貴方を探す歌


『KAITOぉーなぁ、話聞いてくれよー』

「煩い!マスター!!」

KAITOと呼ばれた青髪の少年は、
この時、期限が悪かった。

買っておいたと思ったアイスが無かったからだ。
その中、マスターの愚痴話など
聞いていられるわけがない。

そもそも、アイスの無いショックを
落ち着かせるため曲を聞いていたところを
話しかけられたのだ。
不機嫌になるに決まっている。


『ご、ごめん』
KAITOに怒鳴られショックなのか
詫びのつもりなのか
マスターは、ヒトコト謝り
自室に入っていった。

________________

30分くらい経っただろうか。

音沙汰ないマスターが少し心配になり
「少し、悪いことしたかな」
と感じたKAITOは
謝るためにマスターの自室へ向かう


「マスター、さっきは…」
扉をあけて部屋を見渡す
窓から風邪が吹き込んでいる部屋。


マスターが居ない

________________

KAITOは家を飛び出し
街中探しまわった。

公園、広場、スーパーマーケット、
公衆トイレ……

30分しか経っておらず、
財布も携帯電話も家にある
そう遠くには行っていないはずなのに
どこを探しても居ない。

「マスターごめんなさい…戻ってきて…」
呼吸を整え歩きながら呟く。

________________

海。

マスターと1度来たことのある
海に着いた。

思い返せば
昨日まででマスターに怒鳴った事があるのは
この海に来た日だけだった気がする。


KAITOは懐かしみながら
なんとなく、ここで歌えばマスターに会える気がした。

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海より透き通った低めの声を
張り上げて歌う。

マスターに聞こえるように。



しばらく歌うと
拍手をしながら近づく人が一人。

________________

「マスター!!」

気づいて振り返ると
そこには探していた人が。

『懐かしいなKAITO
前に海に来た時も、その歌を歌っていたよな』


「マスター!今までどこに!?」

笑いながら近づくマスターに
問いかける。


『いやぁ、KAITOが怒鳴るの
珍しいなと思って、
そうしたら、この海思い出してさ。

ほら、私、方向音痴だからさ
こんなことに……』


「マスター!!!」

言い終わると同時に
KAITOの怒鳴り声が海に響き渡った。

END

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

貴方を探す歌

閲覧数:86

投稿日:2015/09/11 17:19:16

文字数:1,025文字

カテゴリ:小説

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