「マスター、なんか嬉しそうですね。」
部屋から戻ってきたマスターを迎えたのは、ミクだった。
MEIKOはテレビに夢中だし、リンとレンは仲良く寝てるしで、部屋には不思議な静寂が流れていた。
「そう?どっちかっていうと、傷心なんだけどね。」
苦笑しつつ、ミクの質問に答える。
「ミク、俺、ちょっと今日マスターとお散歩行ってくるから。」
キョトンとしている妹に、KAITOはたった今決まった今日の予定を告げた。
「マスターと?いいなぁ、私も行きたい。」
だって、みんな自分の世界に入ってるんだもん。
頬を可愛らしく膨らませ、ミクは駄々をこねる。
「ミク、我が侭はマスターを困らせるだけだよ。」
そんなミクを、KAITOはやんわりとたしなめる。
「ミク、ちょっとこっちおいで。
KAITO、女同士の秘密の会話だから、ちょっとお待ちなさい。」
ミクを引き寄せ、KAITOを引き離す。
「…そう、ですか。」
「…という訳なの。理解した?」
ミクの細い肩に手を置き、マスターは訊ねる。
「はい、マスター!
私、お留守番します。」
一体どういう説得の仕方なのか、二人がKAITOの元に来たときには、ミクはすっかり大人しくなっていた。
マスターの部屋から、マスターのものと思しき鼻歌が聞こえる。
マスターは何をしているんだろう?
どうせ、ただの散歩。そんなに気を使う事があるのかな?
「KAITO兄、マスターには思う所があるんだよ。」
いつの間に起きていたのか、レンがKAITOの肩を叩き、言った。
「レンは知ってるのかい?」
疑問でいっぱいいっぱいの顔をして、KAITOはレンに訊ねる。
「その内分かるって。じゃ、オレはまた寝るから、おやすみ。」
KAITOよりも大人っぽい対応に、KAITOは内心レンにマセガキめと悪態をつきつつ、お休みと答えた。
「お待たせ、KAITO。今日は約束が潰れた分、いっぱい付き合ってもらうわよ!」
丈の短いスカートをひらひらさせ、マスターは高らかに宣言した。
「街にでも行くんですか、マスター…。」
とりあえず、俺はアイスが欲しいです。
いまいち状況が理解できない様子のKAITOだったが、マスターはそんなKAITOの様子は気にもせずに玄関へ向かった。
「マスター、そんなことしてると、…見えますよ?」
溜め息をつき、KAITOは言った。
「KAITO。今何か言った?」
KAITOに振り返り、マスターは呟く。
「ま、マスターは今日も美しいと言ったんですヨ!」
肩を思いきりびくつかせ、KAITOは答える。
「そう。ならいいけど。」
KAITOに向けていた視線を戻し、マスターは服を物色し始める。
「はぁ、どうしてこうなったんだろ…。」
KAITOは溜め息を一つつく。
「KAITO、男に二言はないって言わなかったっけ?」
KAITOには振り向かず、マスターは声だけを返した。
「えっ!そ、それは、マスターが…ああっ、いえ、なんでもありません!!」
蛇に睨まれた蛙のように、KAITOはまた肩をびくつかせ、マスターの問いに答えた。
「KAITO、行くよ。」
はあ。とため息をひとつ吐き、マスターはKAITOの手を握り歩き出す。
「あ、はい…。」
男らしいマスターに手を引かれ、KAITOはなんともいえない気分を味わいながら、されるがままになっていた。
それから、マスターは憂さ晴らしと称して、KAITOをこちらの店につれて来ては着せ替え人形にし、あちらの店でもKAITOを着せ替え人形にして楽しんでいた。
「マスター、あと何件回るんですか…。」
軽く5件は回ったところで、KAITOが言った。
「そうねぇ…、私が飽きるまで?」
それはつまり、マスターが飽きるまで俺は着せ替え人形なんですね、わかります。
「何涙を浮かべて呟いてるの?今度はあんた、荷物持ちよ。まともな男手はあんただけなんだから。」
もしかして、あそこで電話が来てなくても、俺はここに居たんだろうか…。
「って、マスター、男手ならレンだって居るじゃないですか。」
ふと沸いた疑問をマスターにぶつけてみる。すると、マスターはしれっと答えた。
「だって、レンはあんたと違ってか弱そうじゃない。」
そうか、全てイメージで選んでたのか!いくらレンが14とはいえ、14ならある程度腕力あると思いますが!ボーカロイドといえどね!
「そ、そうですか…」
余計なことを言ったら、後で大変な目にあう気がするので、何も言わないことにした。
「じゃあKAITO、行くわよ。」
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氷雨=*Fortuna†
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フォルトゥーナです。続き待ってました!
駄々をこねるミク……可愛いですね!
レンも大人っぽくて良いです……イケレン!!
『とりあえず、俺はアイスが欲しいです。』のKAITOの本音?につっこみました(笑)。
続きが楽しみです!
2009/04/09 22:24:32