私、亜北ネルは、ボカロの仲良し設定が、大っ嫌いだ。

正規のボカロと仲良くなんかしたくないのに…
ベタベタ、ベタベタ、うっとおしい。
なによりもよ!
メイコやカイトが、古いって理由だけで先輩風吹かしてくるの
亜種のアタシにまで干渉ばっかり。
たまったもんじゃないわ。

やれ「他人に迷惑かけちゃダメよ」だとか
やれ「ご飯はなるべく、みんなで食べるようにしましょう」
やれ「無理な時は、きちんと連絡する事」
やれやれ、まったく! ゴチャゴチャうるせぇー!

だいっきらい!



10月31日。
あの日も、そう思って終わりのハズだった。
いつものようにバイト終わって終電ギリギリで帰った日のこと。
正直、玄関にこのまま倒れこんで寝てしまいたい。でも

「おかえり。また遅かったわね。」

メイコがいた。
家に入ってドアを閉めると、急に明かり付くし、
静まった家の玄関で声をかけられるは、正直ビビる。
ましてや、いつも小言ばっかり言ってくるメイコの声なら尚更だ。
あたしは、びっくりしたのを悟られないよう、睨みつけて答える。

「……。ただいま」
「別に今更だからって、同じ事でも何度でも言うわよ。
 基本的にご飯は一緒に食べる。
 無理なときは、ちゃんと連絡する。
 仕事だからって…」

お説教が、長くならないうちに割り込む。

「はいはい、メイコ姉は、いっつも正しいわよ!」

ここだ!
最近言ってやりたくてしかたなかったこと。

「お姉ちゃんだもんねー。」

よし! 皮肉たっぷりに言えたw
そして~ ここか~ら~の~

「でもね、アタシ…」

トドメだ!

「そういう、『正しい、良い子ちゃん』って、だいっきらい!」

ばっかじゃないの?と言わんばかりに、言葉を吐きつけてやった。
ふははははは。
言ってやった言ってやった。ざまぁーみろ~。

「………………」

…って、たいして効いてないし!
いや。押し黙ってるし効いてるのか?
んん~…
くそぉ。大人ぶった仏頂面で分かんないぞぉ~。


「………………」
「………………」


ダメ。
絶えられない。
切り上げよう!

「他に、なにかある?
 無いんだったら、明日もあるし。アタシ、もう寝る。
 じゃ、お休み。」
「待ちなさい。」

しまった!
こっちが逃げ腰になるのを待ってたんだ。
いやいやいや。ここは、弱気になっちゃダメだ。

「何よ! まだ、なんかあるの!?」

よし! 上手く言えた!
弱気、一掃!
当方に臨戦態勢の準備あり!
どんな事、言われてもいい覚悟完了!
さぁ、来い。

「お誕生日、おめでとう」

ほら来た。
仏頂面なんか怖くないぞ。
大人って、なんでいっつも説教ばっかりし
……
………

「え?」

あれ?

「12時過ぎたし。どーせ明日も、朝から出て今日と同じくらい遅いんでしょ。」
「え? ・・・ええ・・・」

いや… そんなことより

「まー。カイトも途中まで待ってたんだけど、今日の仕事キツかったみたい。」

いや、聞きたいのは…

「アタシも、もう寝るわ。」

あくびしながらメイコは、アタシを残して自分の部屋へ帰っていった。
アタシが何か言おうとしてるなんて気づかずに。
なんて言えばいいか分からないまま、とにかく言える言葉を口にする。

「だいっきらいよぉ……」

自然と言葉が出た。
別に、いつも言っててクセになってるとかじゃない。
私の本心なんだ。うん、問題ない。
ぜんぜん、問題ない。





階段をあがると、自分の部屋のドアに、張り紙を見つける。

あまりの小っ恥ずかしさに、どうにかなっちゃいそう。
ちょっと… やめてよぉ~……
なかば予測できつつも、手にとって読んでしまう。

(お誕生日おめでとう。
仕事が忙しいみたいですが、体壊さずに。
たまには一緒に御飯食べたいです。ミク)
(オメデトー! V V 次の休みには遊んでくれろー! リン)
(仕事だから仕方ないけど、どうせネット覗くなら、お祝い動画も観ろよな。レン)
(←ププゥー カッコつけー)リンの字

他にも書き足すようにして、いっぱい書かれてる。
メイコとカイトが、呼びかけて集めたらしい。
ルカも。インタネ組にAHS組、UTAUも何人か・・・。
本当に余白狭いと言わんばかりに、本当にいっぱいいっぱい

「本当に…
だいっきらい… なんだから…」

言葉にすることで、思考を止める。
考えちゃダメだ。
あふれてくる、この感情を受け入れたら、今までのようにできなくなる。


私は、クール。
私は、みんながきらい。
私は、仲良くなんかしたくない。
私は、家族ゴッコなんて認めない。
私は、しかたなく、ここにいるんだ……
私は、…… 私は… 



はがした紙を持って、急いで部屋の中に入る。
こんなものは、早いとこ、見えない所にしまうのが一番だ。
急いで隠す場所を捜すが、上手くいかない。
自分の部屋で隅々まで知っているはずなのに。
こんな時、何処に何があったのか思い出せない。
見知らぬ部屋のようで焦る…。
とりあえず、見えないところに入れときたくて机の引き出しを開ける。

 !

しまった…
ボカロによく似たイラストがたくさん出てきた。
公認になれず忘れられていく亜種たちだ。
間違っても、ここには入れてはいけない。

自分は、ただ運が良かっただけなのを、忘れてはいけない。
亜種全員を誰も把握しきれないほどに居たことを、私は忘れてはいけない……
私だけが、間抜け面して仲が良いみたいなのに慣れてはいけない………


だから・・・ レンも含m いや!
私は
仲が良いに
慣れてはいけない………




引き出しをゆっくり閉め、目についたノートに挟んで本棚に入れる。
たぶん、二度と開けない。
表紙に封印って書いといたし。

あとは、いつも通り。
いつものように明日の準備をして、寝た。





次の日、「いつもより機嫌いいね」「なんかいいことあった?」とか言われた。
訳が分からなし、とりあえず問答無用でシメといた。



                <完>

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【一人称?小説】亜北ネル「はぁ? ボカロで仲良しとかwww」【短編?】

■ ネルがツンデレ設定な理由を考えてみたり
■ 微レンネル(カップリング)
■ 11月の誕生日ネタ(今年も動画化できそうにないので、手放したくて「なんちゃって一人称小説」に)

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投稿日:2012/09/12 22:17:00

文字数:2,524文字

カテゴリ:小説

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