かなりあ荘に戻ってきた俺たちは、することもないのでとりあえず外に出てみた。



すると―――――





「ふんふん、スコープの注文ね。今すぐ材料用意できる?」

「あ、明日になれば……元旦から申し訳ないんだけど……」

「へえ、いいじゃん縁起良くて! 明日は本店の方もすっからかんだから、まさしく来年最初のお客様よ! 腕奮っちゃうから、明日の昼頃にでもお願いねー♪」


ネルと雪りんごさんが楽しそうに話していた。その両脇にはゆるりーさんと茶猫さん、そしてその後ろにはこないだかなりあ荘に入ったばかりのちずさんも。


「それじゃねー! ……おっと、Turndog帰ってきてたんだ。雪りんごさんからスコープの注文受けたから、明日の昼頃部屋開けといてね―」

「おk、それじゃよいお年を」

「うん! あ、かなりあ荘の皆もよいお年をー!」

『よいお年をぉー!』


ネルがしゅるりと時空転移用PCの中に消えた後、俺たちは雪りんごさんに近づいて話しかけた。


「スコープ、貰うことにしたんだ?」

「あ、Turndogさん! ええ、ちょうどセールしてたので! ここはもらうしかないですからね!」

「茶猫さんやちずさんはまだポイント少ないからアレだけど、ゆるりーさんは何も考えてないのか?」


そう話を振ると、若干見上げる姿勢でにやりと笑った。

まさか。『アレ』を注文するつもりか、この子は……


「ふふっ。私も明日、『どっぐちゃんフィギュア』と『ハイスペックPC』を頼むことにしました!」



やっぱりかー!!

PCはまだしも、とうとうどっぐちゃんフィギュアを頼んだか。ある意味ではこの時を待ち望んでいたし、どっぐちゃん的には『とうとう来てしまったか』という面持だろう。


どっぐちゃんフィギュアにはある特性がある。どっぐちゃんは普段、俺の部屋とかなりあ荘の廊下、そして一階の部屋以外にはちょっとしたトラッププログラム(ネル製)により入り込めないようになっている。即ち、他の人のいる部屋には入れない仕組みになっているのだ。

どっぐちゃんフィギュアはこのトラップを解除することができるようになっている。つまりそれを装備すれば、ゆるりーさんはどっぐちゃんを部屋に連れ込んであんなことでもこんなことでも何でもできるようになるわけである。


「下心はないつもりですよ」

「どっぐちゃんの泣き声に反応してあのグミにすら襲い掛かった子の言うこっちゃないな」

「それはただの愛ですよ!」

「盲目的愛だな」


扉に激突したこともあるからまさに盲目。恋は盲目という言葉を体で表すゆるりーさんマジどっぐちゃんLove。


「それにしてもゆるりんてぃあ……やつれた?」


三人ともよく見ると若干生気が薄れている。


「あはは……バレマシタ?」

「やっぱり疲れてきちゃって……」

「もうすぐ終わりだって自分に言い聞かせて生きてるようなものでして……どっぐちゃんフィギュアはその疲労を紛らわすためでもあるんです」

「お、おいおい……あんまり根詰めんなよ?」


本気で心配になってくる。ちずさんもどことなく心配そうだ。


「皆さんどうもテンションが低くて……大分きてるみたいです……」

「むー……」


考え込んでいると、どっぐちゃんが小さく息を吐いて三人の前に立った。

そして意を決したように―――――


右手の緑のブレスレットを外した。


途端にどっぐちゃんの髪が猛烈なスピードで伸び始め、あっという間に3人を呑み込んでいく。


『もふわっ!?』

「受験生たるもの、体調管理も大切よ!! Turndogも去年のこの時期どんだけ体調崩しかけたことか! 今はしっかり寝ときなさい!! 明日も少しぐらい休んで、それから頑張んなさい!!」

「……ごめんね、どっぐちゃん……」

「……別に、あんたたちが心配だったわけじゃなくてさ。誰一人欠けちゃいけないのよ、『かなりあ荘』として在るには。だからあんたたちには、桜咲いてほしいだけ」


そして包み込んだまま三人を持ち上げ、静かに揺らしながら、小さくつぶやいた。


「……どっぐちゃん秘技『どっぐせらぴー』。今は静かに眠りなさいよ」


そのままゆっくりと降ろし、髪を元通り縮めた。そこには大分すっきりした顔の三人が。

どっぐちゃんの髪は色々と万能だ。敵を締めあげることも。……癒しの香りを漂わせることもできる。


「ほら、散会! よいお年を、ってね!」

「う、うん!」

「……今日はもう寝よっか、ゆるりー」

「そだね……それじゃTurndogさん、どっぐちゃん、よいお年を」

「おう、よいお年を」


4人はそれぞれ、自分の部屋に戻っていった。


「……ホントさ、何だかんだでお前って面倒見いいよな」

「何言ってんのよ。あたしはただ、へばってるやつを見てらんないだけなんだから」

(それを面倒見良いっていうんじゃねーのか……?)





小さく苦笑いを浮かべながら、俺とどっぐちゃんは部屋へと戻っていった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町!Part11-5~年収め:ゆるりんてぃあ+ちず~

年収め挨拶も終盤です。
こんにちはTurndogです。

かなりあ荘全員が受験生組の味方だよ!
どっぐちゃんはこの間かなりあ荘の庭に桜の若木を植えたそうです。
咲けばいいね。

あとあゆみんさんがいないのはまだ出演許可をとってなかったから。
許してくれたとは思うけど、やっぱ許可取ってないと色々と心配だからねwごめんちょ☆
しかしゆるりんてぃあにあゆみんさん入れてカルテットにするとなると、なんてグループ名だろう……?
……『ゆるりんてぃあゆみん』?
長いww語呂悪いww
うーんww

あとちずさんの仲間はずれ感が半端ない。
ごめんちずさん、今度出す時はもちっとマシな立ち位置にするね。

閲覧数:142

投稿日:2013/12/31 23:27:18

文字数:2,104文字

カテゴリ:小説

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