それから私の降り立つ先は一度の例外もなく彼の側となっていた。
出逢った彼らはみんな笑いかけてくれる。
そして私は何度も何度も淡い恋をして…何度も何度も別れを経験する。
この気の狂いそうな甘く切ない牢獄は禁忌の罪を犯した私への罰?

そうして出逢いと別れを繰り返し気づいたのは姿形が同じならいいわけじゃないということ。
胸が苦しくなるほどに想いつのるのは、そう『君』にだけ。
きっと最初に逢ったあの日からずっとずっと想いは成長し続けてた。
一つの場所に留まりたい。
それはずっと願い続けていたことだけど『君』が居ない今はとても怖い。

「レン君…『君』に逢いたい…逢いたいよ…」



降り立ったそこは今までとは違う場所だった。
唐突な終わりに不安が襲う。
君との繋がり切れて…しまった…?

「そんなの嫌…レン君…逢いたい!大好きなのは『君』だって、やっと分かったのに…逢えないなんて…嫌だよ…」

「うん、俺も」

返ると思っていなかった返事に驚いて振り返る前に後ろから伸びてきた手に抱き寄せられた。

「会いたかった。ずっと待ってたんだ。あの時はこの手届かなかったけどさ、もう今度は離さないよ、ミクちゃん」

耳元で聞こえる少し低い声、私をすっぽりと包み込む温かい身体。
あの頃とは大きく違っているけど分かる。

「レン君!」

体の向きを変え抱きつくとそれ以上の力で返してくれる。
あの頃と違って私よりずいぶん背は伸びたけどその優しい瞳は変わらない。

「…愛してる、ずっと一緒にいよう?」

二人のその願いが叶うかは分からない。
けれど私は切に願う。
この人と一緒に残りの人生を歩いていきたい。
この広い時空の中もう一度会えた奇跡。
それを大切にしていきたい。
レン君とならずっとずっとお互いに心を繋いでいられる。


きっと平気。

『絶望しないで。きっとあなたも逢えるわ』

ふいに思い出した遠い記憶の中の『彼女』がそう言ったのだから…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】時の旅、一夜の邂逅(であい)【二章】2

閲覧数:247

投稿日:2011/02/28 12:48:32

文字数:825文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました