「であえ!であえ!」

『油断してた…
まさかいきなり来るとは…』

凄い勢いで長い髪をなびかせながら瓦の屋根を駆け抜ける。
それを追う警備隊。

「今日こそ『紅月』を捕まえるぞ!」

『どうしよう…
なんか皆、刀抜き始めたし…
私、忍者やってるけど人殺したことないし…』

『紅月』と呼ばれる忍びは忍具を三つ持ち歩いている。
一つ目は小刀。
二つ目は手裏剣。
三つ目は煙り玉。
いざという時はいつも煙り玉だよりだ。



「今日こそは我が剣術!神威流の餌食に!」

『どうしよう…
神威さんの目が本気だ…
うぅ~
カッコつけて満月をバックにキセルなんてくわえなきゃよかった…』

次の家の屋根に飛び移ろうとした時だった。
考え事をしながら走っていたせいで足を滑らせ屋根から落ちてしまった。

「いった~…」

幸い家の屋根が低かったおかげで重症にはならなかった。

「とうとう追い詰めたぞ!『紅月』!」

「追い詰められましたけど…
逃げさせていただきます!では!」


煙り玉を地面に投げる。
地面に当たった勢いで煙りが吹き出し『紅月』のまわりに煙りが立ち込める。

「ぬぅ!また煙り玉か!おぬし正々堂々、正面から来る気はないのか!?」


そんな神威の声もむなしくその場にはいつも通りの江戸の町が拡がっていた。

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  • この作品を改変しないで下さい
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~江戸(忍)物語~

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投稿日:2011/03/26 14:31:34

文字数:559文字

カテゴリ:小説

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