長い黒髪にデジカメを持った女の子、リボンの色からして三年生。実に、笑顔。
「あの…?」
「初めまして、グレーテルちゃんにウサギ君。」
意味が解らずちょっと怖い、いや、かなり怖い。七海さんも同じ思いなのか微妙に引いているのが感じ取れた。少し間があってから、その先輩は眉間に皺を寄せて首を傾げてからメモを取り出して私達とメモとを交互に見遣る。
「あれ?違った?名簿の顔と名前は一致してるのになぁ…。」
「名簿?」
「うん、『∞』の参加者とコードネーム名簿。説明の時20枚位あったから全部貰って来ちゃった。」
記憶が確かなら確か参加者は男女9名ずつで18名、そしてメモを全部持って行ったと言う事は…。
「それ私達の分じゃないですか?」
「ん?んん~~?おぉ!なるほど!言われればこんなに要らないかも。はい、じゃあ一枚どうぞ。」
笑顔でメモを渡されたけど目を逸らして失笑するしか出来なかった。男だったら殴ってたかも。溜息を吐いてから渡されたメモに目をやると、顔が判る写真と名前、学校、年齢、ゲーム内でのコードネームと言う項目が書かれていた。これってプライバシーの侵害じゃないんだろうか?
「サイトやtwitterはコードネームと顔写真だけだったからまぁ大丈夫かな。」
「ちょっと待って。」
ツッコミがシンクロしてしまった。twitterの話は聞いていたけど、サイトは初耳だった。
「サイトって何ですか?!」
「サイトとはウェブサイトの略称でインターネット上で、様々な情報を提供する…。」
「単語の意味じゃねぇよ!」
「貰った名簿に書いてあるじゃない、ほらほら、ここ。」
名簿貰ったのさっきですから。と言うツッコミは最早彗星の如く流し書いてあるアドレスに飛んでみた。と、そこには説明の時と同じ空の絵とシンプルなロゴのホームページが出て来た。何だかもう見るのが怖くなって来たが、意を決して中を見てみる事にした。
『ハァイ!ボクきゅんえもん!『∞』へようこそ!このゲームは現在厳正なるアミダくじに寄って選ばれた9対9の男女によってリアルシュミレーション中のゲームだよ!twitterの投票で言って欲しいキュン☆ワードや、やって貰いたいキュン☆シチュを随時募集中!みなぎって参加してね!』
「可愛いよね~きゅんえもん!…あれ?二人共どうしたの?まるで漫画みたいにがっくりして。」
「頭痛い…てか厳正なるアミダくじって何だよ…。」
「…私も頭痛い…。」
画面に現れた地球外生命体と書かれている単語に色々気力が奪われた。
「医務室行く?カウンセラーの館林先生も参加者だし丁度良いかも。」
「教員まで毒されてんのかよ?!」
名簿を見直すと確かにスクールカウンセラーの先生の名前があった。そして目の前にいるこの妙な先輩の名前と写真も。
「あれ?え?!先輩も参加者…と言うか殆どウチの学校の生徒じゃないですか!」
「うん、だから探しに来たんだ~よろしく。」
そう言って…名簿に寄る所の赤ずきんこと鶴村先輩は手を差し出した。実に、笑顔で。
いちごいちえとひめしあい-10.実に、笑顔で-
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