---あの子はいつでも、近くにいるようで遠すぎる存在だった。
私ごときでは到底つかめないような、そんな存在だった。---
「リーン!何ボケーっとしてるの?」
窓の外を眺めていた私に話しかける、優しくて透き通るような声。
その声によく似合う、可愛らしく幸福の象徴であるような頬笑みと、優しい緑色の長い髪は私を含め誰にも持ち得ない物だと思う。
「ううん。よく晴れているなって思っただけだよ!」
元気よく答える声は私とは別の誰かが話しているみたいだ。
「そうね~今日は洗濯日和だよ!ほら、リンも手伝って!」
平和な村に佇む、小さな家に私とミク姉は住んでいた。
3年前に村で流行った病で両親は死んでしまったので、それ以来2人で何とか生活してきた。
ミク姉は、村の誰からも可愛がられる存在だったので沢山の人に今まで助けて貰って来た。
それに比べ、私はミク姉の妹で無かったらすぐに村から追い出されていたに違いない。
「何?あの変な髪の色は・・・気味が悪い」
私が気味悪がられたのは、村の誰とも違う髪の色。
村人の髪の色は、生まれつき緑色か茶色かピンクだった。
けれど、私1人は全く異なる黄色に近いオレンジ色の髪の毛。
その事を気味悪がって、私に近づかない者が多かった。
そして、もうひとつ私が村人からのけものにされる理由がある。
それは、私が何処から来たのかわからない、得体の知れない子供だから。
14年前、私はミク姉の両親に村の川沿いに揺り籠に入れられているのを見つけられて拾われたのだ。
そのとき、村の誰もが私をこの村で育てることに反対したがミク姉の両親は反対を押し切って私を本当の娘のように14年間育ててくれた。
もちろん、ミク姉も私を本当の妹の様に可愛がってくれたし、私も本当の家族だと思って接してきた。
「リン、大丈夫?何か考え事でもしてるの?」
洗濯し終えた服を干している事を忘れ、考え事をしていた私は我に返って、また洗濯物を干し始めた。
「ごめん!眠くてさ~」
「もう!しっかりしてよね?」
気取った様子のない、その屈託のない笑顔を見ていると心が癒される気がした。
---何故この時、もうすぐやってくる破滅に気づくことが出来なかったのだろうか。
平和な時間は永遠ではないことなんてわかっていたはずなのに、あまりにも幸せすぎてそのことを忘れてかけていた。---
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聞きた...インビジブル_歌詞
kemu
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