真っ白な画用紙が一枚。
そこに描かれているのは、「一本の木」
葉なんて一枚もついていなければ、
花なんて一輪も咲いていない。
そんな木が、一本ぽつりと立っているだけ。
その絵を描いていた絵師が突然居なくなってしまった。


この物語は、この後少しの年月が過ぎた後のお話。


絵師が居なくなった後、一人の女の人が絵の前に立った。
「なんか、寂しい絵ね。」女の人はそう言って何処かへ行ってしまった。
何処かへ行ってしまったと思った女の人が筆と絵の具を持って戻ってきた。
「寂しいと思ったの。だから、仲間を書いてあげるわね。」
女の人はそう言って、絵の具の付いた筆を画用紙につけた。
「これで完成ね。」と、女の人は言って、筆と絵の具を置いていなくなってしまった。
一本の木が描かれていた画用紙には、
六本の木が付け足され、計七本の木が描いてある絵になった。


女の人が居なくなった後、一人の男の人が絵の前に立った。
「なんか、冷たい絵だな。」男の人はそう言って考え込んでいた。
考え込んでいたと思った男の人は筆と絵の具を見ていた。
「冷たいって感じたんだ。だから、華やかにしてあげよう。」
男の人はそう言って、絵の具の付いた筆を画用紙につけた。
「これで完成だな。」と、男の人は言って、筆と絵の具を戻していなくなってしまった。
七本の何も無い木が描かれていた画用紙には、
いろんな色の花が咲く色鮮やかな絵になった。


男の人が居なくなった後、一人の少女が絵の前に立った。
「華やかだけど、木だけってつまらないよね。」少女はそう言って、考えた。
何かを考えていた少女は手をたたいて筆と絵の具を持った。
「つまらないと思ったのよ。だから、楽しく盛り上げてあげるね。」
少女はそう言って、絵の具の付いた筆を画用紙につけた。
「これで完成よ。」と、少女は言って、筆と絵の具を戻していなくなってしまった。
色鮮やかな木々が描かれていた画用紙には、
七人の人が楽しそうにお花見をしている絵になった。


少女がいなくなった後、一組の双子が絵の前に立った。
「楽しそうだけど、」「何か足りない。」双子はそう言って、走って行ってしまった。
走って行ってしまったと思った双子は、それぞれの筆を持って戻ってきた。
「何かが足りない気がするの。」「だから、付け足してあげる。」
双子はそう言って、絵の具の付いた筆を画用紙につけた。
「「これで完成。」」と、双子は言って、持ってきた筆を持っていなくなってしまった。
楽しそうにお花見している様子が描かれた画用紙には、
綺麗な青いお空と、かわいい小さな草花が足されて、綺麗な絵になった。


双子が居なくなった後、一人の侍が絵の前に立った。
「綺麗な絵だと思うが、画用紙のままでは飾れないだろう。」
侍はそう言って、何処かへ行ってしまった。
何処かへいってしまったと思った侍は、金色の立派な額縁を持って戻ってきた。
「これでは綺麗でも飾れないからな。立派にして、飾れるようにしてやろう。」
侍はそう言って、画用紙を額縁の中に入れた。
「これで完成だぞ。」と、侍は言って絵を置いていなくなってしまった。
綺麗で、かわいらしい絵が描かれている画用紙は、
立派な額縁に入った、素晴らしい絵になった。


侍が居なくなった後、一人の娘が絵の前で立った。
「素敵な絵なのね。」娘はそう言って、急ぎ足で去ってしまった。
急ぎ足で去ってしまったと思った娘は、何人か人を連れて戻ってきた。
「見て、素敵な絵でしょう?これを家に飾りましょう。」
娘は連れてきた一人の女の人と、一人の男の人、一人の少女と、
一組の双子と、一人の侍にそう言って、絵を持っていなくなった。


女の人は、自分が置いていった筆と絵の具を持って、
男の人は、みんなと絵を見てにっこりしながら、
少女は、『自分が絵にみんなを描いたのよ。』と、心に思いながら、
双子は、『自分たちのおかげで素敵な絵になった。』と、思いながら、
侍は、『額縁に入れてよかった。』と、嬉しそうにしながら、
娘は、『これで家に、笑顔が増える。』と、にこにこしながらと、
七人の人々は、それぞれいろんなことを考えながら、仲良く帰った。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

素敵な絵とは・・・?

絵本的な感じで、書いてみました。
感想お待ちしています。
よろしければくださるとうれしいです。

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投稿日:2009/07/30 17:29:45

文字数:1,748文字

カテゴリ:小説

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