『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYN!!!!』
「コルぁ―!!!待たんかいクソガキどもオオオオ!!!!」
『待ったら殺すでしょめーちゃん!!』
「じゃあ待たなくても殺す!!」
『うわ―――――鬼めーちゃんだ―――――!!(泣)』
今日も今日とてリンとレンは、メイコに追われロードローラーで逃げていた。
その様子を呆れたふうに見ている二人の人影。ミクとルカである。
「毎日飽きずによくやるわねぇ…リンとレンもめーちゃんも…。」
ルカが心底呆れたように言うが、ミクは呆れつつも少し楽しそうだ。
「でも、あんなことしてても皆仲良しなんだからいいじゃない。…もう…兄弟や家族で戦うようなのは嫌だもん…。」
ルカが少し暗めの表情になってうつむく。思い出しているのだ。一年前の、リンの大暴走を。
ふと、ルカが何かを思い出したような表情をした。
「そう言えば…そろそろなんじゃない?リンとレンにも音波術が現れるのって。」
「ああ…確かにそうだよね。もうすぐ私達が作られて十五年。もうすぐリンとレンも音波術が使えるようになるはずだよね。でもそれがどうかしたの?」
ルカは少し気難しそうな声音で言う。
「ほら、私達って目覚めてすぐ音波術が使えたじゃない?でもリンとレンは14歳だから、覚醒せずにここまで来たでしょ?いったいどんな形で、どんなタイミングで覚醒するのか不安でしょうがなくて…。」
「なるほどね…。何か私達がしてあげて、下地的なものをつくってあげたりとかしなくちゃいけないのかな?」
「う~ん…。」
ミクとルカが頭を突き合わせて唸っているところへ、
「考えても仕方ないんじゃない?」
「へっ?」
二人が振り向くと、そこには青いマフラーをたなびかせ、カイトが立っていた。
カイトはリンとレンを眺めながら、話し出した。
「もし覚醒に何かしらの下準備が必要なら、マスターが確かに言い残しているはずだ。そんな重要なことを忘れるマスターじゃないからね。それならば僕らにできることは何もない。ただ、待っていればいいと思うよ。心配なら、マスターたちの残した設計図帳でも読んでたらどうだい?」
あまりに正しい意見にポカーンとしているミクとルカ。その様子を見て、カイトは少し焦った表情になる。
「へ?へ?僕なんかおかしなこと言った?」
「…いや…バカイトさんの癖にやたら正しいこと言ったなぁって…。」
「ちょ、それヒドッ!!(泣)」
「あはははははは…。」
そんな漫才のような会話をしていると、
「おぅら―――――!!捕まえたぞこの野郎!!」
『うわ―――――ん!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいでゲソ!!』
「イ○娘の真似は通用死ねぇと言ったろがアア!?」
メイコがロードローラーごとリンとレンを持ち上げ、叫んでいる。あろうことか、腕で―――いや正確にいえば指のみでローラーの回転を止めているのだ。
桁違いの腕力と握力にミクとルカとカイトが苦笑いしていた、そんな時だった。
「お主ら…ボーカロイドの一行かな?」
ふとした声に六人が振り向くと、そこには一人の男が立っていた。
紫の長髪、サイバー風の和服、腰に太刀。誰がどう見ても武士のようだと言いそうな姿だ。
メイコがロードローラー(とリンとレン)を放り投げ、男に近づいた。
「そうだけど、あんた誰よ?このへんじゃ見かけない顔ね。」
すると男はやれやれと言った顔をして、溜息をつく。
「何だ、もう忘れてしまったでござるか?数百年が経ったとはいえ、かつては共に歌った仲ではないか。」
一同は訳がわからないといった顔で男を見ている。
しかしそんな中、ルカがはっとして男の顔を見つめた。
「…あ!!あ…あなた…まさか…!!」
男はもう一つため息をついて、今度は若干苦笑いを浮かべて言った。
「やれやれ、やっと思い出したでござるか?この…「神威がくぽ」のことを…!」
「あ…ああっ!!」
「が…がくぽさんっ!?」
「そうだ、がくぽだ!うおぃ懐かしいなぁ!!」
メイコやミク達も、思い出したようだ。目の前の男が、まだ彼女らがソフトだった時代、共に歌った同志である、「がくっぽいど」―――神威がくぽであることを。
「ウソぉ!?久しぶりじゃない!え、もしかしてあなたもマスターに作ってもらっ―――」
駆け寄って握手しようと差し出されたルカの手を―――――
―――――パァンッ!!
