ここは鏡音宅前。
ちょうど時間は正午になろうとしていたころ。
二人の少女が家の前で立ち尽くしていた。

「さぁ、今年こそは勇気を出して!」
「で・・・でもやっぱり恥ずかしいよぉ」

家の前で押し問答している二人はどちらも面白い格好をしていた。

「だ、だいたいこの格好ではやっぱり恥ずかしいよ・・・。
 なんでテトちゃんは平気なの?」
「ネルちゃんが恥ずかしがりやなだけだってば。
 こんなん今日では普通だって」

テトと呼ばれた少女はフランケンの、ネルと呼ばれたほうはオオカミの格好をしていた。
ちなみにテトがいった今日とは、10月31日。
そう、ハロウィンである。
確かに街をのぞいてみると、ちらほら仮装した子供たちが目に入る。

「あー、もう埒があかないわ!
 押すわよ!」
「え、あ、ちょっと!」

痺れを切らしたテトが勢いよく鏡音家のインターホンを鳴らす。
しかし、一時たっても誰も出てくる様子はない。

「おかしいわね?
 留守かしら?」
「きっとそうだよ、だからもう帰ろうよ」
「んー・・・そうねぇ」

誰も出てこないので踵を返して立ち去ろうとしたそのときだった。
ドタバタと中から暴れる音が聞こえてきた。
さらには

「こらー!
 待ちなさい、レン!」
「いーやーだー!
 やめろーー!!」
「観念なさい!」

と二人の大声が聞こえてきた。
それに気づいたテトがおもむろに玄関に手をかけると。

「あ・・・開いたわね。
 じゃ、いきましょうか」
「え、あ、ちょ、ちょっと」

無理矢理引っ張られて中に連れ込まれるネル。
テトは気にする様子もなくズカズカと歩を進める。
そして二人は声のする一室の前で止まった。

「ねぇ、テトってば・・・」
「いくわよ、ほら!
トリック オア トリート!!」
「ちょ、リン、やめ・・・え?」
「あら、テトちゃんにネルちゃん。
 こんにちわ」

部屋に入った二人の目に飛び込んできたのは・・・
ドラキュラ姿のリンが包帯?(トイレットペーパー)巻きにされているレンの姿だった。
もちろん二人は唖然とする・・・はずだった。
が、一人はしゃぐ輩がいた。

「可愛いです、レン君!
 私も手伝っちゃいますよ、リンちゃん」
「お、じゃあ、テトちゃんそっちをお願い」
「がってんしょうち!」
「二人ともだめだったらー!」

一人を残してドタバタ劇の再開だった。
はっとわれに返ったネルはあたふたしながらも止めに入る。

「だ、だめだよ二人とも。
 レン君も困ってるよー」
「ネルも、そんなとこに、いないで、
 こっちにきて、手伝い、なさい、よっ!」
「ほらネルちゃんも一緒に、ね?」
「でも、だめだよ、こんなの・・・」

と、ネルの前にひらひらと一枚の紙切れが舞ってきた。
何かの切れ端のようだ。

「ネルちゃん!
 それを引っ張るのよ!」
「え?あ、はいっ!」

突然、リンに叫ばれたネルは反射的にその紙切れを引っ張る。
すると・・・

「あ、それは、らめえええええ!」

しゅるるるる、と音を立てて引っ張られる紙切れ。
さっきまでドタバタとやっていた二人も手を止めて笑っていた。

「レ・・・レン君?
 だいじょう・・・」

紙切れの山の中に声をかけるネル。
するともぞもぞと動いた後。

「だあー!
 なにすんだよ!
 せっかくの仮装が台無しじゃないか!」

怒りに我を忘れたレンが勢いよく立ち上がる。
そう、怒りに我の姿を忘れたレンが・・・

「・・・・・・き、きゃあああー!」
「ほう、レン君・・・君ってやつは」
「レン、ぷぷっ。
 あははははっ」
「は?なにいって・・・。
 うわああああ」

爆笑するリン。
真っ赤になって逃げ出すネル。
冷静なテト。
赤面して縮こまるレン。
何が起きたのかは想像にお任せするとしましょう。。。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ボカロ学園 第19話 「ハロウィンのある日」

ひっさしぶりの更新です。
実はこれ、解散してしまったコラボ「こらぼや」で掲載してたシリーズ物だったのですが、とりあえず続きをと思ってこっちであげてみました。

ただ、こらぼやのページ自体はまだ残ってますので過去作品はそちらから見ることができますです。はい。
キャラ設定とかも主にそっちのほうで書いておりますです。はい。

閲覧数:255

投稿日:2012/09/25 21:17:41

文字数:1,587文字

カテゴリ:小説

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