人々が行き交う街の中心部を,俺たちは歩いていた。
そこに,栗色の髪をお下げにした小さな女の子が歩み寄ってくる。
「ねぇ,おねーちゃんたち,このビンのなかみでしあわせになれるって
ほんとう?」
エリンはしゃがむと,女の子に優しく笑いかけた。
「そうよ。なにか,困ってるの?」
女の子は哀しそうにうつむいた。
「おかあさんが,びょうきなの。すごくくるしそう。・・・ねぇ,おねーちゃんたち,
たすけてくれる?」
涙を瞳いっぱいに溜めた女の子は,縋るような目でエリンをまっすぐに見つめる。
エリンはふっと微笑むと,頭をなでて,小瓶を1つ,手渡した。
「分かったわ。・・・お母さん,早く良くなるといいね。」
女の子は何度も何度も礼を言い,人混みの中に消えていった。
日も傾き,村へと足を進めていた俺たちに,
1つの人影が声を掛けた。
「・・・人を,殺して欲しい。」
人影は,まだ年端のいかぬ若い娘だった。
白髪の髪から覗く朱い瞳には一点の光もなく,虚ろに何処かを彷徨っている。
「・・・名前,性別,年齢,殺す理由は」
俺がそう問うと,娘は消え入りそうなか細い声で応えた。
「・・・アルト・ハーレンル。男。23歳。・・・浮気,暴力。」
そこまで言って,ぴたりと口を閉じた娘には,
生きている人間の生気というものが少しも感じられなかった。
体は傷つき,心までもが病み,まるで何かに取り憑かれたような。
俺は空き瓶に「力」を込めた。
蓋を閉めて,娘に手渡す。
誰も一言もしゃべらない,一瞬の静けさが俺たちと娘を取り囲む。
娘は,表情1つ変えずに去っていった。
俺は自分の右手を見つめ,グッと力を込めた。
『痛い』
そう感じる。
俺は生きているのに,それなのに知らないうちに知らない誰かを殺している。
それが本当に悪い奴なのか,本当は何の罪もない奴なのか。
それすらも知らない。
だって,「力」を求めてやってくる奴らが求めているのは,「俺」じゃなくて,
知らない誰かを殺すこの「力」なのだから。
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ご意見・ご感想
兎紀
ご意見・ご感想
すごい…絵描いてみたいでs(殴
ぇ、めっちゃ文才すごいっすね!!!
ちょっと感動しますた(;ω;´)!
2010/11/06 15:53:26
衣恋@ついった
崇夜様>
コメ有り難うございます!
なぬっ!絵を描いていただける・・・だと!?←
ぜひお願いしまs(ry
文才なんぞ一欠片も持ち合わせてないです;
感動・・・!?あああ有り難うございますっ!!!
2010/11/06 18:22:27