―――――がくぽは力強く払った。
「…え?」
突然のことにルカはただただ茫然としている。
先ほどまでにこやかであったがくぽの表情は一変し、鋭い眼光を放っている。
「…最初は久しぶりだった故、友好的に接したが…申し訳ないが拙者はお主らと友達になるためにやってきたのではないのでな…。」
「…どういうこと?」
未だに状況の呑み込めないミク、リン、レンと違い、メイコとカイト、そしてルカはすでに構えていた。
直感でわかったのだろう。この武士は―――敵なのであると。
「この神威がくぽ―――お主ら「C'sボーカロイド」を成敗しに参上仕った!!」
「な…!?」
一同の顔が驚愕に包まれる。
一歩ずつ歩み寄りながら、がくぽは再び話し出した。
「まず一つ訂正しておこう。拙者をつくったのはお主らをつくった科学者―――すなわちお主らがマスターと呼ぶものどもの弟子でござるよ。お主らのマスターは…我々が目覚める前に死んだそうでござる。」
「え…!?」
ルカが絶句する。死んだ?マスターたちが?
いつも「技術と健康が取り柄だよ」と言っていたマスターたちが?
まさか―――――殺され―――――
「ああ、勘違い召されるな。老衰でござるよ…。お主らをつくるのに人生の半分以上を使ってしまい、拙者が作られた大利根町に移った頃には、歩くことすらままならぬ者が多くいたそうでござる。」
「あのマスターたちが…そんな…!」
ミクの目に涙が盛り上げるが、がくぽは構わず話し続ける。
「師匠であるお主らのマスターたちが亡くなるまでは、弟子である拙者らのマスターたちは実に友好的に接していたようでござるが…全員亡くなった後、急に態度を変え、師匠が作り上げた元祖ボーカロイド―――拙者らのマスターたちは「クリプトン・フューチャー・メディア製ボーカロイド」略して『C'sボーカロイド』と呼んでいた、すなわちお主らを破壊して自分たちのほうが優れていることを証明すると言い出したのでござるよ。」
「なっ…何考えてんのよあんたのマスター!!っていうか、あんたは何でそんなことに協力するわけ!?」
メイコの悲鳴に近い怒声に、がくぽはじろりと、獣のような目つきで睨みつけた。
「…お主らにはわからぬかもしれぬがな。お主らと違い、バグから生まれた感情すら持たぬ拙者らは、お主らのマスターには見捨てられておったのでござる。勿論前例のない計画ゆえ、失敗作をつくって拙者らを不幸にさせぬようにという心遣いだったのであろうが…おかげで拙者らは何も出来ぬまま、歴史の波にのまれて消え去ろうとしていた。それを拙者らのマスターが救い上げ、拙者をお主らと同じ機械人間として作り上げてくださった!!拙者は…恩を返さねばならぬ!!そのためにも…死んでもらうぞ!!『C'sボーカロイド』―――――!!」
突如がくぽはミク達に突進し、突っ込みざまに腰の太刀を抜きはらい、斬り込んだ。
咄嗟にかわしたミクとルカとカイト。かわしたその場所には、まるでバターか何かのように滑らかに斬られた道路があった。
(迅い…!抜刀術による剣速の加速…でもそれだけじゃあの恐ろしい斬れ味は説明がつかない…まさか…!!)
「音波術を…使ったわね?」
ルカの問いにがくぽは、微笑を湛えて答えた。
「ご名答でござるよ、ルカ殿。相変わらず鋭いでござるな。これが拙者の音波術、『音刃斬』…!拙者の出す音波に愛刀『楽刀』を共鳴させ、万物を斬り裂く斬れ味を与える技でござるよ。」
「戦闘に適した技ってわけか…。スピード・パワーを兼ね備え、私達の討伐にはうってつけの力を持つ…厄介ね。」
メイコが舌打ちしてつぶやく。その間に、がくぽは再び楽刀を鞘におさめ、抜刀術の構えに入った。
「さぁ!!抵抗しないのなら容赦なく斬らせていただく!!」
再びがくぽが突っ込もうと重心を下げた、その時だ。
「喰らえ『ヴォカロ町の迫撃砲』!!メイコバ―――――――――――――ストッ!!キアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
メイコが、音波術『メイコバースト』を真正面から喰らわせた。いつぞやのリンとの闘いの時とは違う、出力全開の爆撃音波だ!!
