エルメルト攻響旅団基地司令室。普段はだだっ広い室内で初音ミクが嫌々仕事しているだけの、あからさまな建物の無駄遣いとしか思えない光景があるだけの場所である。
ネギを生やしてはネルに怒られ、ネギを収穫してはハクに説教されるという醜態も演じた。
この司令室が今、第7機動攻響旅団始まって以来の、ちゃんとした雰囲気を醸しだしている。
なんと、旅団付の大隊長6名とその他諸々8名を合わせた旅団幹部14名が終結しているのだ。ほぼゲリラ上がりのネルだが、こいつら1人1人が100名だの500名だのを任されてるのだ。ウチラのシマでは、かなりハイクラスな連中がキチンと制服決めて威儀を正してる。正直、ちょっと感動する。
「はい時計合わせ、各自1630に合わせ。5,4,3,2,1,定刻,1,2,3,4,5」
声の主は「VOCALOID」亞北ネル准将である。厳かな顔付きで、真面目に仕事をする積もりの顔は、むしろ旅団の中では普通だと思われている。
横から別な声がした。
「いいかしら?それでは、作戦会議を開始します」
「あ、司令。これ時計合わせといたんで、付けて貰えますか」
「う。サンキュ」
亞北ネルが初音ミクに時計を差し出す。最初から、2つしていた一本を初音ミク用として合わせていたのだ。
――――――――――。
おっとやべぇ、心の声が漏れそうになった。ふと将校の一人と目が合い、物凄いガンをつけられた。いや分かってるからと、アイコンタクトで返事をする。こういう軍隊、マジ勝てる気がしないと、今なら良く分かったのにな。
ミクが時計を腕に付けている内に、弱音ハクが本題に入った。
「では、作戦概要を述べます。本日0730頃、当旅団付機動攻響兵鏡音レン大佐が敵対国所属のUTAU連合攻響兵重音テトと遭遇、当旅団に留置されている捕虜の暗殺を仄めかすメッセージを伝達して来ました。来る本日2200時点において捕虜の処遇について引渡しの決定がなされていなければこれを射殺すると解釈できる内容で、当旅団としてはこれを攻撃予告と見做し、適切に対応するものであります」
うん。亞北ネルは思った。その隙が無い文章、好きじゃない。テトが啖呵切って来たからお前等寝ずの番な。で、ウチのシマじゃ通ったのにな。
「不明な点が無ければ、各隊に通達した事項の確認を行いたいと思います」
物凄い音響で、紙のめくれる音が室内に響いた。14名の将校が連れて来ていた副官とかが、なんか30人くらいいるのだ。つまり私らと合わせて、総勢50人位がいて、そいつらが旅団で上から数えたらトップクラスみたいな連中ばっかりなのだ。
AKITANERU――――――――――これ、今襲撃されたらヤバくね?
YOWANEHAKU――――――――――はっw、その時は猫村司令にお願いしていますので♪
HATUNEMIKU――――――――――あれ?2200までに来たら本気出していいってメール来たけど?
YOWANEHAKU――――――――――……うまい。
AKITANERU――――――――――待てや。猫村殺す。
NEKOMURAIROHA――――――――――あ?かかってきいや。お茶漬け40リットルで足りるか?
AKITANERU――――――――――お前んとこのド田舎ではお茶漬けとガソリンの区別もつかねんだな?ああ、用意して待ってろよ。
NEKOMURAIROHA――――――――――半日で食わせたるわ。吐かん奴にぶっこむとか、楽やしな。
AKITANERU――――――――――てめえが用意した玉露で松坂牛煮て
YOWANEHAKU――――――――――ビオトープとバイオマスのどちらか選んで頂いて宜しいでしょうか。
「では、第1普通科より、旅団本部と申し合わせた内容についての報告を行って宜しいでしょうか」
「手短に」
ミクがそれっぽく応える。この集まりは旅団本部が隷下の部隊にどんな指示をしたかを、全部の部隊が共有するための集まりだと、ハクがクドクドと説明してくれた。理屈は分かるが、良く分かるが、この旅団で一番偉いミクが理解してないのといろはがムカツクので、時折忘れそうになる。
「全体に於いて了解した概要に対する意見として、第1普通科より具申いたしますが、――――――――――」
この後は、「VOCALOID」の定員が割っているのは知っているが、普通科の定員も割れているのを考慮してほしいとか、そういう内容だった。今作戦に支障をきたさないという頭言葉と共に、発言した全員が言ったので、ちょっと軍の人材不足という問題を思い知らされた。そんな話、将校でなかったら確実にどうでもいいと思うのが、亞北ネルの素直な感想だった。
機動攻響兵「VOCALOID」 3章#2
作戦会議っぽい雰囲気のフェーズです。(11/16亞北ネル中将→亞北ネル准将に訂正しました)
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