「やっぱ幼いほうがいいんだね……有難う、グミヤ―っ♪」
「え?……あぁ、うん…そうだな……」
「?どうしたの?……あ、2人なのを気にしてるの?それなら大丈夫だよ、片方減らすから」
「えっ……あぁ、いや、なんでもない。……片方、減らす…か。やっぱ……殺す、んだろうなぁ……」
「グミヤ―ん?」
「ん?何でもないって。で?何か用か?」――――
「冒険はいいけど、どこに行くの?」
前を歩くリントとレンカに向けて、リンは言った。
「テキトーに歩いてるだけだよ?……あ、冒険なら2人っきりの方がいい?」
冗談めかしてレンカが言った。
それをリントは本気ととってしまったらしく、
「なっ、お前、ここにこの2人を残していくのかよ!?」
「まぁまぁ、冗談だからさ、リント。落ち着いてよ」
「何だよ、冗談かよ……っ!?」
あはは、とリン、レン、レンカの3人は笑った。
「まぁ、あたしたちはどこに何があって、何をするとどうなるってのを知っちゃってるから、そーいうポイントについたら2人っきりにさせる、ってのは?何かあったら呼んで貰えればいいし、ね」
「ん――……でも、何かあった時に呼んで助けてもらうのは何か…悪いって言うか、冒険というより遊びというか……」
リンが言った。
「てか、冒険に案内役が作ってのもおかしな話だよな」
まぁ、その案内役が俺らなんだけど、と付け加えてリントは応えた。
「じゃあ…一つ目のポイント?についたら、そこから僕らだけで行くってのは?行きたい場所があるわけでもないし、RPGみたいに「するべき事」がない」
「あ、そういえば夢さんにもそう言われたもんね。好きなことを好きなだけ、って」
リンが夢、といった瞬間、リントとレンカが一瞬だけ悲しそうな顔をした……ように、レンは見えた。
「……あたし達は、あんたらを「案内するべき所」がない。だけど、あたしは…あたし達は、2人に、元の世界へ無事に戻っていって欲しいの。あたし達はね、元ダイヤアリスなんだ。だから、あんた達を案内してる」
「俺達みたいにここに閉じ込められて、この国を、世界を、ずっと彷徨うなんて事になって欲しくない。だけど……お前らを、今回ここに来た奴らみたいな目に合わせるのもすげぇ嫌だっ!だから、お前らについて行こうと思ったけど、やっぱ無理だったみてーだな。ここでのルールもあるし、さ」
リンもレンも、何を言っているのか分からない、そんな表情をしていたが、聡ることは出来たために、話を黙って静かに聞いていた。
「だけど……だけど、全てあたし達の独断では動かない。だから、2人に任せるよっ」
「………どうしたい、何したい?どうすればいい、何すればいい?」
話の意味をなんとなくだがレンは分かり、リントとレンカに向けて言葉を放った。
「僕らは、ただ一緒にいればいいんだ。その中で、ただ冒険がしたいと思った」
その言葉を聞いて、ようやくリンも大体分かったのか、
「2人は、2人のしたいようにすればいいよっ」
そう、告げた。
「そっ、か。……じゃぁ、さ。ここでお別れしても、いい?」
レンカは、そういって立ち止まった。
「「え?」」
レンカの言葉に、リンとレンの声は重なった。
「俺ら、もう、すっげぇつかれた。お前ら、2人でいたくて、冒険したいん…だろ?じゃあさ、俺、ら、は、必要、ねーよな……?」
リントは、声も絶え絶えな話の最後では、俯いていた。
「うん、2人がそうしたいなら、それでいいよ。……私たちは、まっすぐ、進むよ」
「お疲れ様でした。もう、いいんですよ。…僕ら、頑張るからっ」
どこか突き放したような言い方だったが、優しい声色だった。
「……じゃあね。頑張ってよ?……もう、ホントに、疲れちゃったよ…」
リントとレンカは、今まで来た道を振り返り、そして、歩き出した。
その2人に向けて、リンとレンは、大きな声で言った。
「ありがとうっ!ここまで一緒に来てくれて!」
「嘘つくことも、無理することも、しないでっ!俯かないで、前を向いて歩いて!」
「「きっと、また、会えるからっ!さよならなんて、言わないからっっ!!!」」
2人の声が重なって、歩いていたリントとレンカは、こちらを2人同じタイミングで振り返った。
「…嘘吐きだったのは、ばれちまってたんだな……っ!お前らが初めてだよ、気づいてくれたの!」
「うんっ、あたし達は、2人で、ずぅっと、進んでいくから!……夢には、負けないよっ」
「「またねっっっ!!!!」」
リントとレンカの顔は、涙でボロボロだった。
それでも、満面の笑みだった。
