「ミクさーん!」
「こっち向いてー!」
ここは学園内廊下。
そこで歩いていた美少女の名は初音ミクという。
容姿端麗、それに加え文武両道。正に完璧なのだ。
先ほどから聞こえる声援も全て彼女のファンによるものだ。
「えへへ、皆、ありがとねーっ!」
ミクが放ったウィンクに、その場にいた者たちは甲高い声を上げていく。
彼女は性格も良く、男女共々人気があり、その人気や自分の能力を自慢しているわけでもない。
彼女の周りは、「人気が合っていいなー」より、「お疲れ様」と思うものがほとんどだ。
だが彼女自身は―――。
「ただいまぁ……。」
疲れたなぁ、と自室のベッドに転がる。
「はぁ、皆々五月蝿いし……。今日だけで告白も3回。でも少ない方か……ま、ちょっと邪魔だし、ウィンクとかしただけであれだもん。騙されやすい人多すぎだよ……静かになってくれればそれだけでも十分なんだけどなぁ……」
利用できるからいいケド、そういってミクは眠りについた。
「おきてください、アリス」
「……んん?…ここどこぉ?」
眠りは見知らぬ少年に見知らぬ場所で覚まされた。
辺りを見回すと、なにも無い草原にいることが分かった。
「なかなかおきないのでこちらからこさせていただきました。さぁ、たって」
言われて立ち上がると、少年の身長の低さがよくわかる。
「さて、こんにちは。ぼくはゆめといいます。あなたには……」
「ちょ、ちょっと待って!……えっと、君、今「夢」って言った!?よね!?……そうだよね、これは夢だよね」
安堵の表情を浮かべる。
それに対して夢はハァ、と溜息をついた。
「いいえ、げんじつですよ。……では、たとえば、あなたのまわりで、ひとがいなくなったりしてませんか?」
「……んー、3年のメイコさんと始音先輩くらいかな?…って、君は知らないよね…」
「あぁ、そのふたりならあいましたよ。けんごうと、うたのうまいかたでしょう?しかし、ふたりはもういません」
「……え?」
剣豪と歌の上手い方……あの二人に当てはまる。
なんで二人を知っている?ここに来ている?いつだ?だけどもう居ない?
疑問が、ミクの頭で渦巻いた。
「まぁまぁ。そんなことより、ほんだいです。あなたはこれより、したいことをすきなだけしてください。かんたんでしょう?」
それを聞いたミクは、「したいこと」を考え出した。
「んー……あなたってここの支配人っていうか王様みたいな存在?てか、ここに人なんて私達意外に居るの?」
「いえ、ここにはしろはありますが、おうはいません。なのでもちろんぼくでもありません。あ、ひとならちゃんといますよ?まちがあるので。ぜんぶ、つくりものですが」
造り物なのは当然じゃないのか?なんてミクは思ったが、それより言いたい事があった。
「へぇ……。じゃあ、私、王になりたいな。全てが私の手の中にあって、人々からの人気も得られるけれど、顔を見せるくらいで、押しかけとかは来ないでしょ?色々と大変かもしれないけどね」
「………そうですか。いいですよ。あなたはじょおうです。ちょっとついてきてください、しろまでごあんないします」
夢のあとをついていくと、森の目の前まで来た。
さっきまでなかった気がするんだけどな……まぁいいか。「夢」と名乗るくらいだし、私を女王にさせようとする位だ。何でも出来ちゃうんだろうな、きっと。
そうミクは考え、自分で納得させた。
ふいに、夢が森に入るという前で立ち止まる。
「…………彼だ」
「へ?どうしたの、なにかあった?」
心配するように覗き込んできたミクを一瞥し、先ほどとはどこか違った、心からの笑顔で今まで来た道の方………ミクへと振り返った。
「ごめんなさい。すこしようじができてしまった。みちは、このもりをまっすぐいき、ぬけると、しろがみえます。そこへむかってください。あ、とちゅうでいばらのこみちがありますが、かならずとおらずによけてください。それでは、がんばってください、クローバーアリス」
そう言い残し、フッ、と夢はどこかに消えた。
