※諸注意
・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』

恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです

上記が許せる方は、自己責任でスクロールして本編へどうぞ








☆☆☆☆☆





「逢いたかったよ…シノブ!!」
「えっ!!??嘘、…瑞樹!!!!!?????」
玄関先で見知らぬ男が、篠武さんを愛しそうに抱きしめている。
一体これは、どういう状況だろうか。
今、この視界に映し出されている光景が…オレには全く理解できなかった。


シャングリラ・第十二話~波紋~

SIED・KAITO


「シノブ、シノブ、」
「ちょ、苦し…!!痛い痛い、瑞樹…もっと優しく…!!!」
男の腕の中で身を捩り、抗議の声を上げている篠武さんだが、その表情は至って穏やかなものだった。
この行為が、決して嫌なものではないと物語っている。
「あ…ゴメンね?久しぶりに逢えて、凄く嬉しかったから…、直接逢うのって、何年ぶりだっけ?」
「んー、三年ちょっとだな、」
「もうそんなに!!??…ゴメンね、もっと早く帰ってくればよかったね、寂しい思いさせて…本当にゴメンね?」
「…うん、」
ニコニコ笑う男が、篠武さんの髪を優しく梳くと、一房手に取り口づけた。
意味がわからない。この男の言葉も、行動も。
それは誰ですか。貴女とどんな関係ですか。どうして簡単に触らせるんですか。何故笑ってるんですか。
様々な疑問が、オレの中を埋め尽くしていく。
同時に湧き上がる、たくさんの負の感情が、心を荒く波立たせ…とても、嫌な気分だ。
ああ、オレは多分…この男に『嫉妬』している。

☆☆☆☆☆

「全く、迎えに行くから待っててくださいって、連絡したじゃないですか。なのに、タクシーで帰ってきちゃって…おかげで行き違いになりましたよ、」
食卓を囲み、北澤さんがむくれながらハンバーグを頬張った。(結局、ロールキャベツは却下になった、)
この研究施設の所長さんが、海外出張から帰ってきたところを迎えに行ったはずなのに、すっぽかされたらしい。
先ほど遅れて部屋にきて、以来この調子だ。
「ごめんなさい、…だって早く篠武さんとカイト君に会いたかったんですもの、」
一方の所長さんは、悪びれた風もなく笑顔で食事を楽しんでいる。
ふわふわした蜂蜜色の髪が、小首を傾げるのに合わせて揺れた。
「でしたらせめて、連絡の一本もくださいよ。で、所長…こちらの方は?」
所長さんが連れてきたこの男を、北澤さんも知らないらしい。
どちらかと言えば美麗な顔立ちをしている、穏やかそうな雰囲気を纏うこの男の素性。
…というよりも、篠武さんとの関係が、どういう類のものなのか。
聞くのが怖くて、オレは少し緊張した。
「あ、自己紹介が遅れました。ボクの名前は五十嵐瑞樹、シノブの義理の兄です、」
にこやかに、愛想よく笑う男…五十嵐さん、で、いいだろうか?…の言葉に、思わず目を見開く。
篠武さんの、義理の…兄!?
これは…恋人でなくて安心、してもいいところなのか?いや、安心ってなんだ。大体篠武さんは、恋人は作らないって…。だけど、兄でも義理なら結婚だってできるんじゃないか?
ダメだ、混乱していて思考がうまく働かない。
「え、ええええ!!!???篠ちゃんのお義兄さん!!!???…って、あれ?でも…五十嵐って、まさか…!!!」
「うふふ。そうよ、瑞樹は私の実子なの。篠武さんは養女だから、瑞樹は篠武の義兄で、篠武さんは私の義理の娘なのよ、」
得意満面で胸を張る所長さんの話の途中で、数日前に篠武さんから聞いた話を思い出した。
確か、篠武さんが十二歳のとき両親が亡くなって、所長さんに引き取られたとか。
それなら、五十嵐さんと親密なのも頷ける。
…理解はできても、納得はできないが。
「所長、こんな大きなお子さんがいたんですか!!しかも篠ちゃんが養女…初耳ですが!!??」
「あら、言ってなかったかしら?」
「重ねて言いますが、初耳です。遠縁としか…、」
「加奈さんは、オレの母さんの遠い親戚なんだ。…別に、わざわざ言い触らすことでもないだろ?」
「だけど…、」
「ふふふ。シノブは秘密主義者だからね、」
「そんなんじゃない、ただ話すのが面倒くさいだけだ、」
いや、オレも篠武さんは結構な秘密主義者だと思う。
「…あの、篠武さんは瑞樹さんと、とても仲がいいように見受けられますが…。義理とはいえ、一般的な兄妹も、そんな感じなのですか?」
聞きたくない、でも聞きたい。
しばらく葛藤していたが、思い切って切り出した。
「ん?世間様はわかんないけど、…オレと瑞樹は赤ん坊の頃からの付き合いだからなー、」
「そんなに昔から、ですか?」
予想以上に二人の深い間柄に、複雑な思いが脳内を駆け巡る。
「うん、母親同士が凄く仲がよくてね。多分、ボクたちは、生まれる前からの付き合いじゃないかな?だから、シノブのことは何だって知ってるよ、」
「…『何でも』…?」
人の笑顔に、カチンと来たのは初めてだった。
今日は、新しい感情をたくさん学ぶ日だな。主にマイナス面の。
「それに彼女は今、ボクの仕事を手伝ってくれてるし…、」
「あ、篠ちゃんって仕事何してるんですか?」
ここぞとばかりに、北澤さんがにじり寄る。
「シノブはボクの、専属作曲家だよ。…あ、ボクは海外を中心に活動している、ピアニストな」
「ばっ…、瑞樹っ!!!!!」
「――――…!!」

作曲…?

篠武さんは、…曲作りが、できる…?

瞬間、思考が凍りついた。
ボーカロイドであるオレにとって、それが一体どれほどの意味を持つか…。
オレの知らない篠武さんの過去ばかりか、彼女の紡ぐ旋律を…思い描く世界のすべてを、この人は手にしている。
それに気づいたとき、目の前が真っ暗になったような激しい衝撃を受けた。
「へぇ!篠ちゃん、作曲家さんだったの!凄いね、」
「…どうせ似合わないとか思ってるんだろ。わかってるよ、そんなことくらい!ああ、もう穴があったら入りたい、むしろ地中に埋めてくれ…、」
「あ、あれ?シノブ?…もしかして、言っちゃダメだったの?ゴメン、ゴメンね!?」

「………、」
誰かが何かを言っている。
でも、オレには何一つ理解できない。理解、できない。
いつもは耳に心地よく響く篠武さんの声でさえ、外部を飛び交うただの音として、オレをすり抜け消えていった。


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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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シャングリラ・第十二話~波紋~【カイマス】

…兄さん、最大のライバルか?
ってか、また長くなった。
あとで入らなかった補足小話を何本か上げます。

閲覧数:86

投稿日:2011/05/12 23:29:23

文字数:2,761文字

カテゴリ:小説

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