そして、リンとレンは前へ。
リントとレンカは逆方向へ、まっすぐに、まっすぐに進んでいった。
あの2人と別れてからどれくらい進んだんだろう。
ゆっくり、それでいて確実に、マイペースに、リンとレンは歩いていた。
「むぅ―、出口が見えないっ!」
「うん、そうだね………あ、リンっ、待って。あれ……茨の……小道?」
レンが指さす方を見ると、小さな、白い門に茨が絡み付いていて、その先も、道にまで成長して邪魔にならぬよう止められていた柵に、茨が絡み付いて、中には元の柵の形が分からないくらいのもあった。
「うわぁ、すごいねっ、レン。入ってみよっ!」
「え………うんっ」
そして、2人は、小道をたどっていった。
手をつないで進んでいくと、一部だけ、柵もボロボロで、茨も切られそこらに落ちたままにされていた。
「……なんか、凄い鋭い切れ味の剣で切ったみたいだね」
「切り口がまっすぐだ。……リン、早くいこっ」
「うんっ」
そこから小道の出口まで、一直線に走っていった。
小道をずっと辿っていくと、白かった入り口とは違う、真っ赤な門があった。
その門を通ると、森の出口まで見えた。
「あ、やっと出口だぁ………!!!」
「リン、早く出よっ?……ここを出ると、何があるんだろーね」
2人は、無意識に早歩きで歩いていた。
「「せ――……のぉっ!!」」
森を一緒に出ると、一本道が続いていた。
なんだか久しく見る青い空を、2人はゆっくり見上げた。
「ふふ、まずは1つこーりゃくっ!!」
「次のダンジョンは何処だろうね?」
そう言って、いつの間にか離していた手をまた繋いで歩きだした。
「ん―……一本道かと思ったけど、右に左に曲がったりクネクネだったり…」
「道を間違えるのもいいんじゃない?つきものだと思うよ」
「そだね!んじゃ、行こー行こー……あ、レンっ!あそこ!広い場所に出るみたい…」
嬉しそうな声を響かせると、リンはレンの手を引いて、そこへ向かって走っていった。
「……レン―」
「なぁに?」
嬉しそうだったリンの声が急に低くなって、レンはそれに何があったのかと思いながら返事を返した。
「広い場所に出たから、何かあるかなーって思ったら、ここ崖だよ…行き止まりだった」
リンは足元に咲いていた一輪の花の花びらを優しく撫でながら言った。
「あぁ……そっか」
そうレンが返すと、リンは崖っぷちに近づき、座り込んで下をのぞきこんだ。
「ちょ、リン、危ないよ…」
「うわぁ、レンっ!綺麗だよ!すっごい広い草原だなぁ……あ、あそこは町かなぁ?お城もあるよっ!!」
相変わらず気分がコロコロ変わる姉だな、なんて思いながら近づき、リンの隣で下を覗くと、リンの言う通り、綺麗な草原が一面に広がっていた。
しかし、この崖が物凄く高いのか、その町や城でさえもとても小っちゃく見えた。
「うっ……リン、もし落っこったらすごい危ないよ…ほら、離れよう」
「えぇ……うん」
レンはすぐに立ち上がってその場から離れたが、リンは立ち上がっても下を見ていて、中々離れようとしなかった。
「……ごめん、レン!すぐいくっ!さっきの曲がり角からだよねっ?…………っっ!?」
と、リンは言ってレンの元へ走り寄ろうとした。
だが、バランスを崩し、リンの体は宙へ―――
足元を見ると、地に足がまだついていた。
自分がバランスを崩したのではなく、自分が立っていた位置が崩れたんだろう。崖の端が大きくへこんでいるのが分かる。
「っ!……あっ、レンっ!!」
リンは、死を当然のように覚悟したが、下へ落ちることはなく、横へ飛ばされ尻餅をついただけだった。
リンを押して助けたのはレンだろう。
リンの代わりに、レンが落ちそうになっていた。
片方の手を何とか崖に掛けていたが、自分の全体重がそこに掛かっている。
今にも手が離れて、落ちて行ってしまいそうだった。
「レンっ!今助けるから!手、離しちゃだめだからね!!」
「……ダメだよ、リン。危ないよ」
こんな状況なのに、レンの声は静かで、落ち着いていた。
「危ないのはレンでしょっ!?ごめんね、私のせいで…」
そう言いながら、レンの手と腕を両手で取り、引っ張ろうとした。
「ダメだって、リン…。リンまで落っこっちゃうよ?」
「ダメなのはこっちのセリフっ!!レン、落ちるのなんか、絶対に許さないんだからぁっ!!2人じゃないと、嫌だからっ!!落ちて、怪我したり、死んじゃうのなんか、絶対にダメっ!!」
我儘だなぁ……。
なんて、レンが呟いたが、リンは気にした様子もなかった。
