-狂気-
手にかけられていく強い力と、自分の手で愛した人を殺そうとしている恐怖、ただその二つが、レンの理性を奪っていく。この間のようにリンが声を出しているなら、まだ安心感を持てるかもしれないが、リンは苦しそうに顔をゆがめるだけで声を上げることすらできないらしい。
男のレンに比べて非力なリンは、どれだけ力を加えてレンの腕を跳ね除けようとしても、まるで歯が立たず、体力を消耗していくだけだった。
「何故、こんなことをする?私にはそれがわからない」
そういってレオンに聞いたのは、ルカのほうだった。
「何故…?それは…そうだな、まあ、簡単にいうなら…。『世界征服』?取り敢えず、ハーフに対する偏見をなくしたいだけだからね。そうなった後はどうだっていい」
「…そうですか。ならば、私はそれを許すわけには行きませんね」
「別に、君に許してもらうつもりはないね」
「私は、賢者さまに使える使い魔として、この世界を汚すものは誰であろうと許さない。いいか、よく聞け。貴様は大ばか者だ」
そういうと同時に、ルカは素早く呪文を唱え始めた。
きしむ床。
その床のうち一部に、何か違う音を見つけ、メイコはその部分のカーペットをめくり、きしむ部分をよく探してみた。すると驚いたことにそのぶぶんは正方形に開く扉のようになっていて、細長く窪んだ取っ手のようになった部分にそっと手をかければ、少しかび臭さとともに陰気な空気がただよってきた。
中からは少女と思える話し声が聞こえてくる。
メイコはゆっくりと中へ体を滑り込ませた。
三階からの景色は確かに良いが、今はそれを楽しんでいる余裕など無い。
さっきの声の主は、何者なのか?そのことだけが、ランの頭からずっと離れずにあの声が、あの言葉がずっと頭の中で反響していた。
心配そうにしているカイトのことなど目にも入らず、頭の中で考えても考えてもその答えは出なかった。
いきなり、カイトが身震いをして吹き抜けの部分から下の階を見ようとしているようだ。
「カイト兄、どうしたの?」
「…いや。今、強い妖気に似たものをかんじて…。どんどん、膨らんでいく。どこかレンの気に似ているような…。まってて、ちょっと下の階を見てくる。そっちを探してて!」
「わかった」
そういうとカイトは素早く吹き抜けの手すりに手をかけて、飛び降りるように勢いよく身を乗り出して、そのまま二階へと飛び移るように移動した。
地下室へと続くその階段を下りると、そこはカイトたちの住む館の地下室とほぼ同じつくりになっていて、牢の前には薄い金髪のストレートの少女が牢の中へ向かって何かを話しているようだった。
「――貴方、誰?」
「!…そちらこそ、他人の家をずかずかと…なんなのでしょう?それに、人に名を尋ねるときは、自分から名乗るものです」
「…私はメイコ。貴方は?…その牢の中…」
「私はローラ。この館の薬師です。牢の中…みたいのですか?」
「いいえ、ここからでもよくわかる。そこにいるのは――リンの友達の子達ね」
「わかっていらっしゃるのならば、お話は早いでしょう。…お手合わせ、願えますね?」
「…お手柔らかに」
そういうと、メイコはそっと身構えた。
久しぶりにルカの魔法が、レオンに向けて光の矢が十ほど降り注ぐように発動させられた。
その瞬間に、レオンの魔法がとけ、ルカも自由になった。しかし、レンにかけられた魔法は解けず、まだリンの首に手を回したまま。
いきなり、レンがその場に倒れ、リンが抜け出す。
体中が、とてつもなく熱い。
呼吸をするのもつらくなるほどに。
「はッ…はぁ…ぁッ…」
「レン、どうしたの?レン!!」
「あ…ッぅぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」
「レン!」
心臓がドクドクと脈を打つ。
その光景に、レオンがその場から動かずにそっと目を細めた。
「ククク…ゾクゾクするね。どうなるの?ねえ」
「いけない、リン様、下がって!」
「レン、どうしたの、レン!?」
ベッドの上でもだえ苦しむように頭を抱えてうめき声を上げるレンに、リンは駆け寄ろうとするが、ルカがそれを許さない。
