アーチストたちが、アトリエを構えている施設、「ニコビレ」。

その1階の奥にある作業室で、ミクちゃんとルナさんが話していた。

彼女たちの前の机に置いてあるのは、人形の“はっちゅーね”だ。

「こっちの声が、向こうに聞こえるって…。それ、一体どういうこと?」
ルナさんが、ミクちゃんに尋ねた。

「うん。たとえばね」
ミクちゃんは、人形の頭を軽くなでながら、言った。
「このお人形が、“マイクロフォン”のようになってて、私たちの声を、拾うのよ」
「うん」
ルナさんは、首をかしげて、うなずいた。

「そして、その声が、別のところにある、別の“はっちゅーね”から、聞こえる…とか」
ミクちゃんは言う。

「ふぇぇ。そんな事あるのかなあ」
ルナさんは、目を丸くした。


●リンちゃんの声がしたもの…

彼女たちの横では、デフォ子さんが携帯電話で、モモちゃんとおしゃべりを続けている。
久しぶりに話したので、長話になるような感じだった。

ミクちゃんは、デフォ子さんの方をちらっと見て、続けた。
「ほら、いまデフォ子さんが話してる電話の向こうにも、人形があるらしいし」
「うん」
ルナさんはうなずいた。

「そこにいるリンちゃんの声が、さっき、この人形から聞こえたような気がしたもん」
ミクちゃんは、目の前の人形の頭をチョン、とたたいた。

「じゃ、この人形は、マイクになったり、スピーカーになったりするの?」
ルナさんは、人形の顔をのぞき込んだ。

「うん…。最近、リンちゃんに会ってなかったけど、さっき声が聞こえたときは、すぐ、彼女の声かなと感じたの」
ミクちゃんは言った。
「変な話、ちょっと懐かしかったわ」

2人はなんとなく、笑ってしまった。


●オカルト愛好家のわたしが謎を...

すると、そばで声がした。
「あら、また、変わったしゃべり方したんですか?この人形」

2人が振り向くと、そこにレイムさんが立っていた。

「あ、レイムちゃん。そうなのよ。妙なヤツなんだ。このはっちゅーね」
ルナさんがうなずく。

「ふぅん、そうですか。あ!」
レイムさんは、ミクちゃんを見て声をあげた。
「もしかして、ミクさんですか? あの、有名なギャル社長の!!」

「有名だなんて」
ミクちゃんは、照れてにっこりと笑い、挨拶した。
「初めまして」
レイムさんも挨拶する。

「そうそう。ミクさんは、デフォ子さんと一緒に、このはっちゅーね人形を作った方よ」
ルナさんが説明する。

「ですね。かわいい人形ですね。でも、また変なしゃべり方したの?」
ひと通り、さっきからの状況を聞いたレイムさんは、2人の横のイスに座って、人形を見つめた。
「ふぅむ。」

レイムさんは、腕を組んでうなずいた。
「ここはひとつ、オカルト愛好家のわたしが、謎を解いてみようかなぁ…」(^_^)


(次回に続く)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(165)  “はっちゅーね”の不思議 (その2)

謎めく人形の前に、自称オカルト研究家が登場。さて、謎は解けるのかな?

閲覧数:135

投稿日:2012/08/26 16:52:59

文字数:1,194文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は! 夏バテでダウンしていたので、ちょっと遅れてですが、拝読させて頂きました。

    なるほど、はっちゅーね人形のカラクリの糸口が見えてきましたね。貴方からの返信コメントにも書かれていたとおり、オカルトや超常現象とは違う、ちゃんとカラクリのある仕掛けみたいですね。

    しかし、オカルト大好きのレイムさんの登場で、そのカラクリがなにやらオカルトっぽい感じになってきましたね。私的にはウェルカムなんですが、そこら辺に関しては、貴方の手腕を楽しませていただくことに致しますね。

    それでは、次回を楽しみにしておりますね~♪

    ではでは~♪

    P.S 夏バテの影響で、私の小説の方も停滞中です。治ったら書こうかなと思います。プロ漫画家さんは、利き腕さえ怪我が無ければ書かされるわけで、大変な職場ですよね。

    2012/08/26 19:16:59

    • tamaonion

      tamaonion

      感想ありがとうございます!

      >オカルトや超常現象とは違う、ちゃんとカラクリのある仕掛けみたいですね。

      そうなんです。でも、いつだったかテレビのCMで、こんなのがありました。
      「不思議、大好き」

      世の中、不思議があるから、楽しいんですよね。
      そういう気持ちは、いつも持ってたいですね。

      >オカルト大好きのレイムさんの登場で、そのカラクリがなにやらオカルトっぽい感じになってきましたね

      そうですね。第六感とか、霊感とか、そういうものがありそうな人っています。

      論理では割り切れない、余裕というか、夢みたいなもの。
      そういうのをお話で表せたらいいな、と思います。

      また、感想を聞かせてください!

      P.S.
      夏バテ、お大事にしてくださいね。
      この夏の暑さは、異常でした。

      テンポのいいenarinさんの作品、いつも楽しみです。
      無理して書かれるより、楽しんで書かれるものを、期待しています。
      マイペースで、良い作品を、またぜひ!

      2012/08/26 23:33:22

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