「…折角リンが落ちないように助けたのに、またリンがここから落ちたら元も子もないでしょ?しかも、この前、リン、言ってたよね…。ルカ姉とルキ兄が僕らの部屋を別々に離そうとした時だ。僕は嫌だって言ったけど、リン、さ。「もう大人なんだからっ。1人だったって大丈夫だよっ」って。」
「っ」
レンの頬に雫が落ちてきた。リンの涙だ。
「……1人で大丈夫だって、強がりだって思ってたけど、あれ本当なの?…なら、僕がいなくても大丈夫でしょ?もしも強がりだったとしても、僕が居なくなっても、そうやって、泣いちゃダメ。いつもルカ姉泣かないでしょ?だから……」
「うるさっ、い……!あれは強がりだった、これでいいでしょ?……ねぇ、レン。1人は、嫌だよ…?」
泣きながら懇願してくるリンに、レンは、優しい声で言った。
「それは、1番ダメだよ。……ほら、リン、危ないから離れて?…って言っても無駄かぁ。なら…」
「っ!!嫌、やだ、やだヤダ嫌だぁっ……!!!」
「ばいばい」
パッ、と、あっけなくレンの手は離れていった。
崖から手を放したレンが、思い切り腕を振ったのだ。
離れた双子の手の距離は、どんどん広くなっていって―――
遠くからなので表情までは分からないが、確かにレンが、紅い血で覆い尽くされていると感じた瞬間、リンは、さっきより更に涙を流しながら、
「うわああああああぁあああああぁぁぁああああぁぁああぁぁぁああぁぁあああぁぁぁぁああぁあぁぁあぁああああぁあぁあぁぁぁあぁぁああぁぁぁああああ!!!!!!!!!!」
流れ出した涙は、止まらなかった。
「レンっ…ごめんね……ごめんね……ごめんね……っレンっ……うぅ、ああああぁぁあああぁあっっ!!!!」
それからリンは、もう亡き片割れに、謝罪をし続けた。
「やっぱ、片方減った。……今更だけど、こんなんでいいのかなぁ……俺達は、ただの――――」
彼の声は、強風にかき消された。
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ご意見・ご感想
雪葉
ご意見・ご感想
ああああああああああああああぁぁぁぁぁあああああああレンーーーーー!レン!レン!レーーーーーーーーーーーーーン(落ち着け、そして死ね
ザオリク!かけても無駄か!!だったら私も飛び降りる!
あーこういう感じのやつすきだぁ・・・これもブクマしておきますぞ!
2011/11/01 05:39:11
アストリア@生きてるよ
コメ有難う!
おwちwつwけwだが死ななくたって大丈夫さ、うちは心が広いからなぁ!((お前こそ死ね
ふっふっふ、そんなのはかけても無駄……ってダメェェェェ!降りちゃ……あぁ……ww
好き!?それは嬉しいなぁ……!ブクマだなんてっ!有難う!
2011/11/01 15:50:10
美里
ご意見・ご感想
レーーーーーーーーーン!!!
落ちちゃったよ!待っててレン、今から助けに行くから!(どこに
レン君は自己犠牲タイプなんですね。自分さえ良ければ他は何も考えないんですね。そんなことして残されたリンちゃんや私はどうなるのか分かってんのかレン!
ミクオ君たちの行動が何のためなのか気になる。彼らを傷つけ、泣かせたのは誰なのか!
ということですね?
次回も楽しみにしてます。
2011/10/24 20:29:09
アストリア@生きてるよ
助けに?……ふふ、もう遅いですよ……ww
いやいや、レンはちゃーんと考えてたんだよ、あれでもww
例えるなら…そう、悪ノ召使のレンみたいな感じかなぁ…?
あのまま助けてたらきっとリンちゃん落ちちゃうから、リンを落とすくらいなら…!
みたいな?ww
楽しみにしてくれるのか!有難うございます♪
性転換の案内役たちの事もちゃんと書くから、待っててねっ!!
2011/10/24 22:57:30
雛菊
ご意見・ご感想
レーーーーーン
落ちちゃった…Σ(゜Д゜|||)
リン頑張ってーー!!
いつも、楽しみにさせていただいています
2011/10/22 10:03:52
アストリア@生きてるよ
なぜ2つww分裂した?ww
落ちちゃった…そう、落ちちゃったぁぁぁぁ!!ww
有難うございます!リンをもっと応援してあげてっ!!w
楽しみにして頂いているのなら、私も嬉しいです^^
これからもどうぞ宜しく…(((自重☆
2011/10/22 12:04:19
雛菊
ご意見・ご感想
レーーーーーン
落ちちゃった…Σ(゜Д゜|||)
リン頑張ってーー!!
いつも、楽しみにさせていただいています
2011/10/22 10:03:50