「…さぁ、ようやく仕事も一段落したわ……
私が忙しくてあの人が会いに来てくれないのなら
私の方から会いに行きましょう…」
るかは笑いながら裁縫箱を片付けると
仕度に取り掛かりました。
「あの人驚くかしら…今の私を見たら何て言うかしら…
『もう浮気なんかしないよ』って言うかもね…フフフ」
るかは尚も笑いながら鏡を覗き込んでいます。
やがて仕度を終えたるかはお店を早めにたたんで
夕暮れの中をいそいそと出掛けて行きました。
行き先はあの人がよく散歩に行く薄野原です。
るかがそこへ行くとあの人の後ろ姿が見えました。
るかは笑いながら近付きますがあの人は気付いていない様です…
格子柄の赤い着物
菊柄の緑の帯
髪には蝶飾りの黄色い簪
あの人が好きだった女達と同じ―――
ほら私、貴方好みの女になったわ―――
どう?私『キレイ』でしょう―――――?
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もっと見る店に戻ったるかは裁縫箱を取り出しました。
「それにしても貴方も酷い人ね
私を見た途端『初めまして。こんにちは』だなんて
まるで私達他人みたいじゃないの。嫌な人」
るかは笑いながら言うと
最後にあの裁縫鋏を取り出しまして――…
「『だけど仕事は頑張らなきゃ』」
あの口癖を言いました。
「あら貴方、『こ...円尾坂の仕立屋 終幕
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るかに肩を叩かれた男は振り向きました。
そして――――
『 』
次の日の朝、
るかはいつもの様にお店を開ける準備をしていました。
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初めて会ったきっかけは偶然であったのにも関わらず、その相手との交流が長く続いたり、逆に運命だと信じていた出会いが実はそこまで大した事じゃ無かったり。
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*
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