「おぉっ、消えた……!…じゃなくて、あの子消えたら私一人ぼっちじゃん!てか、アリスって誰かな……?人違い?まぁ、王にしてくれるんだし………夢で、すぐ消えちゃうんだろうけど。じゃ、森に………げ」
森に入ろうとすると、そこには終わりが見えず、木と草が生い茂った道(?)が続いていた。
「これは結構歩くかも……頑張んなきゃ、ホントに」
前へ進もうとした、その時。
「……ねぇ」
「ふぇえっ!?」
「……そんなに驚かなくてもいいんじゃないかな、クローバーアリス」
級に話しかけられたら誰でも驚くに決まってるだろう、と思いながら振り向くと、そこには自分と同じ緑の髪の、とても整った顔立ちの青年が立っていた。
目測だが、年齢も同じくらいだろう。
これなら、タメで話しても大丈夫そうだ。彼もそうしてるし。
「……クローバーアリスって呼んだ?それって私?」
「うん、君。俺は元クローバーアリスだったから」
彼に対し、ミクは今まで自分に寄りついてきた人たちには無いものを感じた。
「えっ……と、その元クローバーアリスが何の用、かな?」
ナンパ?……って、んなわけないか。こんな所では無いよね。そんなの、きっと。
「え――っと……あ、道に迷ってるんじゃないかなって。森に入ろうとしてる所でしょ、君。」
「それは夢さんに言われたの。この先に、私が望む場所があるの」
「………町?それとも城?あ、今茨道なら通らない方がいい」
今は茨道を通ってはいけないなら、昔はよかったのだろうか?…関係ないか。
「あ、城だよ!……それまでの道、知ってるの?」
「うん、分かるよ。……案内しようか?」
「えぇ、頼むね。えぇと……名前は?」
「………ミクオ。クオって呼んで」
「あ、私はミク。クオって呼びやすくていいね。なんか私と名前似てるし。…じゃあ、連れてって、クオ君」
その声にクオは優しく微笑むと、前を歩きだした。
ミクは、その笑顔に頬が熱くなるのを感じた。
(え?えっ?何?すっごい……胸がドキドキしてる……)
これは、恋というものだろうか?
されるばかりで、自分からしたことのない恋とは、これか…?
まさか、彼が相手とは。胸はまだ高鳴っていた。
俗にいう「一目ぼれ」というやつだろうか?……何か違う気がする。
顔がかっこいい人も、性格のいい人もたくさんいた。その中で、私は彼が好きになったのか…。
「むぅ……。」
「ん、どうしたの?」
「え、いや、なんでもない……ごめんね」
「なんで謝るのさ。……まぁいいや」
彼がこちらを向くたび、鼓動が速くなる。
ミクは、彼の事にも、そしてこれから起きることにも、心躍らせていた。
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ご意見・ご感想
雛菊
ご意見・ご感想
ミクがキタ━(゜∀゜)━!
リア充カップル完成なるか・・・!?
むぅ・・・のミク可愛い!!
お城で何が起きるか気になります!!
2011/10/02 15:39:19
アストリア@生きてるよ
てかもう完成です。リア充!
おぅおぅ、かわいいですか!ミク!
お城ではあんなことやこんなことが……b
2011/10/03 15:20:20
シベリア
ご意見・ご感想
あぁ、ここにもリア充が…((殴
カイト先輩(´ノω;`) 今から先輩に会いに行くからね!待っててね!((やめれ
クオはおとなしいクールちゃんだねwミクの気持ちわかるぞ!そりゃあ惚れるよなw
アストリアwwクオならいいのかwwミクに惚れてもいいのよ?リンちゃんのことはうちに任せt((
彼…だと!?まさかカイトが帰ってきた!?((もうカイトは諦めろ
2011/10/02 10:05:34
アストリア@生きてるよ
このリア充カップルなら大好きだ!((((爆
カイトはもう諦めろ、シベリア!もう何処にもいないんだ……!ww
そうだね、この話のクオはクールちゃんだよんww惚れて当然なんだよ、ミク!!
だってクオかっこいいもん!!レンには劣るがな!
誰がミクに惚れるか!((((ごめんなさい
リンちゃんの事はじゃあ間を取ってうちが……((((((ぇ
だからwカイトはwあwきwらwめwろwww
2011/10/02 10:55:24