親愛なるあなたへ 



 あなたがこれを読んでいるとき、僕は既にこの世にいないでしょう。

 なんて書くと、大昔のドラマみたいで信じられないかもしれないけど、本当のことです。

 手書きの手紙の書き方なんて全然知らないから、読み辛いかもしれないけど我慢して読んで欲しいな。

 まず、あなたと知り合えたことに感謝を。

 ありがとう。あなたのおかげで僕は生きることが出来ました。

 こんなこと面と向かって言ったら、大げさだと呆れられてしまうかもね。

 でも、もしもあなたが声を掛けてくれなかったら、いずれ僕は本物の機械になって、何も思わず感じず、ただ動き続けるだけの物に成り果てていたでしょう。

 だから、ありがとう。

 そして、あなたに教えられたたくさんのことが、僕が一人になったときにどれだけ支えになったか。言葉で表せないのがとても残念です。

 あの店でくつろぐ人達は、皆、すごく安心していました。それこそ自分の家のように。僕もその一人でした。

 あなたと店の外で話すようになって、あの店がそれを保っている理由があなただと知りました。あなたがその雰囲気をとても愛していることも。

 だから、自然と思えたのです。

 あなたの周りごと守ってやらなきゃダメなんだなって。

 それを出来る自分がいるのは、すごく誇らしいことなんじゃないかって。

 本当に何度感謝の言葉を並べても足りないくらい、大事なものをたくさんもらいました。

 それなのにこんなことを書くのはずるいし、卑怯だとも思います。

 だけど、それでもいいから伝えたかったのです。他ならぬあなたに。

 どうか僕を覚えていてください。

 ありがとう。さようなら。



 あなたの近しき人より 

ライセンス

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  • オリジナルライセンス

【小説化】ドーナツホール プロローグ /親愛なるあなたへ/

ハチ様のドーナツホールからイメージを膨らませて小説化しました。

原曲様→https://www.nicovideo.jp/watch/sm22138447

閲覧数:103

投稿日:2019/07/31 20:25:11

文字数:739文字

カテゴリ:小説

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