「にぃちゃん、これって…」

「うん、これがこの本が代々受け継がれてきた理由だよ!」
これを使えば、新人類に支配され心を失った世界を変えることが出来る。

「でも、『対象の人間の意思以外の存在全てを破壊する。』ってなんか怖いね…」

「うん…でも今の僕達に出来ることは、たぶんこれしかない…」

「今までの全てを壊しても…?」
リンが聞いてくる。

「ああ、…こんな世界間違ってる。この戦争を終わらして心を取り戻すため…」

「にぃちゃん………うん、わかった!にぃちゃんがそれが正しいって思うなら、行こう!一縷の希望を探しに!!」
リンが立ち上がる。僕も立ち上がり、リンと手を繋ぐ。

「うん、行こう!…場所は…かつての国連本部安全保障理事会の控え室……結構近くなんだ!」
旧国連の建物は、ここから歩いて行っても一週間程で着く場所にある。きっと父さんたちは、僕達以外は絶滅してしまったであろう旧人類を代表して旧国連に向かおうとしていたのだろう…幼い僕達には理由を伏せて……
そのとき僕は、背後に気配を感じた。リンは地図を開いて、方角と距離を確認している。

「にぃちゃん!やっぱり、旧国連は西に一週間ぐらい進んだところにあるよ!」

「伏せろ!!リン!!」
僕はリンを突き飛ばすように倒れこんだ。頭上を一発の光弾だ飛んで行った。背後に無表情で立つ一人のアンドロイド…目が合ったその顔は、どこか僕に似ているような気がした……

「ありがとう、にぃちゃん!」

「リン!!走るぞ!!」
僕は、アンドロイドから目を背けリンの手を取り走り出した。振り返ると、後ろのアンドロイドはなぜか全く追ってこない…僕は振り返るのをやめ、前を向いてその場から二人で立ち去った。
________________________________________
アノコハ?
…アノこ
…は
……リン!!
考えがそこにたどり着いたとき、僕はもう攻撃をすることが出来なくなっていた。
あのリンがいる…でモ、トナリノオトコハダレダロウ?
僕の頭はまだ、覚醒していなかった。新人類に改造されてから、意識の無いことが何度もあったそのたびに、僕は旧人類を殺してしまったのだと思う。僕は何度も死のうとした…デモ、ハガネノカラダハ…ドウヤッテモ…リンを殺したときのように自分を壊してはくれなかった……
働かない頭で、あノオトコノコトヲカンガエル…ワカラナイ……
ボクガ考えていた間に、二人はどこかに走って行った。
待ってよリン!!僕はどっちに行ったのかもわからないリンを求めて一歩踏み出した。すると、何かが脚にあたった。
…これは?本僕はその本を手に取って、パラパラとめくった。すると飛び切り擦り切れた書き込みだらけのページを見つけた。
ッドクン!!
なんだかわからないが、このページを見たときに衝撃が走った。このページに書かれていることは、危険だとハガネノカラダガオシエテイル。イカナケレバ、カツテノコクレンヘ…ソウスレバ、リン…また会えるよね……
________________________________________
あれから一週間、僕達は順調に西へと旅を続けている。あの時新人類から逃げてから、彼等には一度も会っていない。不気味なほど静かだ。『時空軌道インターフェイス』に関して書かれていたあの本は、襲われたときに落としてしまった。
でも、大事な事は分かっている。

「にぃちゃん…」

「うん?」
考え事をしていた僕は、素っ頓狂な声を上げてしまった。

「あの建物って…」
リンの指差す方向には、高くそびえるビル、その前にうっすらと見える無数の棒…

「ああ、確かに旧国連の建物だ!」
今、旧国連は廃墟となっている。40年前に戦争を生まない心(?)を持つ新人類の人口が、全人類の人口の98%に達したのを機に、平和を維持することが目的の国連は解散されたのだ。今は、どのポールにも国旗はなびいていない。
周辺は放棄され、新人類も旧人類もほとんど来なくなっていた。
僕達二人は今、その建物を見下ろすように立っている。国連まではゆったりとした下り坂だ。上り始めた薄暗い月が、昇りきる前にはたどり着けるだろう。

「にぃちゃん。なんだかこうやって見ると不気味だね。」

「そうだね、新人類が来る前に行こうか、リン。」

「うん。」
僕達は硬く手を繋ぎ、下り坂を一歩ずつ歩き出した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

終末史episode2―一縷の願い②―

終末史シリーズもいよいよ中盤です。(はじめからシリーズ物やるんじゃなかったかな?)
このシリーズは囚人Pさんの楽曲の一縷の願いの自己解釈二次創作です。いろんな意味で、レン視点。原作はこちら(http://piapro.jp/t/xZWn)、(http://www.nicovideo.jp/watch/sm8423183
)です。
さて、読んでくださっている方がいらっしゃるのか分かりませんが、いらっしゃる限り続けますよ!

続きはこちら(http://piapro.jp/t/CbzM

閲覧数:363

投稿日:2011/02/19 20:51:00

文字数:1,825文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました