そして、その数日後の週末。
 「ミク、誕生日おめでとう」
 『おめでとう』
 雅彦のお祝いの言葉の後に復唱するワンオフのボーカロイド五人。
 「ありがとう」
 笑顔でこたえるワンオフのミク。そうして夕食を食べ始める。今日はワンオフミクの誕生日を祝っていた。ワンオフミクの誕生日は8月31日だが、この日はバースデーライブの練習がクライマックスを迎えているので、とてもではないが誕生日を祝う時間的な余裕はない。また、バースデーライブは週末で、ライブ終了直後のワンオフのミク自身がくたくたな状態なので、同じく祝うことができないため、ワンオフのミクのバースデーライブは基本的にバースデーライブの週の翌週となっていた。それなら料理にも時間をかけられるので、準備する方も余裕がある。今年はミクにとって特別な年なので、普段の年より盛大だった。
 「…ミク、おいしいかい?」
 雅彦が尋ねる。
 「はい、とてもおいしいです」
 「みんなで作ったもんね」
 笑顔で話すワンオフのリン。最近は全員料理の腕が上がってきたので、比較的簡単な作業であれば、MEIKOも安心して任せている。とはいえ要所は確認している。また、じっくりと時間をかけておいしい料理は作るのはワンオフのMEIKOとルカが得意な領分で、雅彦も二人に従って調理している。
 「…ミク姉、ケーキもちゃんと作ったから」
 「ありがとう、レン。…だけど、こんなに沢山あったら、ケーキの前にお腹いっぱいになっちゃうかも」
 少しおどけるようにいうワンオフのミク。そうして笑いに包まれる食卓だった。

 夕食が終わり、デザートの時間になった。テーブルにはワンオフのミク以外で作ったケーキが置かれており、ろうそくがさしてあった。今はその全てにワンオフのKAITOが火をつけた。
 「はい、ミク」
 そのワンオフのKAITOの言葉を受けて、ケーキについたろうそくを吹き消す。すると拍手が起こった。
 「それじゃ、ケーキを切るわね」
 そういってケーキを切るMEIKO。
 「私が紅茶を、雅彦君がコーヒーを淹れてくれたから、お好きな方をどうぞ」
 ワンオフのルカが話す。少し考えて雅彦の淹れてくれたコーヒーをマイカップに注いで牛乳を注ぎ、暖めるワンオフのミク。そのワンオフミクの席の前にワンオフのMEIKOが切ったケーキを載せた皿を置く。そうして全員の準備が整うと、一行はケーキを食べ始めた。
 「…めー姉、前より甘さ控えめになった?」
 ケーキを一口食べたワンオフのレンが尋ねる。
 「…ミクの好みが変わってきたから、それに合わせて甘さは抑えただけよ」
 「…私、昔のほうが好きだったな」
 「…リン、これはミクの誕生日ケーキなんだから、ミクの好みに合わせるのが普通でしょ?」
 「…何か、昔ほど甘い物は欲しいとは思わなくなったの」
 「…ミクは変わったね」
 優しい声でワンオフのKAITOがいう。
 「…そうね、私たちが生まれてきてから、一番変わったのはミクかもしれないわね」
 「…うん」
 そういいながらケーキを食べ終えるワンオフのミク。すると次はワンオフのルカの淹れてくれた紅茶を飲むため、立ち上がった。

ライセンス

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  • この作品を改変しないで下さい

初音ミクとリンクする世界 初音ミク編 2章17節

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投稿日:2017/07/02 19:11:51

文字数:1,323文字

カテゴリ:小説

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