第1回目の講座はミックスとマスタリングについてです。
ミックスとマスタリングは切っても切り離せない関係にあります。
なので、良いマスタリングを行うには良いミックスを行う必要があります。
「そんなの当然だろ!」と思われるかもしれませんが、ミックスとマスタリングの線引きが曖昧な方も実際に多いので、まずはここからお話したいと思います。
マスタリングというのは、もともとレコードやCDを生産するのに、工場へ出すプレス用のマスターCDを制作することを指して使われていました。
そして後にアルバムなどの複数の曲が入ったCDを制作する際に、音量や音質が曲ごとで異なり聴きづらいと感じたエンジニアが微調整を行うようになり、これもマスタリングと指すようになりました。
今では一般的に多く使われるのはミックス後の微調整を指すことがほとんどです。
ミックスとマスタリングの位置づけを大まかにまとめてみますと、『ミックスは楽曲全体のバランスを整える作業』『マスタリングは音量、音質の微調整をする作業』といったところです。
このような位置づけがはっきりしていることで、ミックスとマスタリングで行うべき作業が明確になってゆき、作業がしやすくなると思います。
ここではまだ詳しく触れませんが、さらに作業をやりやすくするためには、ミックスの段階でどのような感じに仕上げるのか明確な方向性を決めてミックスすることです。
これで大体の作業の役割についてご理解頂けたと思います。
ここからはレコーディングについて少し触れたいと思います。
ロックなどではギターやベースなど、歌ってみたではボーカルとしてレコーディングする機会は多いと思います。
最終的な音質を左右するのはレコーディングの段階です。
ここでしっかりと録音ができていなければ、それ以上の音質にすることはできません。
それでは、具体的にはどのようなレコーディングが良いのでしょうか?
それは、『なるべく大きな音量レベルを保持しつつ、ノイズを極力抑える』ことです。
なぜ音量レベルが大きい方がいいのかと言いますと、音量が小さいから上げようということになるとノイズの音量まで上がってしまいます。
そのため、なるべく大きな音量で録音できる方が望ましいのです。
ですが、過大な音量による音割れには気をつけましょう。
また、ノイズを抑えるための工夫としてSN比が高いコンデンサーマイクを使用することも手です。
SN比とは信号(Signal)とノイズ(Noise)の比率のことで、これが高ければ高いほどノイズが抑えられるということです。
この他にも楽器やボーカルなどによって異なるポイントがありますが、ここでは割愛したいと思います。
次にミックスのフェーダーと音数に関して触れたいと思います。
ミックスでは基本、『フェーダーは下げて』バランスをとります。
音数は少ないほどバランスが取りやすいので、全体を-15~-20dbぐらい大幅に下げてから上げていくのも手です。
ここらへんは人の好みでやりやすさは変わると思いますので、自分に合う方でやってみてください。
音数は多ければいいということでもなく、多ければ多いほどゴチャゴチャした聴きづらいミックスとなり、音圧も上げにくくなります。
よく周波数レンジを意識して隙間ができないよう音数を増やすという方がいますが、経験上ほぼ全てゴチャゴチャで聴きづらかったです。
これは音程のみの周波数帯でしか意識できていないことがほとんどの原因です。
楽器は音程以外の周波数帯も幅広くなっており、倍音や楽器の鳴りなど周波数が被ってしまう部分はたくさんあります。
これらも意識して必要な音数を選べるよう目指しましょう。
倍音というワードが出てきましたが、これについてもここでは割愛したいと思います。
最後にボリュームとゲインについて触れたいと思います。
非常に勘違いされる方が多い項目の1つがこのボリュームとゲインです。
どちらもフェーダーを上げ下げすると音量が上がったり下がったりするので、一見同じように見えます。
ゆえに勘違いされやすいのです。
しかし、やっていることは全然違います。
『ボリュームはトラックの音量レベル』で『ゲインはエフェクトへ入力するもしくは出力する音量レベル』です。
もしかしたらこの時点でお気づきの方もいるかもしれませんが、エフェクトはボリュームではなく全てゲインになっております。
入力もしくは出力と言ったのはインプットゲインとアウトプットゲインのことです。
エフェクトによっては仕様の違いで、ゲインがひとつの場合もあります。
またDAWによってはトラックにゲインがついているものもあると思いますが、それは全てインプットゲインです。
ゲインはオーディオの音量レベルにより上下しますので、触っていない状態では真ん中の0dbになっています。
音の流れを図式化すると、
音源→(トラックのゲイン)→エフェクト→ボリューム→パン→マスタートラック
という流れになっています。
違いを理解して頂けましたでしょうか?
次回からはミックスの際に欠かせない基本のエフェクトについて解説していきたいと思います。
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