細いリンの腕を、ルカがぐっとつかんで離さないのだ。
そこに、カイトの声が飛んできた。
「皆、そこから離れて!早く!!」
「リン様!」
「レン!!!」
「ククク…」
最期に、ドクンッと心臓が大きく脈打ち、レンの理性は絶対的な力によって別の人格に支配された。
美しい長刀を振りながら、メイコは舞う。
薬師ということだけあって、ローラは多彩な薬を使ってくるだろうコトは、メイコにもよくわかっていた。けれど、所詮薬は薬、吸わなければいいだけのこと。
「残念ながら、薬はすわなければ良いとは限りませんよ」
「な――ッ」
そういうが早いか、ローラは首から提げた小さな瓶の中の液体を少し、メイコのほうへ向けて飛ばした。
「その薬は、多量の酸を含んでいます。さあ、早くどうにかしなければ、服を溶かした酸が、体も溶かしてしまいますよ?」
「チッ」
刀でスカートの端を切り落とした。
こうしていれば、いくらかは持つはず――。そのときだった。
「きゃあッ!?」
ローラの首から提げた瓶が、真ん中からスパッと切れていたのである。無論、そこからは薬があふれ出て、ローラは怯えてどうしたらいいのかわからなくなっていたのだ。
瞬間的にメイコは瓶を首から切り落とし、肩にかけていた服を切り裂いて、それを脱がせると、一瞬でローラを少し離れた場所に移動させた。
「大丈夫?」
「…ありがとうございます」
「誰がこんなこと…」
「何で助けるかなぁ?アタシがわざわざチャンスをあげたのにっ」
そういってあらわれたのは、緑のショートヘアーに黄色いTシャツをきた女性だった。
鏡の悪魔Ⅲ 13
こんばんは、リオンです。
部活漬けで死にそうなリオンです。
そろそろ消えて良いですか?
今日の要約。
『そういえばメイコは賢者だった』
もはやメイコは特にいる意味合いが感じられなかったので、今回ちょっとやってもらいました。
で、ちょっと予告。
この本編が終わった後に、ちょっとしたおまけを投稿します。
内容としては、雑談と、書いている中で案としてはあったけれど流石に自重してやめた内容とかを書いていくつもりです。
お楽しみにッ
じゃあ、また明日!
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リオン
ご意見・ご感想
みずたまりさん
あれ、また吹いたんですか?ハンカチ足りないですよ?
…それ、レンにいったらレン怒るの通り越してなきますよ。私の中でこの物語の中のレンはまだまだヘタレンなので(汗)
それじゃあ、リンとレンに感想を聞きますか。
レ「…俺、この人キライ。ぶっ飛ばされろとか言うし。帰る」
リ「怪力になんて、なれないよ?でも、今ならできる気がするな★」
レ「それ、俺に向けんなよ。あっちにやってこいよ」
リ「五月蝿い。問答無用★」
レ「てめぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!」
あ、あれです。
本当は裏話があってですねぇ。
これはリンが生まれる前、カイトがメイコの使い間だったときのことなんですけどね。
最初は、メイコは旅をしていたんです。あ、酒を求めて三千里とかじゃないですよ。
で、ですね。はじめはメイコも賢者なんかじゃなく、旅人だったんです。
けど、ちょっとしたことから、今の街を助けることになってしまいまして…。
この町の権力者にはそれぞれ称号があってですね、賢者は上から三番目くらいの階級なんです。
あ、これもおまけに乗せるか。もっとちゃんと考えて。(←手抜き)
人柱アリスのメイコが浮かんだなら、貴方は私とお友達♪
私も人柱アリスの衣装のメイコのつもりで書いてみたんです。直接はふれてませんが。
部活ですか?
一応美術部ですよ。絵もそんなにうまくないですが…。
全員でパーツを作ってそれをくっつけるんですが、それ、絵の具が苦手でぐちゃあってなったらどうしようと…。消えてきます。
ダメなんですか?(←もう今にも泣きそうな目)
おまけのほうに力を入れることにしました。もう面倒…なんでもありません。
ありがとうございますッ
がんばります!!
2009/08/19 20:57:00