「アカイト…。そう、アカイト」
 何度か繰り返して、笑う。
「何だよ、気味悪いな」
 思い切り嫌な顔をして、アカイトは少し後ろへ下がった。
「ごめん。あなた、これからどうするの?このまま森にとどまるつもり?」
「とりあえず…。デルはここを出るつもりらしいし、さっきのみたいな人間が出ないとも限らないし。狼たちが喧嘩しても困るしなぁ」
 それから、アカイトは気がついたように言った。
「お前の名前は?俺のは言ったんだ、お前のも教えろよ」
「私はアリス」
 少しだけ寂しそうに笑う。
「…そだ、ね、次、デルにあったら伝えておいて欲しいの」
「自分で伝えろよ」
 何を伝えて欲しいのかすらも聞かず、アカイトは呆れた様子でアリスの頭をぐちゃぐちゃに引っ掻き回した。それを払いのけ、アリスは必死になって頼む。
「お願いっ!もう、会えないかもしれないんだから!」
「わ、わかった、わかった。…で、なんて伝えろって?」
 今度は面倒くさそうにため息混じりに言う。
「『またね』って。また、会うのよ、私たち。もしかしたら、貴方にも会うのかもしれない」
「運命ってやつ?」
「いいえ、これは決定事項!絶対なの。デルは帽子屋になっていて、ハクはそのお手伝いをしているの」
「…そうか。帽子屋ねぇ。あいつが商売できるとはおもわねぇが」
「確かに、そうかも」
 笑った。クスクスとアリスが笑っている声は、次第に薄れて行った。それから、アカイトが顔を上げる。
「アリス…?」
 そこにはただ、森が広がっているだけだった…。

「…ちゃん、アリスちゃん」
 ぺちぺちとハクが頬をたたく。はっと目を覚まし、辺りをきょろきょろと見回すと、アリスは開けた草原に座り込んだハクに膝枕をしてもらうような格好になっていて、近くでデルが帰って行く招待客一匹一匹に言葉をかけているところだった。そして、その後ろで一緒になって応対しているのは…アカイトだった。
「ハク、もう大丈夫。ごめんね」
 そう言ってアリスが起き上がると、ハクが安心したように笑った。
「よかった。ちょっと待っていてください。お茶、新しく淹れてきますから」
「あ、私のことは気にしないで。お茶会の後片付け?手伝うよ」
 言って、片付けを始めるハクにくっついてカップやソーサーを片付け、テーブルからクロスをとって、綺麗にたたむ。慣れた手つきのハクは、おぼつかないアリスのやり肩を母親のように優しい眼差しで眺めていた。
 それから片づけを終えると、ようやく最後の客を送り出したデルとアカイトが寄ってきて、
「大丈夫かよ」
 と言う。よこからアカイトが、
「久しぶりだな」
 軽く手をひらひらさせながら言った。
 それからしばらく、四人は時を忘れて話し続けた…。

「――じゃあ、私、そろそろ行くわ。ねえ、何か面白いものを知らない?」
「面白いもの?」
 三人は怪訝そうな表情になって、それから各々思案し、一番最初に声を上げたのはハクだった。
「女王様はどうでしょう。ハートの女王様」
「確かに面白いって言えば面白いかも…」
「本当?女王様ね。わかったわ。行ってみる。ありがとう、それじゃあね!」
 手を振り、アリスはかけて行く。
 それが見えなくなったころ、しばらく口を閉ざしていたアカイトが呟くように、デルとハクに言った。
「ハートの女王って、確か…」
 勿論、アリスの耳に届くことはなかった…。

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  • 非営利目的に限ります
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Fairy tale 19

こんばんは、リオンです。
ちょっと今日は短いのと早いので申し訳ないのですが。
さっさと勉強しろと兄がうるせぇので…(こら
次回からは不思議の国のアリスでは有名なはず、ハートの女王ととらぷの兵士です。
ここまでで出てきていないボカロです。
まあ、分かりやすいですよね。
それでは!

閲覧数:232

投稿日:2010/03/09 21:16:49

文字数:1,411文字

カテゴリ:小説

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  • 流華

    流華

    ご意見・ご感想

    女王様!(誰だかわかってない………。

    デルさんとハクさんのお茶会行ってみたいですっ!


    お勉強ですか?
    私もそろそろやんなきゃいけないんです…。
    もう誰か教えて下さい!って気持ちですっ!

    2010/03/09 22:14:24

    • リオン

      リオン

      女王様は赤い人ですよ♪

      あ、私もそのお茶会、行きたいです。

      勉強とかテストとか、ある意義が見出だせないんですが。
      お互い、頑張りましょうね

      2010/03/10 19:25:37

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