うーん…。一応、外には出てきてみたけど…。
今から本屋には行くとして、次は考えていないな。
花村さん、一度うちに来ると結構長い間いるからな…。
立ち読みでもしに行くか。
「あれ?雛乃―!こんなところでなぁにブツクサ言ってんのさ?」
「あ、遊南。外に出たはいいけど、これからどうしようかなーって。とりあえず、軽く本屋で立ち読みでもしに行こうかなとか考えちゃったりして。ははは…」
「うわ、何そのある意味『非リア充』な行動。もしかして、例の人来ちゃってたりする?」
「ある意味ってどういう意味よ!でも、まあ…。それが正解だったりする」
北林遊南、この子は私の幼馴染。
ちなみに決して、「お前の苗字と名前、意味真逆じゃんwww」とか言ってはいけない。
たぶん、血の海を見ることになるだろう。
こう見えて結構短気だったりするんだ。
「アンタがうわの空で外にいる時は大方、花村さんいる時だもんね。大丈夫だよ、あたしもなんか苦手なんだよね~、あの人」
「うん、なんか人間を人間として見てない感じの目がちょっと怖いよね」
「あー、わかるわかる!…そうだ、雛乃!アンタ暇ならさ、一緒に来ない?」
「え?どこへ?」
「ゲーセン!あの噂の音ゲー、今日すぐそこのゲーセンに稼働されるんだって!」
「マジで!?なら行く!」
そこからは一日中、遊南と一緒に遊びまくった。

「じゃあ、また明日!学校で!」
「おうよ!さいなら~」
ああ、もう暗くなってる。
時間が経つのは早いな、などと少し年よりくさいことを思いながら私は家に着いた。
「ただいま~」
「あら、お帰りなさい。雛乃、あなた本屋行くって言いながら、こんな遅くまで何してたの?あんまり遅いものだから心配したわよ?」
こんな重度の人形好きなお母さんでも私のことを心配してくれるんだ。
こういう優しいところがあるからなかなか事実を言い出せないでいるんだけどね…。
「本屋行く途中でね、遊南とあったんだ。そこで一緒に遊んでたんだ」
「そう、遊南ちゃんと一緒だったの。楽しかった?」
「うん!楽しかったよ」
などと他愛もない会話をした。
「あ、そうそう。晩御飯もうできてるから、冷めないうちに食べちゃいなさいな」
「はーい。うわっ」
これって、まさか…!?
「雛乃?どうしたの…ってあらあら。花村さん、人形置いてっているわ~。どうしましょ」
「で、電話したら?」
「そうね~。先に晩御飯食べて置いてね」
「う、うん」
今日の晩御飯はサラダ、コーンスープ、そして私の大好物のオムライスだ!
やった!って思うけど…。なんかあの人形こっちを見てる気がする。
もう、食欲失せちゃうじゃん。
「今日は雛乃の大好物作ったのよ~って、あんまり食が進んでないみたいね…。具合でも悪いの?」
「そうじゃないんだけど…。別に。なんともないよ」
「そう、元気で何より!」
「ところで、花村さんどうだって?」
「明後日からしばらくの間、花村さんと旦那さんの用事で海外に行くことになったらしいの。だから、取りに行きたいのは山々なのらしいけれど、準備とかで忙しいからって。だから預かっていてほしいって」
「ふ、ふーん。そうなんだ」
うわー、最悪だ。
しばらく預かるのか、あの人形…。
「あ、それと花村さんちのお子さんも預かってほしいって!あなたと同い年だからきっと仲良くなれるわ」
「それって、その子も納得してるの?一緒に行かないでいいの?しかも、面識…ないはずだよね?」
「ええ、でもどうしても日本に残ってやりたいことがあるんですって。そのためなら、一人暮らししてまでも日本に残るって。熱心よね~」
「だからって、なんでうちに来ることになったの?」
「それがね…、人形の事が心配らしいのよ。結構高価なものだから」
また人形か……。
「ちなみにその子って何やってる子なの?」
「普通にあなたと一緒で高校生よ。部活はやってなくて、趣味に没頭しているらしいわ」
「へえ」
「仲良くなれるといいわね、雛乃」
「うん、任せといて!」

そうして、私と不気味(だと私が勝手に思ってる)人形との話、そして、我が家にやってくる不思議な子によって私が奇妙なことに巻き込まれるという奇妙な物語の幕が上がったのだった。

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enigma doll 2

第弐話「奇妙な物語の始まり」

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投稿日:2015/03/14 00:51:54

文字数:1,747文字

カテゴリ:小説

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