輪郭をなぞってそっと丁寧に
なりたかった物だけ浮かんでくる
手に入れたかったことが嘲笑う
何もかも握り潰してやりたい自分も
どうせ損しかしていない慣れた創傷
全身で受け止める毒の鏃こっちだよ
音も鳴く裂くもう「キズ」とは呼べない
閉じ込めていた物が溢れていくように
こんな事望んでいるわけないでしょ?
それが美しいなんて微塵も感じない
そう思わせる隠された意図?陰謀?
ありもしないきまぐれとちっぽけな絶望
あの頃のまま押し入れにしまい込んで
カビが生えて眉をひそめる今の私みたいに
憧れだったなんて絶対言わない
なれなかった人に呪いをかけてる
足を踏み入れたい幼さが滑稽だ
何もかも踏み潰してやりたい自分も
そうか最初は違ってたんだあたかも
全力で向かっていた周りの目気にせず
暗闇も雑音もそれすらを友達にして
私ひとりだけが走り続ける世界だった
そんな事認められるわけないでしょ?
これが現実なんて意識が拒んでいる
あの想いは無くしたの?落としたの?
ザラついた欲望で上書きを繰り返した
「実はね」「本当はね」って言い訳がましいな
何度見ても苔むして動かずにいたのにさ
静まりかえる教室の真ん中で挙手
ざわついた体育館の真ん中で起立
震える唇は衆目を一身に受けて
血液が沸騰しそうな体温で呟く
「それは私です」
拍手は起こらない声も出ない
耳鳴りが聞こえたまま暗い海の底
引きちぎられたケーブルが記憶を閉ざす
指先だけが何故か温かかった
涙か浮かんでは消えて泡になった
海の底だって気付くのに時間がかかった
海藻の群れが頬を撫でている
魚が遠巻きに向きを変えて走る
そこから見える景色を光をただ
一瞬でも焼き付けたかっただけ
無邪気すぎた醜さの代償数知れず
喉を嗄らし涙を枯らし息も絶え絶え
手を繋いで抱きしめた始まりの色
そこから広がる世界が微笑んでいた
何も見えなくなった瞳に問いかける
戻りたいなんて酷いわがままなのに
「どうせコドモでしょ」
暖かな潮の流れが緩やかに伝う
枯らした涙を還すように
届かぬ叫びを歌うように
生まれたてみたいな衝動
命を繰り返して問うのなら
悪あがきの悪夢と踊ろう
もう笑えなくなったけどまだ
あの時の色を忘れていないなら
あどけない足跡を少しだけ
波打ち際に残していよう
すぐに消えるから大丈夫って
言い聞かせるように誇った
塞がることの無い傷口が笑う
終わる事のない痛みが囁く
汚点も濁点も全てを満たして
見えなくなった輪郭を溶かした
残った時間を君にあげよう
そろそろ生まれてくる頃だ
ハッピーバースデー
ハッピーハッピーバースデー
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