その、次の朝。
レンは結局一晩中居座ったカイトに無言で椅子を軋ませていた。
「・・・・・・」
「レン君、ひょっとして怒ってる?」
「・・・出てけ」
一段と大きくなる椅子の音。カイトは無言の殺気に黙って退散した。
レンは小さくため息をつくと、マントを翻してリーリアの屋敷へと転移した。
―――瞼の裏で光が弾ける。
また朝を迎えられたのを、リーリアは少なくとも神ではない何かに感謝した。
懐かしい夢を、見ていた気がする。
「涙・・・?」
頬を伝う、一筋の雫。
もう顔すら思い出せない、兄の夢を見ていた気がする。
兄、と心で呟いた彼女の胸に描かれる姿は、友達になった死神の少年。
「もしお兄様が生きていらしたら、あんな風になっていらしたのかしら」
自分と同じ顔をしていたという、10年前にこの世を去った兄。
賢いが無口で、余り“自分”という物を晒そうとしなかったらしい兄。
微かな記憶の中では、いつも自分に笑ってくれていた気がする兄。
とうに過ぎ去った過去の人間である彼を思い出す事は、今この瞬間に空を舞う埃を掴むより難しい。
「ごめんさない、お兄様・・・リーリアは、もう殆ど貴方を思い出せません」
自分が死んだら彼に謝りに行こうと彼女は決めた。
道案内は、あの死神にしてもらおうかしら。
くすりと笑うリーリアの耳に、遠慮がちなノックの音が響いた。
「本当に、私を殺す事はできないのね?」
「えぇ。人間は死神を誤解しています」
リーリアが薬を飲む為に用意されたような朝食を食べ終え、検診も終えて一息ついた頃。
壁をすり抜けて現れた死神は何度目か数えてないが繰り返した言葉をまた繰り返した。
どうにもこの少女は死を諦めきれないらしい。
はぁ、とリーリアはため息をつく。
「・・・・・・出来ないのなら仕方ないわ」
死神は相変わらず目深に被ったフードの下で密かにため息をついた。
やっと納得してくれたようだ。
「じゃあ・・・・・・、私、一度市場へ行ってみたいの」
レンの安堵は打ち砕かれた。
余命を宣告されたうら若い娘、おまけに伯爵令嬢を市場に連れて行くとは。
大変な事になりそうだ。
再びため息をついたレンのこめかみに、ツキンと痛みが走る。
何かを思い出せと急かすような鋭い痛みに眉を顰めた彼の表情は、フードに隠れてリーリアには分からなかった。
【白黒P】鎌を持てない死神の話・6
次回、二人でお出かけ。
何が起こるかなんて、神様にすらわからない。
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-----------...ネバーランドから帰ったウェンディが気づいたこと【歌詞】
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