少しでも長く。

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 それは、十二月二十四日のこと。世間では、この日はクリスマス・イブだ。本当は、私はこの日は一人で過ごす予定だった。そのはずだったんだけど。
 それは昼、一人で動画サイトを見ている時だった。近くに置いてあったケータイが鳴った。
「え? こんな日に誰だろう」
 ケータイを開く。
[新着メール・一件]
 私にメールをしてくる人は珍しい。誰なんだろう?
[From:メイコ]
 あれ? メイコからだ。なんだろう。
[今空いてる?]
 とりあえず「空いてるよ」と送ると、返事はすぐに返ってきた。
[よし、今から遊ばない?]

 というわけで、駅前でメイコと会った。
「ごめんねー、無理言っちゃって」
「いや、私も暇だったからいいよ」
 どうせ一人で勉強か動画を見るつもりだったし、ちょうどよかった。
「まずどこ行くの?」
「本屋!」
「何を買うの? 参考書? 問題集?」
「ルカは真面目だねー。漫画だよ、漫画!」
「そういえばメイコ、漫画が好きだもんね」
 本屋に行った後、駄菓子屋に行き、そしてゲームセンターへ。
「わぁー、ここがゲームセンターかあ」
「へ? ルカ、ゲーセン来たことないの?」
「うん、あまり。機会がなくてね」
「そうなんだー」
 メイコはいろんな機械について説明してくれた。いろいろあるんだなあ。
 その中でも、メイコはクレーンゲームのやり方を教えてくれた。でも私はとくに気になるものはなかった。代わりに、メイコがやっていた。
 メイコはボタンでアームを操作しているとき、私に言った。
「ほんとはさ、邪魔したら悪いかなって思ったんだよね」
「え? なんのこと?」
 私はよくわからず、聞き返した。メイコは平然と告げる。
「てっきり、ルカは神威先生と過ごしてるのかなって」
「はい!?」
 ちょっと待って。意味がわからない。
「な、なんでそうなるの」
「だって、ルカと先生って付き合ってるんでしょ」
「つ、付き合ってはいないけど、どうして」
 それでも、なんでその考えになるのかが不思議だ。
「なんでって。日本では、クリスマスは恋人と過ごすっていう人が多いし」
「あ、そういうこと、か」
 そういうことか。
「で、なんで一人なの? というか本当に付き合ってはいないの!?」
「それは、あの人は仕事があるでしょ……? それに、本当の本当に付き合ってないよ」
「いやいや、メールでやり取りとかはしてないの?」
「一応メアドは交換したけど、メールを送ってはいないかな」
「そっか。あんたは、遠慮してるのね」
「う……そういうことになる、かな」
 というか、なんでメイコはそんなに私とあの人のことを気にするんだろう。どうせなら、自分の恋愛の心配をすればいいのに。
「……って、メイコすごいな」
「え? そんなことないよ?」
 気づけば、メイコは腕いっぱいにお菓子をかかえていた。全部、クレーンゲームで取れたのかな?
「メイコ、それ、全部、その……」
「うん、このクレーンゲームで取れたけど。簡単だよ?」
「難しいよ……」
 そういえば、先日大量に持ってこられたお菓子の山も、クレーンゲームで取ったと言っていたっけ。

*

 メイコと別れ、家に戻った。結局、メイコは「いっぱい取れたから」という理由でお菓子を半分くれた。
 無事に元気になったのに結局お菓子を押し付けられている。何これ、部屋にお菓子がいっぱいなんだけど。

