2月6日。時刻は14時30分。今にも雨が降りそうな曇り空。

こちら、とある公園の西入り口。


「遅いなぁ・・・」

一人の少女がベンチに座って、ぼんやりと青く澄んだ空を見上げて呟いた。




一方、こちらはとある公園の東入り口。


「遅いなー」

一人の少年がベンチに座って側に居る鳩と戯れていた。




ひとつの公園に会う事のない二人が居た。




<<公園の罠>>




どうしてこのような事が起こってしまったのか？




デートというカップルなら何十回もするであろう、リア充の至福の時間を約束したあたりから始まっていただろうか。

問題は至福の時間の待ち合わせ場所にあった。

この二人は前日に、

「じゃあ、〇〇公園の入り口で待ち合わせね！」

「おう！了解した！」

という約束をしていた。

この会話のどこが悪かったのか？

“〇〇公園の入り口で“――正確には“入り口“という部分がいけなかった。

皆さんも気付いていると思うが、実はこの公園、入り口が“二つ“あったのだ。

この公園には西口と東口、正反対の方角にそれぞれ入り口がある。

果たして悪いのは公園の造りを知らなかった二人なのか、それとも公園の設計者だろうか。


まあ、そんな事はどうでもいい。

事情を話した事だし、冒頭に時間を戻そうか――。




「遅いっ！なんで来ないのよっ・・・！」

少女は帰るか、待つか、で数時間迷い、やがて公園の中心辺りに向かって歩き出した。


同時間、少年は、

「遅いなぁ・・・どうしよう・・・」

とにかく公園内を歩いてみる事にした。やがて公園の中心へと足が向く。


二人は公園の中心へと向かい、そして、

「「あ」」

声が重なり、出会った。

「「なにしてたの？」」

再び、二つの声が重なる。

少女は

「私は公園の東入り口にいた」

と答え、少年は

「俺は西入り口に」

と答え、


「「・・・そうか・・・！」」


二人同時に事態を理解した。


「ま、いいか！」

少年は明るくそう言い、また、少女も、

「そうね！ねぇ、どこに行く？」

「決めてなかったのかよ・・・」

のんきに言い、話題はデートの行き先へと変わる。

「じゃあ、最近できたゲーセンとかはどうだ！？」

「いいね！行こう行こう！」

「あ、俺実はUFOキャッチャー上手いんだぜ？」

「えー嘘だー！」

「なにをぅ！じゃあ、試すか！？」

「別に試さなくても・・・」



そのまま二人は公園の外へ出て、街へ向かう。


公園の罠の事も忘れて至福の時間を満喫する。