列車が減速をしはじめた。間もなく停車をすることを機械音声が伝えてきた。
「どうする?」
と、メイコが窓の外を窺いながら言った。
行く先にはこじんまりとした停車場があるのみで、周囲には水辺が広がり、ぽつぽつとあちらこちらに水上の家屋が並んでいた。
「この辺りは大きな街ではないみたいだけど。一度降りようか。」
そうカイトが言って、メイコも頷く。
列車はゆっくりと減速を行い、がたん。と揺れながら停まった。駅の停車場に降り立ち、水の上を走ってきた為に湿気を多く含んだ朝の空気を気持ちよく吸い込みながらカイトが伸びをしていると、ぶうん。という何やら機械のまわる音が響いてきた。
「何、この音。」
とメイコがそちらを見たとたん、あ。と声を上げた。
それはスーツ姿の追っ手だった。機械の付いた船に乗って列車を追いかけてきたらしい。折角の清清しい空気が台無しだ。とカイトもメイコも顔をしかめた。
「予想以上に早く追いかけてきたわね。」
「あ、やばい。来る。」
と、船から少し高いところに位置する停車場にスーツたちが上陸したのを見てカイトは声を上げた。
ぴー。と甲高い音を立てて列車が発車を告げる。その音に、メイコが反射的に列車に乗り込んだ。慌ててカイトも続いて飛び乗る。視界の片隅で、停車場の端から列車に乗ろうと躍起になるスーツ姿を捉えて、間に合うな。と念じた。
かたん。と扉が音を立てて閉まる。カイトの願いは天には届かず、スーツ姿が列車に飛び乗ったのが見えた。
「メーちゃん。あいつらも乗っちゃったよ。」
「最悪。」
そう悪態をついて、メイコは何かを探すように周囲を見回した。
車両を区切る扉にはめ込まれたガラス窓から、スーツ姿たちがこちらの車両へ向かってくるのが見えた。相手は3人。倒せるかな。走るのは速くても、戦うのはちょっと苦手なんだけど。とカイトが思っていると、メイコがおもむろに扉の脇にある取っ手を、がこん。と引き倒した。
「カイト、扉を開けるの手伝って。」
そう言って、メイコは扉の片側をぎぎぎ、と引っぱっている。どうやらさっきの取っ手は扉の鍵みたいなものらしい。カイトも急いでメイコとは反対側の扉をぎぎぎ、と引っ張った。
扉が開き、ぶわ、と突風が車内に吹き込んでくる。緊急事態を察知したのだろうか、列車が、きききと金属音を立てて減速を始めた。
目の前に広がるのは空の青と水の蒼。遮るものは何も無く、ただひたすらに広がっている。
「行くよ。」
そう言ってメイコがカイトの手を握り締めた。
「うん。」
そうカイトも頷いてメイコの手を握り返した。
ただひたすらに前だけを見て。二人は青い空の中へ駈けだした。
太陽が、まるで祝福するように2人の駈ける路を照らしていた。
QBK・19~野良犬疾走日和~
ここまで読んでくださってありがとうございます。
というかナンバーが19まで来てしまったことに書いた本人がビックリです。
なんでこんなに長くなっちゃうんだろう、、、?
カイトが予想以上にヘタレで泣き虫で、書いてて吃驚でした。
おかしいなぁ。このカイトは野良犬だからもっと野生的な感じだったはず。
と思いつつ書き進めていったら、ヘタレカイトを補うように、ルカさんが頑張ってくれて更に吃驚です。
おかしいなぁ。このルカさんはお嬢様のはずなんだけどなぁ。
題は、思いつかなかったのでQBKです。すみません。
原曲様 ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP・野良犬疾走日和
http://www.nicovideo.jp/watch/nm4342917
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ご意見・ご感想
レイジ
ご意見・ご感想
遅くなりましたが読ませて頂きました。
原曲様を知らないままで読んだのですが、単純に物語として楽しませていただきました☆
(原曲様は今聞いて来ました^^;)
文章の疾走感がたまらなく良かったです☆
めーちゃんが拐われてからラストまで一気読みしてしまいました。
では他の作品も覗かせて頂きます♪
2010/04/03 10:28:35
sunny_m
>レイジさん
読んでいただきありがとうございます!
疾走感を感じていただけたということで、とても嬉しいです!
原曲様の、がむしゃらに走っている空気を感じたくて、書いたものなのです。
かなり世界観が適当で、好き勝手な世界を作り上げてしまった話ですが、楽しんでいただけてなによりです☆
それでは、読んでいただきありがとうございました!
2010/04/04 20:49:36
sunny_m
ご意見・ご感想
>つんばるさん
はじめまして。
、、、あの、白状します。
つんばるさんのことは、実はちょっと前に知って、文章もこっそり読んでいて、そして好きでした!
つんばるさんがコラボで野良犬疾走日和を書いてることも知ってました!
しかし、丁度この話を考え始めていたので「絶対読んだら影響されてしまう。」と読むのを我慢していたのです。
なので、まさかメッセージなんか貰えるなんて!!!
しかもこんな無駄に長い話に!!!
夢なの、これは!夢じゃない!大丈夫!?
と、なんかもう興奮しすぎて軽く貧血を起こしてしまいそうです。
野良犬疾走日和は、しっかりと前を見据えて駆け抜けてる感じが、とても好きです。
ちょっとでもその感じが表せればなぁ。と思いつつ。
読んでいただき、ありがとうございました!
書きおえたので、つんばるさんと+KKさんのコラボ作品を読みに行きたいと思います!
2009/09/28 23:29:10
つんばる
ご意見・ご感想
はじめまして、つんばると申します。
新着に、大好きな曲でなんだかすごい長編がきてる! と思って読みに来ました。
世界観というか設定と言うか、登場人物たちの生きている舞台がすごく魅力的で、すっかり
引き込まれて一気読みしてしまいました! ボカロも日本語版のオールキャラでしたが、
きちんとひとりひとりのキャラが立っててすごいなあ、と思います。
お話も、はらはらどきどきしながら読んでいたので、最後はどうなるんだろうと思って読んで
いましたが、とてもすっきりとしたきもちのいい終わり方で、読後感もよかったです!
自分も野良犬疾走日和が大好きで、同じ曲をモチーフにお話を書かせて貰ってるのですが、
sunny_mさんもこの曲が好きなんだなというのが、すごくよく伝わってきました!
……あわわ、長々と語ってしまってすみません、素敵な物語をありがとうございました!
2009/09/28 19:05:21