱えてるかもしれない…

それでもガク君を信じて…ガク君の『好き』を信じているのだ…

だから私達に協力してと言ってきたのだ…

「それで…ガク君が言ったらしいの『また合唱部で歌ってよ。

みんなで合唱部に入って歌ってよ…そしてら文化祭に俺行くから』って…

だから流香は、私やサキ達がまた合唱部をやるのを嫌がるって分かってても

声をかけたの…ガク君のお願いを聞くため…

ガク君に私も頑張ってるよ…って言うため…だから…だから私は…

ううん…私『達』は協力しようと思ったの…思ってるの…」

「……そう…なんだ…」

サキは私と違って馬鹿じゃないから、流香の不安とかが…寂しさがすぐに

分かったのだろう…

だからサキの目は少しだけ悲しそうだ

「ヒロにも優希にももう話したよ…そうしたら2人とも分かってくれた…

あとはサキ…サキだけなの…お願いサキ…みんなでやろう?」

悲しげな瞳のサキを見て、私はお願いした

「…で、でも…私は…」

でもサキは少しだけ私から逃げるように言った

「お願いサキ…流香とガク君のことはサキだって心配してるんでしょ?

あの2人のことを応援してるんでしょ?だったら…」

「で、でも…私は…私はもう演劇部だし…合唱部のあの練習には…」

「それは大丈夫だよ…あんなキツい練習はサキにはやらせないって流香

が言ってたよ…」

「…ぇ…う…だ、だって…」

私から目を逸らし逃げてるようだ

「お願いサキ…みんなでまた合唱部をやろう?

そんで文化祭で流香の姿をガク君に見せてあげよう?2人を会わせてあげよう?

それで流香とガク君、2人を喜ばせてあげようよ…

これは流香だけじゃなくて私のお願いでもあるの…お願いサキ…」

私の視線を受けるサキは迷ってる

流香に協力してあげたい、けどもう演劇部だし…と迷ってるのだ

そんなサキに

「ね?サキ…」

お願いだよ…と言おうとしたところで

  □□駅~、□□駅~、

とサキが降りる駅に電車が着いてしまった

そして扉が開いたらサキが

「じゃ、じゃあね、ハナ…」

そう言って電車から降りて走って行ってしまった

「あっ!サ、サキ!」

サキの背中に呼びかけたがサキは振り返らなかった

「サキ…」





そして電車は扉を閉めて走り出してしまった。

サキを説得できなかった私を乗せて

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初恋メロディー 過去巡り 外伝 花の祝福その3

過去巡りの花の祝福のその3です。

その2辺りからちょっとだけ過去巡りとは違う、とゆうかハナだけ

のストーリーを書いています。

だから裏話しと言ったほうが正確ですかね?

閲覧数:37

投稿日:2011/11/25 14:30:11

文字数:5,874文字

カテゴリ:小説

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