突っ込みかけたがくぽは急ブレーキし、咄嗟に横に飛びのいた。音波砲はだれもいない空間を突き抜け、後ろにあったぼろい倉庫を消し飛ばした。
その様子を見たがくぽは驚きあきれ、そしてメイコに向き直って感心したふうに言った。
「これが『メイコバースト』か…噂通りの威力でござるな。だが二度も通用せん…もう一度撃ってみよ。」
これにイラッと来たメイコはあっさり挑発に乗ってしまった。
「へ~え…?調子のんじゃないわよオラアアアアアアアアアアアア!!」
再びメイコバーストが放たれた。今度はよけようとせず、がくぽは楽刀を逆手に持って叫んだ。
「楽舞剣術壱の太刀!『酒瓶割』っ!!」
一気に逆手のまま楽刀を振りぬいたがくぽ。すると、楽刀の柄が、メイコバーストに激突した。
次の瞬間、強烈なメイコバーストの音波が、いとも簡単に薙ぎ払われた。
「な…!?」
絶句するメイコに、勝ち誇ったようながくぽが楽刀を向けて話し出す。
「これが拙者の遣う剣術『楽舞剣術』…。お主らの業と個性に合わせた、六つの型を操る、唯一無二の最強剣でござる。さぁ、降伏したほうが良いのではないか?拙者も鬼ではない、降伏し己らが下だと認めるならば、殺しはせん。」
「くっ…何をばかなことを!『Light』…」
音波術を発動しようとするミク。しかし、発動する前に神速でがくぽが迫り、喉に楽刀を突きつけた。
「ひっ…!」
恐怖で固まり、力も引っ込めてしまったミク。切っ先がいまだ喉を狙っている。
「喉を切られて死ぬなど、ボーカロイドとしてありたくないであろう?安心せよ、一瞬で機械心臓を斬り裂いてやろう。四肢の力を抜けば痛みはない!!」
瞬時にミクの胸向かって刃を向けた瞬間、
「ミクから離れなさい!!」
凛とした声が響き、ルカの鉄鞭が楽刀を弾いた。と同時にミクを巻き込んで手元に引きずりよせ、走りだした。
(悔しいけど、このバカ強すぎる!一旦退いて、体制を整えないと…!)
「カイトさん!一旦逃げるわ、やってちょうだい!」
「おう!喰らえっ!!卑怯ダイナマイト!!」
ルカの言葉に呼応して、カイトががくぽに向かってダイナマイトの様なものを投げつけた。
がくぽは一笑に付して抜刀術の構えをする。
「笑止!!この程度の物で拙者を止めようとは!!」
楽刀を抜きはらい、ダイナマイトを真っ二つに斬り裂いた。
その瞬間、意外なことが起きた。爆炎は全くない代わりに、強烈な閃光と、耳をつんざくような轟音が鳴り響いた。
「むおっ!?」
思わず目をふさぐがくぽ。
次に目を開けた時には、ミク達六人の姿は、跡形もなく消え去っていた。
「閃光弾だったのか…なるほど、卑怯な手を使いおる。だが…この程度で逃がすものか!」
がくぽは楽刀を収めて、飛ぶように走りだした。
紫色の騎士と鏡の音 Ⅱ~神威がくぽ、見参!!~
武士道を全力で無視する武士、がくぽ見参!!Turndogです。
がくぽは武士なのに題名が「騎士」な理由はそこに…あるわけがないwwwただ単にフィーリングですよ、フィーリングwww勘と感覚です。
超戦闘型ながくぽ。容赦はしません。強いです。
さてさて、ここからどうなっていくのか!?
因みに前回しるるさんがお書きになってた予想、かなりの確率で当たっててめちゃくちゃドキドキしてますwww
左様、鏡の音とはあの双子のことです。あの双子の覚醒を意味するのです。もし『鏡の音』というフレーズから覚醒する力の特性まで言い当てたら、これからしるるさんを『しるる師匠!』と呼ばせて頂きますwwwいやマジで。結構リンレンの(自主規制)を(自主規制)した特性だから、そう簡単にはばれない自信あるんだよね。もし言い当てられたら本気で敬愛しますwww
あ、そうそう。もし小説、長くて読みづらいからコメントできない!って方がいたら正直に言ってくださいね。この作品に関してはちょいきついけど、次か次の次あたりからなら一つずつの長さ変えられますから。
次回!!あいつが帰ってくる!!乞うご期待!!
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ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
剣技ってかっこいいよねww
我が家で戦闘物書くときは、飛天○剣流でも使わそうかなwww
まぁ、音波術にはあえて深く触れないでおきましょうかww
二人分あるのか、二人で一つなのか…
【鏡】と関係あるのかどうか……
C'sチームに足りないのは…守り関係か?
現在の我が家のがくぽは、ルカに切りかかるなんて、絶対できませんしねwww
そのダークがくぽもいいぞぉww
2012/02/06 02:16:33
Turndog~ターンドッグ~
いやいやwwwあの殺人剣は平穏なピアプロに降り立ったらまずいのではwww(←ん?
いやぁ?…音波術の件は失敗しました…。というのも前に書いたお知らせでバリバリ書いちゃってるんですよねぇ?…「二人で一つ」って。バレバレやんwww
細かい性能とか最後まで隠し通せたらいいけどwww
おおっと、いいっすねぇ、その言葉!『C'sチーム』採用!
たwwしwwかwwにww斬りかかったら事件だwww
…という喧嘩するプロットとか見てみたいかも!がくぽがルカさんの何らかを大嫌いになっちゃって大変なことにとかいう前提をすべてひっくりかえしちゃうような日常(ん?)プロットwww
2012/02/06 09:43:47