●真似っこが出たの?


「なかなか、売れ行きがいいみたいね」

美里課長の言葉に、ルカさんはニッコリとうなずいた。

「ええ、ナチュラル・ハウスでも、原宿のキディディ・ランドでも、売り上げはトップみたいです」
そう言って、手元にある“天使の柄”のパスケースをつかむ。

「そう、それはよかったわ」
美里課長は嬉しそうだ。

ルカさんの勤めるメーカー「ハミングス」の会議室。
雑貨好きの人にいま好評の、「メグ・ハミング」の雑貨を並べて、2人は話し合っている。

「でも、ちょっと気になることがあるんです」
ルカさんが切り出す。
「あら、何?」

「この間、このデザインをしている、サカモトさんから聞いたんですけど」
ルカさんは、ちょっと小声になって言う。

「天使のデザインの雑貨で、うちの商品に似たものがあるそうです」

「あら、そうなの?」
美里課長は、目をちょっと見開いた。

「それが、ちょっと“パクられた”…っぽいんです」
「あら」
課長は、ちょっと曇った表情になった。

「このシリーズのライバル商品は、テトさんの新作だけかと思ってたけど。他にも、何か出ているの?」
「ええ。でも、テトさんは、真似をするような人じゃないからいいけど」
ルカさんは言った。

「他に、真似っこが現れたとなると…いやだなあ」



●私のは、悪魔柄よ!


その頃。

「そろそろ、商品のサンプルができる頃なんだ」
店のシャッターを下ろして、戻ってきたモモちゃんに、テトさんは声をかけた。

「ふぅん、楽しみねえ。やっぱり天使の柄にするの?」
モモちゃんはたずねた。

「ううん、ルカさんのところが、天使柄をメインにやっているからサ」
テトさんは、机でコーヒーを飲みながら答えた。
「私は“悪魔柄”をメインにしているのよ」


さきほど、閉店したばかりの、モモちゃんの店「カフェ・ギャラリー“ゆうひ”」。
ちょっと前に、店にやってきたテトさんが、店内でそのまま話しこんでいる。

「え、悪魔柄?」
「うん、お茶目な悪魔の女の子の柄でね。それに、カイさんをイメージした、ダメな天使を、からませようと思って」
2人は、顔を見合わせて吹き出した。

「そうか。テトさんは“悪魔”、ルカさんのところが“天使”ね。ぶつからないよう、“すみ分け”するってワケね」
モモちゃんは言った。



●ちょっと気になることがあるの…


「うん。美里さんとルカさんのとこには、私もお世話になってるからさ」
テトさんは言った。
「ちがうテイストなら、どっちも刺激しあって、いいかなとも思うし」

「そっか。テトさんとルカさんは、いい意味でライバルだね」
モモちゃんは、うなずいた。

「でもね、ちょっと気になることがあるの」
そう言うと、モモちゃんは店内で開かれている、絵の展示コーナーを指さした。

それは、デザイナーの霧雨さんのイラスト展だった。

そこには、いろんな絵に混じって、2枚の天使の絵が掲げられていた。

1枚は、「天使のハミング」という題の絵。天使が空で、踊っている絵だ。
そして、もう1枚は、「天使のピクニック」。丘の上で、お弁当を広げ、ランチを食べている、天使の絵が描かれていた。

それを見た、テトさんは、目を見開いた。
「ありゃー、これ、ルカさんの商品に、そっくりだねぇ」(ノ゜ρ゜)ノ

(part8に続く)

ライセンス

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玩具屋カイくんの販売日誌(135) 天使と悪魔と、また天使? (天使の雑貨とバッグ~Part7)

悪魔と天使と、別の天使。これは、どうなっていくのでしょう?

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投稿日:2012/01/03 21:27:01

文字数:1,403文字

カテゴリ:小説

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