変わり者、変人、そんなクラスメイトの質問はいつも的外れで、そして俺には理解が難しすぎた。
「小説はね、猫の箱なの。シュレティンガーの猫」
「小説は登場人物も描写もあるだろ?」
「なに言ってるの?小説は漫画じゃないんだよ?同じ口調の悪者が主人公の振りをしているかも知れないの」
「それは批判か?」
「夢を持っているだけでしょう?小説は猫の箱よりも解明出来ないんだよ。ロマンだと思わない?だって、作者の脳みそは箱みたいにあけたら壊れちゃうじゃない」
彼女は正常に狂っていた、正常に歪んでいた。正常に彼女は彼女の普通だけを信じている。
「でも、あけたらそれはきっと意味がないんだよ。それは概念の否定。作者が泣いてしまうからね」
「おまえみたいな純粋な読者がいないからか?」
違う違う!彼女は手を振って答えた。
「小説家は仕事なんだよ?私みたいなのの戯言を本気にしたら可哀相じゃない」
結果、何が言いたいかわからないまま彼女は教室から出て行った。彼女の世界にはやっぱり彼女しかいないらしい。
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