●ぬいぐるみの「O・E・M」

「その人形のデザインは、誰がしてるの?」
「はい、デフォ子さんです」
課長の問いに、ルカさんは答えた。
会社の会議室で、ルカさんは、「ギフト事業部」の美里課長と話をしていた。

「ああ、そう。デフォ子さんね。じゃ、しっかりしたものが作れるかもしれないわ」
女性ながら、やり手の美里課長はうなずいた。

ルカさんが勤めている会社、ハミングスでは、
ヨーロッパやアメリカから、ぬいぐるみや生活雑貨、インテリア家具、カントリー雑貨などを輸入している。
彼女は、先日、テトさんたちから聞いた、ぬいぐるみの「O・E・M」の仕事を、会社に相談してみたのだ。


●クロミク 量産はじまる

テトさんやデフォ子さんが作る、“ミク人形”のシリーズ。
そのなかでとくに、「クロミク」のデザインが、大人気だ。
若い女の子や、男の子にも好評で、
あちこちから、“ぬいぐるみが欲しい”というリクエストがきている。

文具や雑貨を作っている、ゼロジー文具のソニカさんは、
テトさんやデフォ子さんに、「O・E・M」の相談をした。
そこでデフォ子さんは、友人のルカさんに話を持ちかけた。
「O・E・M」とは、他の会社に頼んで商品を作り、自分の会社の販売ルートで売るのだ。


美里課長は言った。
「うちの商品は、どちらかと言うと“かざりの多い”アイテムが多いわね」
「そうですね」
ルカさんは、うなずいた。

ハミングスではこれまで、大ヒットした、テディベアの「ローラ」や、
ヨーロッパのお菓子「スイート・アンおばさんのクッキー」など、
クラシック・タイプの玩具や、食品を輸入・販売している。


●夢がふくらむ

「うちの、ギフト事業部では、楽しくてユーモアがあるぬいぐるみも、やっていきたいと思うの」
美里課長は言った。
「デザイナーのデフォ子さんは、前にもいっしょに仕事をしたことがあるわね」
「そうですね」
「テトさんというアーチストの方も、ステキなモノづくりをされるみたいね。これからおつきあいしていくのも、いいと思うわ」
「本当ですか」
ルカさんは喜んだ。
「じゃ、私、さっそく彼女たちに連絡してみます」


“よかった。ゆくゆくはみんなと一緒に、オリジナル商品をどんどん作りたいなあ”
ルカさんは考えた。

“そうだ。クッキーなんかもいいなあ”
夢はどんどん、ふくらむ。
“うちのヒット商品「スイート・アンおばさんのクッキー」みたいな...
 商品の名前はもちろん、「テトおばさんの...」”

そこまで考えて、彼女は考えるのをやめた。
もし、そんな名前にしたら...

頭の中でテトさんが、彼女をにらんで、
髪の毛がぐるん、と回ったように思えた。ブルブル(((=ω=)))ブルブル

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌 (29) 楽しい商品を作ろう!

カイくん 「僕の出番少ないよー」

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投稿日:2009/10/31 11:34:21

文字数:1,151文字

カテゴリ:小説

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