 テレビをつけても、あまりおもしろそうな番組はやっていなかった。年末特有の特番ばかりで、特に楽しみにしていたレギュラー番組がやっていないつまらない時期だ。
 うとうとと舟をこいでは持ち直す時間を繰り返し、ふああ、とあくびをした瞬間ふいに鳴ったインターホン。時刻は気づけば夜九時。
 誰だろうとドアを開けた私は驚いた。
「……なんで」
 そこに立っていたのは、紛れもなく彼。普段は学校で白衣を着ている、あの人だった。
「お待たせ」
「お待たせも何も、呼んでないんですけど……」
「冷たい言い方だね。でも巡音は俺に会いたかっただろ?」
 彼はそう言って、少し微笑んだ。全部、見透かされてた。
「それで、どうしたんですか?」
「今日はイブだろ? イルミネーション、見に行こうと思って」
「え、ということは」
「そう。せっかくだから、一緒に見にいかないか?」

 駅より少し離れた場所。立ち並ぶ木々に、綺麗なイルミネーション。
「綺麗……」
「だな」
 空は曇っていないので、星は見えるかもしれない。でも今は街とイルミネーションの光で見えない。
 途中、メイコがいないかなと思って見渡したけどいなさそうだった。そういえば、メイコはイルミネーションとか興味ないと言ってた。きっと今は、家でお菓子でも大量に食べてるんだろう。
 近くの公園に立ち寄る。街灯もあまりない場所。でも、そのぶん星が綺麗だ。
「そういえば、どうして私と一緒にイルミネーション見ようとしたんですか?」
 ふと口にした疑問。
「本当は、早く巡音に会いたかったんだ」
「イブだからですか?」
「ああ。クリスマスぐらい一緒に過ごしたいと思ってたんだが……仕事があったから」
 やっぱり仕事が忙しかったようだ。
「それでやっと終わったと思ったら夜八時半。で、巡音にメール送ったんだ」
「メール?」
 そういえば、八時半にメールが来てたっけ。なんだろう、全く内容を見た覚えがない。
「『今から会える?』って送ったのに返事が無かったから、気になって」
「ごめんなさい、たぶん寝てたと思います……」
 うとうとしていたから、ケータイの音にも気がつかなかったんだろう。幸せな夢を見たような気もするけど。
「で、始音が『何? 巡音さん?』ってしつこくからかってきた」
「始音先生らしい」
「あまりにも始音の視線がうるさかったから早めに切り上げてきた」
「それで私の家に来たと?」
 いくらなんでも急すぎる。
「なあ」
「なんですか?」
 私は星を眺めながら返事をする。
「明日は休みだから、一緒にどこかに行かないか?」
「いいですよ。クリスマスは空いてるので」
「そうか、サンキュ」

 深夜、私は寝る前に彼の最後の言葉を思い出した。
『明日は、少しでも長く巡音と居たいから』
 そっと、まだ新しいカチューシャに触れる。明日、このカチューシャをしていこう。きっと、彼もまだ新しいマフラーをしてくるだろうから。
「少しでも長く……」
 そう呟いて、布団にもぐりこんだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくルカ】memory【4】

2011/12/24 投稿
「休日」

改稿にあたり、内容を少し変更しました。
十年くらい小説を書いていますが、結局クリスマスの話はほとんど書いていない気がします。イベントものはハロウィン中心です。なぜでしょう。

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投稿日:2022/01/10 01:31:40

文字数:2,689文字

カテゴリ:小説

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  • ジェニファー酒井さん

    ジェニファー酒井さん

    ご意見・ご感想




    なんて愛おしいリア充なんだ。


    からかうカイトもかわi((

    がくルカは神。
    ゆるりーのがくルカは正義。

    今日も今日とて
    ゆるりーの文才は光り輝く。




    …とゆーわけで
    ブクマもらってゆきます\(^o^)/

    2011/12/27 11:41:18

    • ゆるりー

      ゆるりー

      メッセージありがとうございます。

      この話の二人はリア充だがい((

      カイトもたぶん誰かとイチャついてr((

      ちょww私のがくルカは正義じゃないですwww

      私は文才ないですからwww光り輝きませんwwww

      ブクマありがとうございます!
      ちゃんとこの話の第二話も書きます。

      2011/12/27 18:03:54

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